「夕方になると靴がきつい」「靴下の跡がくっきり残る」など、体のむくみは多くの人が日常的に経験するありふれた症状です。しかし、むくみには、それほど心配のないものと、病気が原因で注意が必要なものが混ざっています。本記事では、むくみを3つのタイプに分けて、見分け方と受診の目安を分かりやすく解説します。
目次
1.そもそもむくみってどういうこと?むくみのタイプの見分け方
むくみとは、血管の外側に余分な水分がたまった状態のことです。医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。なぜ水分がたまるのか、体の仕組みから確認しましょう。
私たちの体は、血管を流れる血液で全身に酸素と栄養素を届けます。細胞への酸素と栄養素の受け渡しは、毛細血管から水分がしみ出して細胞の周囲を満たすことで行われます。しかし、その状態のままでは細胞が水浸しになってしまうため、老廃物を含んだ余分な水分は再び血管やリンパ管へ回収されます。しみ出すのが「配達」、戻るのが「回収」でどちらも自然な体の働きです。
むくみは、この配達と回収の収支が合わなくなった状態です。収支のバランスが崩れて回収が追い付かなくなると、水分が組織にたまって膨らみ、むくみとなります。
むくみには翌朝には戻る心配のいらないむくみと、病気が原因で医療機関の受診が必要なむくみがあります。見分ける手掛かりは次の3点です。タイプ別に見ていきましょう。
<むくみの見分け方のポイント>
- 出方……ゆっくりなのか、突然なのか
- 範囲……両側に出るのか、片側だけか、1ヵ所だけか
- 痛み……痛みや熱っぽさを伴うか
2.【夕方タイプ】ゆっくり出て翌朝には戻るむくみ
夕方になると強く出て、両脚に同じように出る。痛みはなく、一晩眠れば戻る。これが「夕方タイプ」の特徴です。多くの人がむくみと呼んでいるのは、このタイプです。日中を起きて過ごす以上、程度の差はあれ誰にでも起こることで、基本的には心配のいらないむくみです。
脚に下りた血液を心臓へ押し戻しているのは、ふくらはぎの筋肉です。歩いたり足首を動かしたりすると筋肉が縮み、静脈を外から圧迫して血液を押し上げます。これを「筋ポンプ作用」といい、ふくらはぎが「第二の心臓」と呼ばれるのはこの働きがあるからです。ところが、デスクワークで座り続けたり接客業で立ちっ放しだったりすると、このポンプが働きません。血液が脚にとどまって水圧が上がり、しみ出す量が増えて回収が追い付かなくなります。
夜、横になると脚と心臓の高さが同じになり、脚にかかっていた水圧が下がります。しみ出す量が減る一方で、回収は常に働いていますから、たまっていた水分は自然に血管やリンパ管へ戻っていきます。翌朝には脚のむくみが引いているのは、このためです。
●ためてからほぐすより、日中にためない
むくみ対策というと帰宅後のケアを思い浮かべがちですが、日中の過ごし方を変えて予防する方が効果的です。次のことを試してみてはいかがでしょうか。
- 1時間に1度、ふくらはぎを動かす……座り仕事なら立ち上がって、立ち仕事ならその場で、1時間に1度はふくらはぎの筋肉を動かします。かかとの上げ下ろしを10回程度行いましょう。足首を小刻みに動かすより、かかとをしっかり上げ下ろしする方が効果的です。
- 座り方を見直す……足を組むと脚の付け根が圧迫されます。足裏が床につく高さにイスを合わせるだけでも違います。
- 昼食の塩分を控える……塩分を取り過ぎると体内の塩分濃度を薄めるために、体が水分をため込みます。麺類の汁を残す、しょうゆやソースなどの調味料を減らすなど、塩分控えめを意識しましょう。
- 水分補給は適切に……むくみが気になるからと水分補給を控えるのはおすすめできません。体が不足した水分をため込もうとするため、逆効果になる場合があります。
3.【突然タイプ】1ヵ所だけ急に腫れるむくみ
