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- 乳幼児の健康診査や予防接種など健康に関する制度
赤ちゃんが生まれると、さっそく始まる健康診査や予防接種。かかりつけの産婦人科医や自治体から、健康診査や予防接種の案内を受け取ったり、母子健康手帳を見たりして、「これからどんな種類のものを、何回くらい受けるのだろう」と疑問に思うこともあるのではないでしょうか。「ちょっと大変そうだな」と感じる人もいるかもしれませんね。 乳幼児は大人に比べて免疫力が低く、病気にかかりやすいものです。また、乳幼児のうちに早期発見しておきたい病気もあるため、乳幼児の健康診査や予防接種はとても大切です。この記事では、乳幼児の健康診査や予防接種の種類と目的を解説します。
目次
1.【健康診査】乳幼児の健康診査とは
1.1 何のために乳幼児健康診査を受けるの?
乳幼児健康診査は、子どもが健やかに発育しているか確認し、病気を早期発見するために行われるものです。乳幼児は自分で症状を訴えることができなかったり、今は無自覚でも将来的に症状が出る病気があったりするため、適切に健診を受けることが大切です。
なお、大人の健診も子どもの健診も同じ「健診」と呼びますが、大人の場合は「健康診断」で、乳幼児は「健康診査」が正式な名称です。
1.2 乳幼児健康診査の種類と費用
乳幼児健康診査には、「1歳6か月児健診」と「3歳児健診」、「その他の健診」があります。1歳6か月児健診と3歳児健診は、母子保健法で定められた法定健診です。各自治体によって実施されているため、「うっかり忘れてしまった」ということのないようにしましょう。
ほとんどの自治体では法定健診を公費でまかなっているため、保護者の費用負担はないことが多いです。
1歳6か月児健診と3歳児健診は、住んでいる自治体が行います。健診の内容は、全国どこの自治体でも同じです。健診の時期が近づくと、自治体からハガキなどで受診の案内が来るので確認しましょう。
また、母子健康手帳にも乳幼児健康診査についての記載があるため、時間があるときに目を通しておくとよいですね。
法定健診のほか、自治体やかかりつけ医などが独自に行っている健康診査もあります。一例としては、「3~4か月児健診」や「2歳児歯科健診」などです。
2.【健康診査】乳幼児の健康診査の内容
それでは、それぞれの乳幼児健康診査の内容をおさえていきましょう。
2.1 1歳6か月児健診の内容
1歳6か月児健診では、運動機能や栄養状態、言葉の遅れがないかなど、全身の発育状態を確認します。1歳6か月といえば、走ったり階段をゆっくり上ったり、おもちゃを手に取って遊んだりと、好奇心や活発さが目立ってくる時期です。健診では、専門家がこのような子どもの反応を観察します。
1歳6か月児健診の健診項目は、「母子保健法施行規則」で以下のように定められています。
1.身体発育状況(身長・体重・頭囲・胸囲) 2.栄養状態 3.脊柱(せきちゅう)及び胸郭(きょうかく)の疾病及び異常の有無 4.皮膚の疾病の有無 5.歯及び口腔(こうくう)の疾病及び異常の有無 6.四肢(しし)運動障害の有無 7.精神発達の状況 8.言語障害の有無 9.予防接種の実施状況 10.育児上問題となる事項 11.その他の疾病及び異常の有無 |
また、普段子どもの発育で気になっていることや、育児する上で心配なことがあれば、遠慮なく医師や保健師に相談しましょう。些細に感じることでもかまいません。保護者が安心して育児に臨めるようにするのも、健診の目的です。
1歳6か月児健診は2歳の誕生日の前日までに受ける必要があるので、忘れないよう注意しましょう。
2.2 3歳児健診の内容
おもちゃや遊具を使って元気に遊び、語彙も増え、おしゃべりも上手になっていきている3歳児。3歳児健診も、1歳6か月児健診と同様、心身が健康に発育しているかどうかを確認します。
健診内容は1歳6か月児健診とほぼ同じですが、次の項目が追加されます。
・眼の疾病及び異常の有無 ・耳、鼻及び咽頭(いんとう)の疾病及び異常の有無 |
なお、3歳児健診は、4歳の誕生日の前日までに受けなくてはなりません。
2.3 その他の健診の時期と内容
その他の健診として多く実施されているのが、「3~4か月児健診」や「9~10か月児健診」など、月齢に応じた健診です。自治体によっては他の月齢でも健診が行われることがあります。また「2 歳児歯科健診」といった歯科健診もあります。これらは「任意健診」と呼ばれるもので、自治体や小児科の診療所などが独自に行っています。詳細は、住んでいる自治体やかかりつけ医に確認しましょう。
「2 歳児歯科健診」では、乳歯の状態を確認します。専門家から子どもの歯の正しい磨き方などのアドバイスを受ける貴重な機会です。家庭ではなかなか子どもの口の中を確認しづらいため、住んでいる自治体が実施しているときは、ぜひ受けるようにしましょう。
