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- 子どものメンタルヘルスと、不登校に対する向き合い方【専門家監修】
子どもが学校に行きたがらない、部屋にこもりがちになって外に出たがらない状態が続く、「不登校」や「ひきこもり」。小中高生の子どもの親にとっては、どう接するべきなのかとても心配になることでしょう。今回は不登校やひきこもりに影響すると考えられるもの、子どもの心理状態・症状、親や周りができることと避けるべきこと、支援体制などについてご紹介します。(以下、専門家監修による記事です)
目次
1. 子どものメンタルヘルスとは
子どもたちのメンタルヘルスにおける問題には、学校現場での集団への不適応をはじめとするさまざまな原因が考えられます。子どものメンタルヘルスについて、正しい知識と理解を持つことが大切です。
1.1 子どものメンタルヘルスの特徴
子どもは発達段階ごとに特徴があります。小学校低学年は、小学校に入学し晴れがましい気持ちで学校生活を始める時期です。幼稚園・保育園と異なり、授業に集中するのが難しかったり、集団生活に馴染むまでに時間がかかったりする子どももいます。これらは『小1プロブレム』と呼ばれますが、子どもたちには新しい環境への適応力があるため、親は心配しすぎなくて良いでしょう。
小学校中学年は、学校に慣れて逸脱行動が増えます。この時期は身体も大きく成長し、自己肯定感を持ち始めます。大人との関係より友人との関係を大事にする『ギャングエイジ』と呼ばれる時期です。自分と友人を比較する視点を持ち始めるため、子どもによっては劣等感を感じることもあります。
小学校高学年になると、自分と他者を比べて劣等感が生じ始めます。また前思春期(思春期の前段階)を迎え、子ども扱いして欲しくない気持ちがあり、異性を意識して男女が別々に行動し始めます。
中学生は思春期の入り口です。自分とは何かを考え始める時期で、大人に対して反抗したり、秘密を持ったりし始めます。情緒的に不安定になりやすくなるころです。この時期には中学校になじめない『中一ギャップ』や、学力不振による意欲の低下、対人関係などをきっかけとして、不登校の子どもの割合が大幅に増加する傾向があります。
高校生になると、中学生と違い自由を謳歌できるようになります。スマートフォンやSNSで社会とダイレクトにつながることができ、また18歳から成人とされるため、それまで以上に精神的な成熟が求められる時期です。
こうしたさまざまな要因・背景によって、学校に行きたがらない、部屋にひきこもる状態などの不登校の子どもが、年々増加して大きな問題となっています。
1.2 不登校やひきこもりとは
不登校児童生徒とは、文部科学省の定義によると「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。」(※1)とされています。
なお、「文部科学大臣が定める状況」とは、「何らかの心理的、情緒的、身体的若しくは社会的要因又は背景によって、児童生徒が出席しない又はすることができない状況(病気又は経済的理由による場合を除く。)とする。」(※2)と定義されています。ただし、定義では除外されているものの、現在では貧困やヤングケアラーによる不登校が増加傾向にあります。
【出典】
※1:文部科学省 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)「別添3 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成28年法律第105号)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1380960.htm
※2:文部科学省 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第二条第三号の就学が困難である状況を定める省令について(通知)「別添 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律第二条第三号の就学が困難である状況を定める省令」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2017/04/24/1384619_1.pdf
また、ひきこもりは、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念である。」(※3)と定義されています。
【出典】
※3:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000807675.pdf
不登校やひきこもりに影響すると考えられているのは、友人や教師との関係、学業不振、最近では貧困やヤングケアラーなどです。他に発達障害(学習障害やADHD)を抱える子どもに対して学校が十分に支援できていない、周囲から冷やかされて本人が自信をなくすなどの影響もあると考えられています。
また、不登校やひきこもりの原因が1つだけではなく、原因がどこにあるかわからない、またはいくつも存在する「複合」が増加しています。
1.3 子どもの不登校やひきこもりにみられる症状
学校を休んでいる期間、子どもはインターネットやゲームに没頭する、腹痛・頭痛・発熱がみられる、極度に落ち込むなどの様子が見られます。また学校に行きたがらない、部屋から出てこないといった代表的な行動のほか、下記のような身体的症状および精神的症状があります。(※4)
●体の症状 発熱、頭痛、腹痛、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、めまいなど ●精神症状 不眠、無気力、イライラ、集中力低下、憂うつ感など |
こうした症状は子ども本人の自覚症状だけではなく、他覚症状もあり、「なんだかいつもと様子が違う」という、家族だからこそ気づけるサインもあります。不登校やひきこもりは病気ではなく、「学校に行っていない」「ひきこもっている」状態ではありますが、そのなかにはこころの病気が隠れているケースもあります。統合失調症や不安障害、うつ病などで外に出られないこともあります。
【出典】
※4:厚生労働省 こころもメンテしよう『「ひきこもりや不登校」というサイン』https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/sos/sos_02.html
2. 不登校やひきこもりに対して親ができること
不登校やひきこもりに関しては、親や家族ができることと、第三者のサポートとして利用したい学校や教育委員会、各支援施設・団体の取り組みや支援があります。
2.1 不登校に対する基本的な考え方
不登校への対応において、文部科学省では4つの基本的な考え方を挙げています。(※5)
「(1)支援の視点」 「(2)学校教育の意義・役割」 「(3)不登校の理由に応じた働き掛けや関わりの重要性」 「(4)家庭への支援」 |
【出典】
※5:文部科学省『「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日』https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm
不登校の子どもへの支援の考え方として、文部科学省は、不登校の解決は、登校するという結果のみを目標にするのではないとしています。子どもが不登校の時期を通じて必要な休養をとり、また自分を見つめ直す時期となることで、将来の進路を主体的に捉えて、社会的に自立することが重要です。そのためには、不登校のきっかけや理由に応じて、適切な支援や働きかけを行う必要があります。
2.2 学校や教育委員会、各支援施設・団体の取り組みを知る
学校や教育支援センターなどでは、「児童生徒理解・支援シート」などを活用し、組織的・計画的に支援を行っています。不登校となったきっかけや理由を把握し、学級担任のほかに養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの学校関係者が中心となり、必要に応じて専門家が介入して子どもと保護者と話し合います。
また、地域や学校によって取り組みはさまざまですが、いじめや暴力行為などの問題を許さない学校づくり、不登校が生じないような魅力ある学校づくりや、不登校児童生徒の学習状況に応じた支援、多様な教育機会の確保などにも取り組んでいます。一人ひとりの状況に応じて、教育支援センターや不登校特例校、フリースクールなどの民間施設やICTを活用した学習支援などの取り組みも広がっています。
教育委員会では、学校・家庭と連携することで不登校を早期把握し、早期支援を実行する体制を作っています。その具体例としては、学校の取り組みを支援するための教育の整備、教育支援センターの整備、訪問型支援、民間施設との連携協力の充実などです。
不登校の対応においては在籍校と十分に連絡を取ることが大事ですが、教育委員会における教育支援センターや教育相談所、厚生労働省が管轄する児童相談所、保健所、精神保健福祉センターでも相談活動を行っています。
<編集部より>
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2.3 子どものこころと向き合うサポート
子どものこころと向き合うためには、子どもの状態を正しく把握することが重要です。不登校やひきこもりによって、一番つらい思いをしているのは子ども自身です。不登校のきっかけや理由がどのようなものかを把握し、それぞれに対するケアを行うことが大切です。
たとえば、いじめられて傷ついている状態の場合は、その傷のケアが必要です。勉強や部活を頑張りすぎて電池が切れた状態ならば、休息が必要でしょう。また苦手なことが多く自信を失っている場合には、苦手なことを整理して自信を回復させると良さそうです。そうすることで、本人・家族・学校が協力しやすくなります。
そして、子どもの状態を正しく把握するためには、話を聞くことが大切です。まずは子どもの話に耳を傾けることに集中して、子どもの気持ちに共感し、受け止めることです。特に子どもが感じていることを「つらいのね」「悲しかったのね」と言葉にして、子どもに寄り添うようにします。言葉で伝えきれない場合には、紙やスマホのメモに書いてもらうなどでも良いでしょう。
ただし、親としての意見や想いもあるでしょう。親が自責感を強めたり、孤立したりしないように、必要に応じて聞いた話をメモしておき、学級担任や養護教諭、スクールカウンセラー、専門家に相談して第三者と繋がることが大切です。また、子どもに何か身体的・精神的な症状が出ている場合には、本人が納得したうえで、カウンセリングや心療内科などの受診をすすめます。
2.4 不登校やひきこもりで避けるべきこと
避けるべきこととしては、子どもを否定したり責めたりすることです。すぐに原因を追及したり、話をさえぎって親の意見を言ったりしないことです。部屋にひきこもっていてゲームをしていても、それは本人が今できるベストなのだと認めるところから始まります。
子どもは、学校に行かないことで「自分はダメだ」「居場所がない」と不安に感じているため、変化や問題を指摘して頑張ろうと一方的に励ますよりも、一緒に考えようとする姿勢が大切です。
3. 不登校やひきこもりに対して適切なサポートを
不登校やひきこもりに対して重要なのは、まずは子どもに寄り添ったうえで状態を正確に把握することです。子どもの状態に合わせた適切な支援を行うことが、将来的に社会的な自立に繋がります。つらく、大変なときだからこそ、家族で支え合い、協力し合うことが大切です。ただし、家族だけで解決しようとするのではなく、必要に応じて学校や専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
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≪執筆者プロフィール≫
ライター・白石弓夏(しらいしゆみか)
看護師兼ライター。15年以上看護師として病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟で勤務中。
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≪ 監修者プロフィール≫
吉田美智子(よしだみちこ)
臨床心理士・公認心理師、東京都スクールカウンセラー。
東京・青山【はこにわサロン東京】主宰。「自分らしく生きる」を応援。相談内容は、愛着障害、アダルトチルドレン、アンガーマネジメント、解離性障害、グリーフケア、社交不安、身体表現性障害、摂食障害、適応障害、トラウマ・複雑性トラウマ、発達障害、ひきこもり、不登校、無気力、抑うつなど。カウンセリングは対面、電話、オンラインで。
参考
- 文部科学省「3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1286156.htm - 厚生労働省 e-ヘルスネット「不登校 / 登校拒否」(鳥取県立鳥取療育園 園長 / 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・客員研究員 稲垣 真澄、山梨大学医学部小児科講師 加賀 佳美)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-056.html - 厚生労働省 こころもメンテしよう「子どものメンタルヘルス」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/mental/index.html - 厚生労働省 こころもメンテしよう「ご家族の皆さんへ」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/parent/family/index.html - 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422155.htm - 内閣府ホームページ「特集2 長期化するひきこもりの実態」
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01honpen/s0_2.html
※当記事は、2023年7月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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