「朝起きたら唇が腫れ上がっていた」「片方の目がふさがるほどまぶたが腫れた」など、突然のむくみは夕方タイプとはまったく別の仕組みで起こります。「クインケ浮腫(血管性浮腫)」と呼ばれるものです。
クインケ浮腫では数分から数時間のうちに腫れ上がり、2~3日ほどかけて自然に消えていきます。まぶた、唇、舌、手足に出やすく、左右対称ではなく1ヵ所に限られます。じんましんと間違われやすいのですが、じんましんが皮膚の浅い層で起こるのに対し、クインケ浮腫は皮膚の深い層で起こるため、赤みが少なく腫れの境目がはっきりしません。かゆみを伴わないことが多く、指で押しても跡が残らないのも特徴です。
原因は、食べ物や薬へのアレルギー、ストレス、疲労、温度や圧迫などの物理的な刺激とさまざまです。詳しく調べても特定できないことが少なくありません。アスピリンなどの解熱鎮痛薬や、一部の血圧の薬を飲んでいる場合は、それが原因で起こることもあります。
唇やまぶたなどであれば、見た目には驚くものの、数日で治まることがほとんどですからそれほど心配はいりません。ただし、喉が腫れた場合は話が別です。気道がふさがり、窒息の危険があります。声がかすれる、飲み込みにくい、喉に違和感がある、息が苦しいといった症状があれば、迷わず救急車を呼んでください。
●繰り返す場合は遺伝性血管性浮腫(HAE)の可能性も
クインケ浮腫のような突然のむくみを何度も繰り返している場合は、「遺伝性血管性浮腫(HAE)」という病気が隠れていることがあります。一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(略称:DISCOVERY)によれば、HAEは日本における有病率が5万人に1人程度とされるまれな病気です。最初の症状から診断まで、平均13.8年あるいは15.6年もかかっているとされています。
HAEでは、血管からの水分のしみ出しを抑える「C1インヒビター」というたんぱく質が生まれつき作られる量が少なかったり、働きが弱かったりします。しみ出しのブレーキが利かないため、抜歯や手術、けが、ストレス、疲れ、月経などをきっかけに、突然のむくみが繰り返し起こります。アレルギーとは仕組みが違うため、じんましんの薬を飲んでも効きません。
むくみが起こる場所はまぶたや唇、手足に限りません。おなかの中で起これば激しい腹痛や吐き気となって現れ、虫垂炎と間違われて手術を受けてしまうこともあるとされています。クインケ浮腫と同じように喉が腫れれば、窒息の危険があります。
HAEは診断がつけば有効な治療を受けられます。原因のはっきりしない腫れや腹痛を繰り返している場合は、一度、皮膚科やアレルギー科で相談してみてください。家族に同じような症状の人がいれば、それも手掛かりになります。
4.【片側タイプ】片方の脚だけに起こる痛みを伴うむくみ
片方のふくらはぎだけがむくんで太くなる、押すと痛い、赤みや熱っぽさがある。こうした症状は、「深部静脈血栓症」のサインの可能性があります。脚の深部の静脈に血の塊(血栓)ができ、血流をせき止めた結果としてむくみが起こります。急に腫れることもあれば、数日かけてゆっくり腫れることもあります。
怖いのは、その血栓が剥がれ、血流に乗って肺の血管に詰まる「肺塞栓症」です。肺の血管が詰まるとその先に血液が流れず、酸素を取り込めなくなります。突然の息切れや胸の痛みが起こるだけでなく、命に関わることがあります。
このような症状は、長時間の飛行機での移動の後に起こりやすいことから、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれてきました。ただし、実際に起こるのは飛行機での移動後に限りません。デスクワークや長距離の運転、災害避難時の車中泊、体調を崩して寝込んだ時など、長時間同じ姿勢を続ければ状況を問わず起こり得ます。長く座ったり寝込んだりした後に歩き出した時やトイレに立った時に起こりやすいのが特徴です。次のような症状の場合は、血栓症を疑ってすぐに医療機関を受診してください。