これらの健診については、受診は保護者の任意です。子どもの発育で心配なことがある場合には専門家に相談するよい機会になるため、受診をおすすめします。
3.【健康診査】乳幼児健診はどのように実施されるのか
子ども連れでの外出は、保護者にとって一苦労です。健診の会場やどのような手順で行われるかを事前に知っておくことで、スムーズに健診に出かけられるかもしれません。
ここでは、乳幼児健康診査がどのように行われるのかを解説します。
3.1 集団健診と個別健診
乳幼児健康診査には、個別健診と集団健診があります。法定健診はほとんどが集団健診で行われているようですが、乳幼児の健診は個別で健診を行っている自治体は少なくないようです。
3.2 集団健診の手順
集団健診は、市町村の「保健センター」などの施設で行われます。健診時の持ち物は、母子健康手帳、保険証、受診票、子どもの着替え、オムツ、タオルなどです。自治体からの案内に持ち物が記載されているため、確認しましょう。
また、身体測定があるため、子どもの衣服は着脱しやすいものが便利です。
集団健診の会場に着いたら、受付で母子健康手帳を提出します。会場の係の案内に従って、身長や体重などの身体測定や、医師や歯科医師の診察、育児相談などを順番に受けていきましょう。
健診は、医師や歯科医師、保健師、助産師などの専門家が担当します。
3.3 かかりつけ医による個別健診
かかりつけ医による個別健診も、診察内容は集団健診と同じです。受診する前に、健診が受けられるか医療機関に問い合わせ、予約を行いましょう。
なお、健診の際に保健師や助産師などの医師以外の専門家によるフォローが受けられるかどうかは、かかりつけ医により異なります。
集団健診とかかりつけ医による個別健診のメリット・デメリット(一例)
集団健診 | かかりつけ医の個別健診 | |
---|---|---|
メリット | 予約不要。 会場で月齢が近い子どもの保護者と会うため、情報交換できる。 保健師や助産師などの専門家に相談できる。 | 予約制のため、保護者とかかりつけ医の相談で日時を決めることができ、待ち時間が少ない。 かかりつけ医が健診するため、病気で受診する際に引き続き見てもらえる安心感がある。 予防接種も同時に行える場合がある。 |
デメリット | 健診場所や日時が決まっている。 | 予約の手間がかかる。 助産師や心理士などの専門職がいないことがある。 |
4.【予防接種】乳幼児の予防接種には、どのようなものがあるのか
子どもが生まれると、「乳幼児の予防接種ってこんなに多いの?」と驚く保護者もいるのではないでしょうか。乳幼児の予防接種は、予防接種法で定められており、「定期接種」と「任意接種」があります。
それぞれどのような予防接種なのか、解説します。
4.1 定期接種とは
予防接種でまず押さえたいのが定期接種です。定期接種は予防接種法で定められており、必ず受けなくてはならないものです。発生すると感染が広がる恐れや、感染した場合に重症化するリスクがある病気を予防する目的で行われます。
4.1.1 定期接種の種類
定期接種には、4種混合やMRワクチンと呼ばれるものがあります。4種混合ワクチンは、ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)に、MRワクチンは麻しん、風しんに対する予防効果があります。
定期接種の種類
・4種混合…ジフテリア、百日せき、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ) ・B型肝炎 ・Hib感染症 ・小児の肺炎球菌感染症 ・結核(BCG) ・MRワクチン…麻しん、風しん ・水痘 ・日本脳炎 ・ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ・ロタウイルス |
4.1.2 定期接種の費用
定期接種の費用は原則として自治体がまかなっており、保護者の負担はありません。
4.2 任意接種とは
任意接種は、定期接種とは異なり、必ず受けるべきものではありません。あくまでも保護者の判断なので、よく検討しましょう。
しかし、流行に備え、子どもの健康を保つためには接種しておいた方が安心です。任意接種にはどのようなものがあるのか、確認しておきましょう。
4.2.1 インフルエンザ
任意接種でよく知られているのが季節性インフルエンザです。乳幼児の場合も、任意接種の代表的なものとして季節性インフルエンザワクチンがあげられます。
インフルエンザウイルスの中でも季節性インフルエンザは、毎年秋から冬に流行します。季節性インフルエンザに感染すると、38度以上の高熱や頭痛、関節痛などの症状が現れます。子どもの場合、まれに急性脳症を起こし重症化するケースがあります。
