気になる症状と病気

日常生活で工夫して、つらい腰痛を予防する

今や「国民病」といわれる腰痛。その多くは「悪い姿勢」「運動不足」など生活習慣が原因になっていますが、日常の何気ない動作や姿勢が引き金となり腰痛が起きてしまうことも。日々の生活の中でちょっと工夫して、つらい腰痛を予防しましょう。

1.男性、女性ともに「腰痛」が自覚症状のトップに

国民の健康状態などを調査する「令和4年国民生活基礎調査」(厚生労働省)の結果では、痛みなどの自覚症状のある症状として、男性、女性ともに「腰痛」がトップでした。(※)過去の調査では、男性は「腰痛」がトップで「肩凝り」が2位、女性は「肩凝り」がトップで「腰痛」が2位という結果が続いていましたが、今回は女性も男性と同じく腰痛がトップとなりました。多くの人が日常的に腰痛に悩まされていることになります。

腰痛は今や国民病といっても過言ではありません。職場や家庭、育児や介護などのシチュエーションごとに腰痛予防のポイントを見てみましょう。

(※)

厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html

「結果の概要>Ⅲ 世帯員の健康状況>1自覚症状の状況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/04.pdf

2.腰痛の原因

腰痛は症状ですからさまざまな原因が考えられます。「ぎっくり腰」、「椎間板ヘルニア」、「坐骨神経痛」など、痛みをもたらす病気や症状にも多くの種類が考えられるため、詳しく検査をしなければ断定はできません。医療機関を受診せずに自己判断で我慢していると、悪化してしまう可能性もありますので、早めに医療機関を受診するのがお勧めです。

一言で腰痛といっても痛みの要因も急性のものか、慢性のものか、あるいは心因性なのか、それらが混ざった混合性のものなのか、さまざまな状態が考えられます。このうち心因性の場合とは、精神的なストレスが引き起こす腰痛です。腰には異常が見られないのに、ストレスから腰痛を発症してしまうということです。治療には心理的カウンセリングも必要で、整形外科と精神科の医師が一緒に治療している医療機関もあります。コロナ禍を経て不安感を抱いたり、在宅勤務で他人とのコミュニケーションが少なくなり、心因性の腰痛が増えていると見られています。心因性では自分だけでなく、家族など周りの人が気付いて支援することが求められます。

腰痛に加えて、足のしびれや、足の指を自分で上げることができないなどの症状がある場合は、神経が圧迫されている心配があります。痛みが強い場合やいつもと異なる気になる症状が続く場合は早めに専門医を受診するようにしましょう。

3.腰痛予防のポイント

職業や生活環境などにより詳細は異なりますが、腰痛予防の共通ポイントは下記となります。

<腰痛予防の共通ポイント>

・正しい姿勢をとる

・正しい姿勢になるように、机やその他器具などの高さ、配置、向きなどを調整する

・長時間同じ姿勢、体勢にならないようにする

・筋力をつける

・ストレッチなどで体をほぐす

・適切な器具、道具を使用する(座面を調整できる椅子やウレタンマット、腰痛防止ベルト等)

職場での注意点

「職場」では、立ち仕事や座ったままの仕事の人は、長い時間同じ姿勢のままなので、腰痛を起こしやすくなります。意識して時々体を動かしたり、違う動作をしたりするよう心掛けましょう。座り仕事が多い人は、椅子に座ったままストレッチをしたり、時々立って動くようにします。椅子の座面の高さや背もたれの角度調整を適切に。PCやキーボード、マウスの配置などの調整も重要です。座るときは背中を真っすぐにして、正しい姿勢を心がけましょう。立ち仕事が多い人は、近くに椅子を置いて時々座れるようにするなど、腰に過重に負担が掛からないような工夫をしましょう。

重い荷物を持ち上げると腰に大きな負担がかかります。その際は腰を伸ばしたままかがむのではなく、いったんしゃがみ、低い姿勢で荷物を体に密着させるような体勢を取ってから立ち上がるようにすると腰への負担を減らせます。高い所の荷物を降ろすときは、背伸びをせずに踏み台を使うようにしてください。

