気になる症状と病気

子どもの発熱の原因は?正しい測り方と発熱・解熱の経過について【医師監修】

公開日:2023.09.14

小さな子ども(就学前の乳幼児)の両親は、子どもの急な発熱に慌てることも多いでしょう。ですが日々の平熱や、発熱の原因を理解しておくことで、慌てず対応ができるようになるかもしれません。今回は子どもが発熱と呼べるのは何度からか、発熱に気付くための注意点、熱の測り方の基本、発熱の原因で考えられる病気などについて詳しく見ていきましょう。(以下、医師監修による記事です)

1.  子どもの平熱と発熱

大人と同様、平熱は子どもによって異なります。日ごろから子どもの平熱を把握しておいて、発熱したときに慌てず対処するようにしましょう。

1.1子どもの平熱を知っておく

一般にいわれている子どもの発熱時の体温は、あくまでも目安です。季節ごとに子どもの熱を測り平熱を知っておくことで、対応が必要な発熱か判断しましょう。朝起きたら、まず子どもの身体をさわってみて、熱いかどうか肌でチェックします。熱く感じられたときには体温計で測ってみるとよいでしょう。

1.2発熱は何度から?

子どもの発熱は、一般的には平熱より1度高い時といわれています。39度以上の時は高熱、平熱との差が1度以内の時は微熱と考えます。

0~1歳の乳幼児は体温調節機能が未熟なために、気温や室温、厚着をしている、水分不足などによる影響を受けやすく、体温が簡単に上昇するので、熱が変動しやすいことを知っておくとよいでしょう。ですが、3ヶ月未満児で38度以上の発熱がある場合や、熱性けいれんの既往がある場合などは、かかりつけ医への受診が必要です。

2.  子どもが発熱したら

ここでは、子どもが発熱したらどう対応するのが望ましいかをみていきましょう。

2.1発熱に気付くには

子どもは大人のように症状を訴えることができないので、「保護者から離れず、機嫌が悪い(ぐずる)」「(咳などで)睡眠中に泣いて目が覚める」「食欲がなく水分がとれない」「おしっこの回数が少ない」といった、いつもと違う様子のサインを見逃さないようにしましょう。

2.2熱の測り方

体温計で、わきの下で測るのが一般的です。動いてしまいがちな乳幼児は、目安として耳で測る方式の体温計で測る方法もあります。

また一時的な発熱かどうか、時間をおいて測ることも大事です。体温には日内リズムがあり、夕方の体温は朝の体温より0.5度高めといわれています。

2.3発熱と解熱で注意すべきこと

風邪などをひいたとき、発熱するのは体内に入ってきたウイルスを退治するためです。そのため、発熱したからといって、むやみに解熱剤を使用しないことが望ましいと考えられています。

水分補給(経口補水液など)に加え、3ヶ月児以降であればクーリング(冷やすこと)が可能なため氷枕や保冷剤を額や背中などにあてたり、熱があるときは薄着にし、汗をかいたらよく身体をふいて、着替えをさせたりするなどして、自然な解熱をめざすことが望ましいです。

解熱剤を使用する際は、アセトアミノフェンの場合、生後5~6ヶ月頃から使用可能となります。乳幼児は嘔吐しやすいことから坐薬がすすめられています。

2.4危険な発熱はかかりつけ医に相談を

38度という目安にこだわらず、「顔色が悪く苦しそうにしている」「呼吸が速い」「意識がはっきりしない」「嘔吐や下痢を繰り返す」「不機嫌でぐったりしている」「けいれんがある」などの症状がみられた場合は、かかりつけ医に相談しましょう。

3.発熱の原因として考えられる病気はなにか

子どもの急な発熱の原因にはどういったものがあるのでしょうか。ここでは原因となる病気についてみていきましょう。

3.1風邪

子どもの発熱でもっとも一般的なものです。風邪とは専門的には「かぜ症候群」とされ、カタル性(炎症により粘膜から粘液が出る)の急性上気道炎の総称とされています。かぜ症候群のほとんどがウイルスによるもので、1週間ほどで自然に治るものが多いとされています。ですが、初期症状が風邪に似ていても別の病気が隠れている場合があり、経過には注意が必要です。

詳しくは後述する「3.4その他の感染によるもの」で解説しています。

3.2インフルエンザ

突然の高熱(39度くらい)、悪寒で始まり、普通の風邪の症状のほか、腕や足の痛みなどの症状もあらわれます。また、胃腸症状(吐き気、嘔吐、下痢など)があらわれることがあります。あらゆる年齢にみられ、冬(12~3月)に多いとされています。

熱があるときは、1日4回(朝・昼・夕方・夜または深夜)熱を測り、前回の測定に比べて急に上がってきた、夕方から夜になると高熱が出るなど、熱の上がり方にも注意しましょう。また熱が高いときは水分補給に注意します。けいれん、呼吸が苦しそう、何度も吐く、意識がはっきりしないなど普段と違う様子がみられたら、かかりつけ医に相談しましょう。

3.3ウイルス性胃腸炎

発熱を伴うウイルス性(感染性)胃腸炎の原因として、アデノウイルス、ロタウイルスなどが考えられます。流行しやすい時期があり、さらに保育施設などで乳幼児に広がりやすいため、注意が必要です。

