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公的医療保険は、あなたを守る強い味方!~制度を知って、いざというときに備えよう~【制度解説】

公開日:2024.02.21

私たちがけがや病気で医療機関を受診しても、窓口で支払う金額は医療費の一部(1割~3割)で済みます。これは、公的医療保険が医療費の多くの部分を負担しているからです。公的医療保険は、いざというときの心強い味方といえます。今回は、公的医療保険の制度についてご紹介します。

1.公的医療保険と民間医療保険

医療保険には、「公的医療保険」と「民間医療保険」の2種類があります。
公的医療保険は国が管理し、日本国民すべてに加入が義務付けられています。一方、民間医療保険は任意で加入するもので、個人のニーズに応じて保障内容を選択することができますが、健康状態などによっては加入できない場合もあります。
公的医療保険は、すべての人が医療費の一部を負担するだけで、安心して医療を受けることができます。

2.日本の公的医療保険の特徴

日本の公的医療保険の主な特徴は、以下の3点です。

・国民皆保険
日本はすべての国民が公的医療保険に加入することになっています。アメリカなど無保険の国民がいる国も多い中、日本の「国民皆保険」は世界に誇れる制度といえます。

・フリーアクセス
大病院・中小病院・診療所など医療機関の規模や、内科・外科などの診療科を問わず、受診したいと思ったときに自由に受診先を選ぶことができます。

・安い医療費で質の高い医療
医療費の自己負担割合は1~3割です。それ以上は公的医療保険でカバーされる上、質の高い医療を受けることができます。

3.公的医療保険の種類

公的医療保険にはすべての国民が加入しますが、勤務先や働き方、年齢によって加入する制度が異なります。大きく分けると、企業や団体などに雇用されている人とその家族が加入する「被用者保険」、自営業の人や会社を退職した人などとその家族が加入する「国民健康保険」、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の3つがあります。

●被用者保険

会社や団体などに雇用されている人とその家族が加入する医療保険です。会社や団体ごとに加入するため、その会社や団体に雇用されている人は皆同じ医療保険に加入することになります。
被用者保険には大企業の従業員等が加入する「健康保険組合」、健康保険組合がない企業の従業員等が加入する「協会けんぽ」、海上で働く船員が加入する「船員保険」、公務員や教職員などが加入する「共済組合」があります。
なお、保険料は給料を基に決められた「標準報酬月額」(4月~6月の給料の平均)に基づいて計算され、会社と折半して納めます。本人(被保険者という)と同一生計の配偶者、親、子供など3親等内の親族を被扶養者にすることができますが、被扶養者の有無や人数によって保険料が変わることはありません。

●国民健康保険

被用者保険、後期高齢者医療制度に加入されていない人を対象とした医療保険です(生活保護を受けている人は除く)。都道府県および市町村(特別区を含む)が保険者となる「市町村国保」と、業種ごとに組織される「国民健康保険組合」があります。被用者保険の場合、被保険者に扶養されている家族は被扶養者という位置付けになりますが、国民健康保険では加入者一人一人が被保険者となります。
保険料は、世帯ごとに所得や資産額、世帯人数等に応じて算出され、世帯主が負担します。保険料の計算方法は自治体や国民健康保険組合によって異なります。
なお、市町村国保の場合、令和3年度の1世帯当たりの保険料は年額146,899円、1人当たりの保険料は年額97,179円となっています。

●後期高齢者医療制度

75歳以上(および65歳以上で一定の障害がある人を含む)の高齢者が加入する医療保険です。75歳になるとそれまで加入していた医療保険から外れ、必ず後期高齢者医療制度に加入します。
保険料は、公的年金の受給額が年額18万円以上の人は、原則、年金からの天引きで納めます。計算方法は後期高齢者医療広域連合が決定し、2年ごとに保険料率が改定されます。
なお、令和4・5年度全国平均の保険料額は、年額77,663円(月額6,472円)です。
高齢になると病気にかかりやすくなり医療費が増える一方で、収入が年金中心になるため負担できる保険料には限界があります。そのため、給付にかかる費用を税金や現役世代の医療保険が負担する支援金・納付金で賄っています。

