- トップ
- 記事一覧
- ライフステージと健康
- ライフステージから見る女性の健康と病気
女性の健康には、各年代における「ライフステージ」が密接に関係しています。ライフステージごとに変化する女性ホルモンの分泌によって、女性の心身に大きな影響があるためです。今回は、女性のライフステージの大まかな分類、またそれぞれのステージの体調の変化とホルモンバランスの特徴について解説していきます。
目次
1. 女性のライフステージとは
女性は、人生の中で生殖機能の発達により女性ホルモンの分泌に変化があります。女性ホルモンが出る量によって人生を小児期・思春期・性成熟期・更年期・老年期に分けられ、これをライフステージといいます。
1.1女性ホルモンとは
女性ホルモンは卵巣ホルモンとも呼ばれます。女性ホルモンには、妊娠の準備をするエストロゲン(卵胞ホルモン)と妊娠を成立・持続させるプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、どちらも卵巣から分泌されます。女性ホルモンの分泌は、排卵や月経を促すだけでなく、女性の身体全体にかかわるさまざまな影響があります。
エストロゲンには、子宮内膜の肥厚化、骨密度の保持、血管の強化などの働きがあります。プロゲステロンには、乳腺の発達、子宮の働きの調整、体温を上げるなどの働きがあります。
1.2女性ホルモン量の変化
女性が生まれて数年後から徐々に女性ホルモンが出はじめ、初経を迎える10代の思春期の中で一気にホルモン量が増えていきます。
20代ごろの性成熟期になると妊娠・出産できるように女性ホルモン量が整い、50歳前後の閉経を迎える更年期にはホルモン量が急激に減少します。そして55歳ごろからの老年期には、小児期と同じ程度の分泌量に減少します。
女性は一生のうちにこのようなホルモン分泌量を辿っていきます。一定量のホルモンが分泌されていることよって体調が整い、病気になりにくい状態ができます。しかし、女性の健康のベースとなっていたホルモン分泌量が急に減る更年期から老年期にかけては、さまざまな病気や症状が現れやすくなります。
2. 各ライフステージの体調の変化
女性が生まれてから老いるまでのライフステージによって、精神面および健康面でもさまざまな変化があります。
2.1小児期
小児期には、女性ホルモン分泌はほとんどありません。この時期は成長ホルモンの分泌が多く、まずは身体を大きく発達させようとしている段階です。たくさんの栄養をとり運動することが大切です。
2.2思春期
初経を迎え、生殖機能が発達していく時期です。思春期は身体の成長と比較するとこころの成長が未熟で、アンバランスになります。外見を気にして無理なダイエットをするケースもあるでしょう。
この時期の栄養が不足してしまうと、鉄欠乏、発育障害、拒食症・過食症といった摂食障害、無月経などを引き起こす場合があります。思春期の栄養摂取は一生の健康を左右するものなので、運動とともに適切に摂取することが大切です。
2.3性成熟期
心身ともに成熟している時期です。しかし子宮内膜症や子宮筋腫など、女性ホルモン量が多いことによって発症・進行しやすい病気があるため、定期的に健康診断および検診を受けましょう。
また、妊娠中に母子感染や重症化しないように予防接種を受けるのも大切です。風疹・麻疹や季節性のインフルエンザワクチン、子宮頸がんを予防するワクチンがあります。
女性も長く働く時代になり、仕事・家事・育児などのストレスによってホルモンバランスが崩れることがあります。規則正しい生活を送ることが大切です。
2.4更年期
更年期には女性ホルモンが急激に減少し、更年期障害が現れることがあります。更年期障害は「テストステロン」の減少により男性にも現れますが、女性と比べるとホルモンの減少が穏やかなため、症状もあまり出ないことが多いようです。
更年期障害では、自律神経失調症のような症状が現れます。具体的には、のぼせ・顔のほてり、動悸・息切れ、脈拍の上昇、発汗、血圧の上下、頭痛です。またイライラや不眠、うつといった精神面にも現れます。閉経後の場合、さらに膀胱炎・尿失禁、関節痛、無気力といった症状が出てきます。
生活習慣病やがんなどさまざまな病気にかかりやすい時期のため、性成熟期よりもさらに幅広く調べられる検診を定期的に受けましょう。
2.5老年期
女性ホルモンの分泌がほとんどない老年期には、身体のさまざまな部分で老化が始まります。それまでの過ごし方や生活習慣の影響が出る時期ともいえるでしょう。骨密度が下がることにより、骨粗しょう症のリスクもあります。骨量を保つためにもカルシウムとビタミンD・ビタミンKを多く含み栄養バランスのとれた食事を摂ることを意識しましょう。
何かしらの不調を抱えている場合でも、医師の指示通りに通院や病気の早期発見ができるように過ごすことが大切です。
3. 健康の保持と検診
女性ホルモンの増減によって不調や病気になりやすいため、健康を意識した生活を心がけましょう。