ウイルス性胃腸炎について詳細は、「幼児に多い急性胃腸炎とは」をご覧ください。

3.4その他の感染によるもの

初期症状が風邪に似ていても、症状が進行し重くなる病気があります。

3.4.1気管支炎

ウイルスや細菌が喉から肺まで続く空気の通り道、気管支に感染して起きます。初期には発熱がみられますが、痰のからんだ咳や、苦しそうな呼吸が特徴です。乳幼児期~小児期全般にみられる病気で、冬に多いですが、1年中かかる可能性があります。呼吸が苦しそう、激しく咳き込むなどの症状がみられたら、かかりつけ医に相談しましょう。

3.4.2おたふく風邪

専門的には流行性耳下腺炎と呼ばれます。ウイルスによる感染症で、耳から頬の下にある耳下腺という組織が腫れて痛みが出ます。両側の耳の下が腫れることが多く「おたふく」と呼ばれますが、片側のみ腫れることもあります。小児期全般にみられ、1年中かかる可能性があります。

症状が出るまでに2~3週間の潜伏期間があり、発症から1~2週間で治まります。発熱を伴わない場合もありますが、髄膜炎や脳炎、難聴といった合併症を起こす場合もあるため、予防接種2回(任意接種)がすすめられています。

3.4.3はしか(麻しん)

麻しんウイルスにより発疹の出る病気で、突然38度台の高熱が出ることがあります。1歳前後でかかりやすいといわれています。頬の内側に白色の斑点が出て、後に赤い発疹が全身にあらわれます。感染力が非常に強く、肺炎や脳炎、中耳炎といった合併症を起こす場合もあります。

1歳になってMRワクチン(麻疹風疹混合ワクチン)未接種の場合、発熱したらまずは電話でかかりつけ医に連絡し、未接種であることを伝え、勝手に待合室に入らず指示をもらうようにしましょう。

なお、「3日はしか」とは、風しんを指します。混同しないようにしましょう。

3.4.4水ぼうそう(水痘)

水痘帯状疱疹ウイルスによる感染力の強い病気で、保育施設や幼稚園などで流行することがあります。10歳以下の子どもで1年中かかる可能性があります。赤い小さな発疹が水ぶくれ(水疱)になり、その間高熱もみられます。自然に治りますが、跡が残る場合もあります。3歳までにワクチンを2回接種(定期接種)することで、最近ではほとんど流行がみられなくなりました。

3.4.5プール熱

咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)ともいいます。幼児から児童がかかりやすく、感染力の強いアデノウイルスにかかることにより発症するため、特に夏に多くみられます。38~39度の高熱が4~5日みられ、喉の痛みや結膜炎があらわれます。

また感染力が強いため、手洗いやうがい、身の回りの消毒を行い、家庭内感染に注意しましょう。保育園児・幼稚園児は解熱後2日間登園禁止です。

3.5危険な病気

発熱した際、脳炎や髄膜炎を引き起こしている可能性もあります。脳炎は脳に、髄膜炎は脳と脊髄を覆っている髄膜に、細菌やウイルスが感染して炎症を起こします。

風邪をはじめ、はしか、水ぼうそう、おたふく風邪などの合併症として起きる場合もあります。発熱に伴って頭痛、吐き気、嘔吐があり、意識がはっきりしなくなるような時は、緊急でかかりつけ医を受診する必要があります。

肺炎は肺に細菌やウイルスが感染して起こり、発熱のほかに咳や呼吸困難がみられます。インフルエンザウイルスなどが原因となることが多いです。また、はしかや水ぼうそうの合併症としても起きることがあります。呼吸が苦しそう、激しい咳きこみ、ぐったりしているなどの症状があれば、かかりつけ医を受診しましょう。

4. 日常から子どもの様子をみて、慌てず対応を

子どもの個々の平熱や、けいれんの既往などによって、発熱への対応は異なります。日常から子どもの様子を把握しておき、発熱があった際にも慌てず対応しましょう。また発熱時には他にどのような症状があるか、いつからそれらの症状が出たのかを記録しておくと、かかりつけ医を受診する際に役立ちます。


<編集部より>
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«執筆者プロフィール≫

ライター・小南哲司(こみなみてつじ)
医療系出版社勤務を経て2022年よりライターに。医療分野の記事を中心に執筆。
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«監修者プロフィール≫

細部小児科クリニック 院長 細部千晴

1987年藤田医科大学卒業。名古屋市立大学病院、日本医科大学病院などを経て 2008 年独立開業。男の子2人の母親であり、孫も2人。自らの子育て、孫育て経験を活かし、地域の子育て支援やペリネイタルビジット(出産前出産後小児保健指導)をライフワークとして診療に携わっている。
近著『この1冊で安心 はじめての育児辞典』朝日新聞出版、『「どうする?」がわかる赤ちゃんと子どもの病気・ケガ ホームケアBOOK』ナツメ社

参考

※本記事の情報は、2023年7月時点のものです。検査の項目や条件などは、今後変更になる可能性がありますので、予めご了承ください。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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