<血栓症を疑うサイン>
- 片脚だけのふくらはぎの痛みやむくみ、赤みや皮膚の色の変化
- 突然の息切れ、息苦しさ、冷や汗
- 胸や背中の痛み、咳、血の混じった痰
- 動悸、めまいやふらつき、失神
●ピルを飲んでいる人へ 知っておきたい血栓症のリスク
低用量ピルは、避妊だけでなく月経困難症や子宮内膜症の治療にも使われており、多くの人が服用しています。飲み始めの時期にはむくみをはじめ、吐き気、だるさ、胸の張りといった症状が出ることがありますが、その多くは1~3ヵ月ほどで体が慣れ、次第に治まっていきます。
一方で、ピルに含まれる女性ホルモンには血液を固まりやすくする働きがあり、血栓症のリスクがわずかに高くなることが知られています。過度に恐れる必要はありませんが、リスクがあることは知っておきましょう。
先に挙げた血栓症を疑うサインのほか、経験したことのない激しい頭痛や、物が見えにくい、ろれつが回らないといった症状があれば、脳の血管に血栓ができて脳梗塞を起こしている可能性があります。ピルの服用を中止し、すぐに医療機関を受診してください。
5.そのほかに気を付けたいむくみ
3つのタイプのほかにも、病気が原因の注意したいむくみがあります。次のような場合は病気が原因の可能性がありますので、早めに医療機関を受診しましょう。
- 顔やまぶたのむくみが何日も続く……腎臓の不調によって水分を血管へ引き戻す役割のたんぱく質(アルブミン)が尿へ漏れ出し、血液中に不足してむくみが現れることがあります。
- 両脚のむくみに息切れや動悸を伴う……心臓のポンプの働きが落ちているサインかもしれません。数日で体重が増えた、横になると息苦しいという場合は受診が必要です。
- 押しても跡が残らない……両脚がむくんでいるのに、すねを指で数秒押してもへこみが残らないことがあります。甲状腺の働きが落ちている時に見られることがあり、寒さを感じやすくなる、体重増加、だるさ、便秘を伴いやすいのが特徴です。女性に多い病気です。
- 飲んでいる薬が原因のことも……高血圧の薬や痛み止めなど、副作用としてむくみが起こる薬があります。また、風邪薬や胃腸薬、こむら返りに使われる漢方薬などに含まれる「甘草」の作用で、むくみや血圧の上昇が起こることがあります。むくみの症状で医療機関を受診する際は、服用している薬を伝えて相談しましょう。
6.「病院に行くほどではない?」と迷った時は
むくみの多くは、一晩眠れば治まる心配のいらないものです。しかし、中には病気が原因で、すぐに受診が必要なものも含まれています。それでも、むくみ程度では「大したことではないと思われそう」「忙しくて時間が取れない」と、受診を迷ってしまうかもしれません。
受診が必要かを判別する目安となるのは、冒頭で紹介したむくみの「出方」「範囲」「痛み」の3点です。両脚に同じように出て翌朝に戻る場合は、まず日頃の生活習慣を見直してみましょう。1ヵ所が急に腫れた、片脚だけが痛むという場合は、医療機関の受診が必要です。
もう一つのポイントは「いつもと違う」です。「夕方の靴のきつさ」「靴下のゴム跡の残り方」「指輪の抜けにくさ」など、自分なりの目安を決めていつもの状態を把握しておきましょう。むくみの症状がいつもと違う、あるいはいつもよりひどい状態が続くようなら、医療機関で相談しましょう。
原稿・社会保険研究所Copyright
<編集部より>
「むくみが続いている」「いつものむくみと違う気がする」など、むくみについて不安や違和感がある時に、保健師や看護師などに相談できる、「健康相談サービス」をご存じですか?詳しくはこちらをご覧ください。
※当記事は、2026年8月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
いただいたコメントはつながるティーペック事務局に送信されます。 サイトに公開はされません。 コメントには返信できませんのでご了承ください。