3.1健康的に過ごすには
女性ホルモンの分泌量は、ライフステージだけでなく日頃の生活習慣によっても容易に変動します。例えば無理な食事制限によるダイエットで栄養が不足すると、無月経や低体温などの原因になります。また、肥満はホルモンの分泌リズムを崩すだけでなく、生活習慣病の原因になってしまいます。
適正な体重を維持するために、1日3食のバランスの取れた食事を心がけましょう。白飯とともに、たんぱく質を中心としたおかず(肉・魚など)ともう1品(野菜、きのこ、海藻など)を意識してください。
また、筋トレを習慣化するのもおすすめです。適度な運動は生活習慣病の予防になり、冷え性・肩こり・足のむくみなどの改善、骨粗しょう症の予防になるなど健康的な体づくりに役立ちます。
さらに、女性ホルモンと睡眠は大きく関連しています。女性は月経周期による女性ホルモンの増減で、眠りが浅くなったり日中の眠気が強くなったりします。日中に太陽を浴び、昼・夜のリズムで生活することが大切です。
妊娠および出産の期間には、女性ホルモンの変動により睡眠障害になることもあります。かかりつけ医と相談しながら、適切に休息がとれるようにしましょう。
3.2受けておきたい検診
女性ホルモンの減少によって現れる病気の中でも、特に気をつけたい病気ががんです。早期に発見することで治療を早く開始できるため、子宮体がん・子宮頸がん・乳がん、また日本人罹患者数第1位・女性の死亡者数第1位(※1)である大腸がんの検診を受けましょう。
職場の特定健診や、詳細な検査が希望であれば人間ドックで生活習慣病の早期発見に努めましょう。また、女性ホルモン分泌量の低下に伴う骨粗しょう症の予防のため、骨密度の検査もおすすめです。
【出典】
※1:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
4. 女性ホルモンのバランスを整えて健康的に過ごすには
今回は、女性のライフステージとは何か、またそれぞれのステージの体調の変化とホルモンバランスの特徴について解説してきました。
女性ホルモンの分泌量には個人差があり、症状の現れ方もひとそれぞれです。できるだけ症状を軽減して健康的に過ごすためには、規則正しい生活を意識して、栄養バランスの摂れた食事や適切な運動・睡眠をとることが大切です。
ホルモンバランスに伴う体調と付き合っていきながら、自分らしい人生を送れるように、生活を整えていきましょう。
<編集部より>
「病院に行くほどではないけれど、ちょっと相談したい…」そんなとき、保健師や看護師などに相談できる『健康相談サービス』をご存じですか?詳しくはこちらをご覧ください。
**************-
≪執筆者プロフィール≫
訪問看護師ライター・那賀嶋幸恵(なかじまゆきえ)
新卒で急性期病院へ従事したのち、デイサービスや特別養護老人ホームなど様々な看護の場を経験。現在は訪問看護ステーションにて在宅医療の現場をみつつ、医療福祉のあり方を日々発信中。
***************
参考
- 江戸川区「女性の健康づくり」
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e057/kenko/kenko/kenkodukuri/jyoseinokennkou.html
- 江戸川区「令和2年度女性の健康応援情報誌」
https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/7470/r2wemens_health_magazine.pdf - 厚生労働省 e-ヘルスネット「若い女性の「やせ」や無理なダイエットが引き起こす栄養問題」女子栄養大学 栄養学部 食生態学研究室 准教授 林 芙美
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-006.html - 厚生労働省 eヘルスネット「更年期障害」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-081.html - 厚生労働省 eヘルスネット「骨粗鬆症の予防のための食生活」藤井 紘子
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-007.html - 厚生労働省 eヘルスネット「女性の睡眠障害」スリープクリニック銀座 渋井 佳代
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-005.html
※当記事は2023年7月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
いただいたコメントはつながるティーペック事務局に送信されます。 サイトに公開はされません。 コメントには返信できませんのでご了承ください。