幼稚園や保育園で季節性インフルエンザがはやり、クラス閉鎖になることもあるため、流行する前に接種するのがおすすめです。時期的に季節性インフルエンザワクチンが不足することがあるため、早めに接種するほうが安心です。
4.2.2 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
任意接種には、季節性インフルエンザワクチンの他に流行性耳下腺炎があります。通称おたふくかぜと呼ばれるものです。流行性耳下腺炎にかかると、両方の耳の下、または片方に腫れがおこります。感染すると、まれに無菌性髄膜炎や難聴などの後遺症がおこることがあるため、接種しておくと安心でしょう。
これらの他にも任意接種があります。受けるべきか迷う時には専門家に相談するなどして、適切に判断するようにしましょう。
4.2.3 任意接種の費用
任意接種の費用は、基本的には自己負担です。ただし、一部は公費でまかなわれるものもあるため、自治体やかかりつけ医に確認しましょう。
5.【予防接種】 乳幼児の予防接種はスケジュール管理が大切
乳幼児の予防接種はとにかく数が多いため、保護者の負担は少なくありません。しかし、予防接種は子どもが感染症にかかりやすい年齢に接種のタイミングが設定されており、遅れないように受けることが大切です。乳幼児の定期接種の多くは、生後2ヶ月から4ヶ月の間と、1歳から2歳未満に集中しています。接種の時期になると自治体から案内が届きます。
保護者の仕事の都合があったり、子どもが急に体調を崩したりして、予定通り接種できないこともあるため、余裕を持って計画を立てるのが大切です。
母子健康手帳にある予防接種の記録欄や、予防接種のスケジュール表などを用いて、接種もれがないようにしましょう。
6.乳幼児健診も予防接種も、母子健康手帳を活用して適切に管理しよう
乳幼児の健康や発育のためには、健診や予防接種が重要です。自治体や医療機関によってタイミングが異なるため、母子健康手帳に記載されている時期や自治体からの案内を見ながら、適切に管理しましょう。
<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
ライター・秦 さきよ(はたさきよ)
看護師・保健師・糖尿病療養指導士(L)。2020年よりライターとして活動。医療や介護、SDGsに関する記事を多数執筆している。
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参考
- 厚生労働省 国⽴研究開発法⼈ 国⽴成育医療研究センター「乳幼児健康診査事業 実践ガイド」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000520614.pdf - 厚生労働省「厚生労働省におけるこれまでの取組」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11921000-Kodomokateikyoku-Soumuka/koremade.pdf - 厚生労働省「標準的な乳幼児期の健康診査と保健指導に関する手引き」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/tebiki.pdf
- 厚生労働省「よくある質問」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kihonteki_keikaku/index_00001.html#Q1 - 厚生労働省「接種類型と定期接種化プロセスについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000550939.pdf - 厚生労働省「ロタウイルス」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/rota_index.html - 厚生労働省「令和4年度インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2022.html#Q1
- 厚生労働省「遅らせないで!子どもの予防接種と乳幼児健診」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11592.html
※当記事は、2023年6月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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