家事をするときの注意点

「家事をするとき」に腰への負担を軽減するためには、できるだけ中腰やかがむ動作をなくし、長時間同じ姿勢のままで作業をしないようにすることが大切です。また、朝目覚めたとき、飛び起きてバタバタと動くと、突然、腰痛を起こすことがあります。布団の中でウォーミングアップして筋肉を温め、血行を良くしてから動きましょう。寝具も腰痛に影響を与えることがありますので、マットレスや、枕の硬さや高さを自分の体形や好みに合わせて選んだり調整したりしてみましょう。

<家事の際の腰痛予防のポイント>

・掃除機を使うときは、前かがみにならないよう延長管を付ける

・洗濯物を干すときは、物干し竿を低くし、洗濯物は台の上に乗せて干す

・アイロンがけは脚の付いたアイロン台を使う

・低い位置の植物の水やりやガラス拭きは、膝を曲げて

・朝起き上がる前には、布団やベッドで軽くストレッチ

・布団を持ち上げるとき、下ろすときには、膝を曲げる

・洗顔や炊事のときは、片足を台に乗せる

・靴下を履くときは片足立ちはやめ、椅子に座る

子育て時の注意点

「子育て中」の腰への負担は想像以上です。回数も多く時間も長時間に及ぶおんぶや抱っこはとても体に負担が掛かります。抱く位置を調整したり、小まめに座るようにしたり、長時間同じ姿勢が続かないようにします。体の調子にもよりますが、散歩や買い物時の外出を利用して、小まめに体を動かし筋肉をほぐす機会をつくることも一つの方法です。入浴後、就寝・起床前の簡単なストレッチも効果があります。

なお、妊娠中は特に腰に負担が掛かりやすい状況です。妊娠すると子宮が膨らみ、体の重心が前方へ移動します。その分、上体がバランスを取ろうとするため、腰椎が前方に出てきて腰への負担が増してしまいます。妊婦さんは特に適切な姿勢と運動、妊娠中のストレッチを心掛けるとよいでしょう。

肥満も腰に負担が掛かる要因の一つです。子育て中は妊娠中に増加した体重が戻っていないこともあるでしょう。運動不足により筋力が低下し、代謝が落ちて太りやすくなっていることもありますので、日々の生活の中で意識して体を動かしたり、食生活を見直したりして、できるだけ適正体重になるようにしていきましょう。

介護時の注意点

介護を仕事にしていたり、家庭介護を行っている場合にも、腰に負担がかかりやすく腰痛が起きやすい状況があります。例えば、ベッドから車椅子への移動の際などは、介護作業中に正しい姿勢を保つことが重要です。背中をまっすぐにし、膝をしっかりと曲げて体を支えましょう。

腰痛防止のために有効なのは、腰回りや脚の筋力を強化するために定期的に体力トレーニングを行うことです。筋力が維持強化されることで介護作業も楽になります。例えばスクワット。ポイントはお尻を後ろに引いて上体をやや前傾し、膝が前に出ないフォームで行うこと。膝を痛めないように安全にスクワットを行うことができます。膝への負担が少なく安全かつ効果的に足腰を鍛えることができる「椅子スクワット」もお勧めです。

なお、ヘルパーベルトやリフトなどの介護の福祉用具を適切に利用することで、体への負担を軽減できます。正しい使い方を学ぶことが重要ですので、下記サイトなどを参考に活用してみましょう。

厚生労働省「腰痛予防対策」

厚生労働省労働基準局・中央労働災害防止協会「腰痛を防ぐ職場の事例集」(令和5年3月)

4.まとめ

腰は一度痛めてしまうとQOL(生活の質)が、がくっと下がり、日々の生活がつらくなってしまいます。腰痛防止のため、また軽減のため、日々の生活習慣の中で心掛けていきましょう。また、必要に応じて医療機関を受診して、医師による検査と診断を受けましょう。

<編集部より>

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※当記事は、2024年1月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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