4.医療費の自己負担割合は、年齢や所得で異なる

医療費の自己負担割合は、年齢や所得などに応じて決められており、具体的には、以下の通りとなっています。

・75歳以上の人は、1割
(現役並み所得者は3割、現役並み所得者以外の一定所得以上の人は2割)
・70歳~74歳までの人は、2割(現役並み所得者は3割)
・70歳未満の人は3割。6歳(義務教育就学前)未満の人は2割

医療費の自己負担割合

【出典】厚生労働省「我が国の医療保険について」より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html

5.公的医療保険で受けられる給付

公的医療保険で受けられる給付は法律で決められており、主に以下があります。

●病気・けがをしたとき

病気・けがをしたとき、健康保険を扱う医療機関の窓口に被保険者証(マイナンバーカードも含む)を提示すれば、必要な医療が受けられ、医師から処方箋を交付されたときは保険薬局で薬を調剤してもらえます(療養の給付)。
また、入院した場合には食事の給付(入院時食事療養費)を受けられますが、この場合には、1食460円の食事療養標準負担額を医療機関の窓口で支払います。

●病気・けがで働けないとき

・傷病手当金
被保険者が業務外の病気やけがで仕事を休み、給料が受けられないときには「傷病手当金」が支給されます。なお、国民健康保険の加入者は、原則、傷病手当金の支給はありません。

【傷病手当金の給付条件】
・業務と無関係の病気やけがで療養中(業務中の場合、労災保険が適用)
・今までの仕事に就けない
・連続した3日を含み4日以上休んだとき
・給料を受けられない
【支給額】
・欠勤1日につき「直近の継続した12ヵ月間の標準報酬月額の平均の30分の1」の3分の2相当
【支給期間】
・支給開始日から通算1年6ヵ月以内の期間

●医療費が高額になったとき

・高額療養費

医療費の自己負担額が一定の限度額を超えたときは、申請により「高額療養費」として超えた分の払い戻しが受けられます。

70歳未満の人の自己負担限度額(※)

70歳未満の人の医療費の自己負担限度額

※療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた場合には、4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。

(※)出典:「『社会保険の概要と健康管理が学べる 社会保険ガイド 令和6年度版』、社会保険研究所、2023年」より引用

●出産したとき

・出産育児一時金/家族出産育児一時金
被保険者が出産したときには「出産育児一時金」が、被扶養者が出産したときは「家族出産育児一時金」が支給されます。

【支給額】
妊娠4ヵ月(85日)を経過した出産1児につき500,000円
(在胎週数が22週に達していないなど、産科医療補償制度加算対象出産でない場合は488,000円)

・出産手当金
被保険者が出産で仕事を休み、給料を受けられないときは「出産手当金」が支給されます。なお、給料を受けられる場合でも出産手当金より少ないときは、差額が支給されます。国民健康保険の加入者は、原則、出産手当金の支給はありません。

【支給額】
欠勤1日につき、「直近の継続した12ヵ月間の標準報酬月額の平均の30分の1」の3分の2に相当する額
【支給期間】
産前42日(多胎妊娠98日)から産後56日まで。出産予定日以後の出産では遅れた期間も支給

関連記事:出産の費用が心配?妊娠・出産で受け取れる給付、補助を知っておこう

6.公的医療保険は、支え合いの制度

厚生労働省の「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」によると、人口1人当たりの国民医療費は358,800円、前年度の340,600円に比べて18,200円、5.3%の増加となりました。これが使われた医療費の額を確認できる直近の調査結果です。過去にさかのぼると平成元(1989)年度の人口1人当たりの国民医療費は160,100円で、平成から令和の時代に至る間に倍増しています。

医療技術の進歩や高齢化等で、医療費は年々増加していますが、公的医療保険の財源は主に保険料と公費で賄われています。具体的には、個人、企業、さらには国や地方自治体が負担しており、支え合いの制度であるといえます。いつでも安心して医療が受けられる公的医療保険は、誰にとっても大切な制度です。この制度を持続的に運営できるように、例えば緊急時以外の診療時間外に受診することや、同じ病気やけがで複数の医療機関を受診(はしご受診)することなどは控えて、適正な受診を心掛けましょう。


原稿・社会保険研究所Copyright

参考

※当記事は、2024年2月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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