会社からは毎年受けるようにといわれるストレスチェック。しかし、「自分は問題ないので、受けるのが面倒くさい」「悪い結果が出るのが怖いので、受けるかどうしようか迷っている」といった声も聞かれます。ストレスチェックは、なぜ毎年受けるように勧められるのでしょうか。ストレスチェックは、働く人のことを考えてつくられた制度です。この制度ができた背景とストレスチェックを受けるメリットについて確認していきましょう。
目次
1.ストレスが心身に及ぼす影響
現代人にとってストレスは避けられないものです。「適度なストレス」は交感神経系を目覚めさせ、やる気を高めてくれますが、「過度なストレス」は心身の不調につながり、やがては大きな病気を引き起こしてしまう恐れもあります。まず、ストレスが引き起こす主な病気・症状について知っておきましょう。
うつ病
長く気分が落ち込む状態が続く病気です。遺伝性の素因が原因の「内因性うつ病」と、過度のストレスが原因で起こる「外因性うつ病」があります。
【主な症状】
落ち込む、集中できない、食欲低下、ゆううつな気分、倦怠感、無気力、仕事の効率が下がる、頭痛、寝付きが悪い 等
適応障害
環境にうまく適応できず、さまざまな症状が出て生活に支障を来たす病気です。心身のコントロールがうまくできなくなり、問題行動を起こしたりします。ストレスの原因がなくなれば、症状も改善します。
【主な症状】
不安、抑うつ、情緒障害、イライラ、引きこもり、疲労感や頭痛、不眠などの身体症状 等
過換気症候群
過呼吸症候群とも呼ばれ、急に呼吸困難や動悸などの発作を起こします。胸の圧迫感や手や口のしびれを感じることもあります。何かのストレスがきっかけで呼吸が浅く速くなり、体内から二酸化炭素が過剰に排泄されることで、さまざまな症状が出ます。
【主な症状】
呼吸困難、胸の圧迫感、めまい、動悸、頻脈、手や口のまわりのしびれ 等
自律神経失調症
自律神経とは、ヒトの意思とは関係なく自律的に動く神経で、呼吸や体温、血圧、心拍、消化、代謝、排尿、排便など、生きていく上で欠かせない生命活動を維持するために働いています。活動するときに働く交感神経と休息やリラックスするときに働く副交感神経があります。ストレスによって交感神経の緊張が高まった状態が長く続き、副交感神経とのバランスが崩れてさまざまな不快症状が出るのが自律神経失調症です。
【主な症状】
動悸、息切れ、不眠、頭痛、発汗の異常、胸痛、胸の圧迫感、肩凝り、腰痛、めまい、腹痛、疲労感、便秘、下痢 等
過敏性腸症候群
腸に炎症などがないのに、急に腹痛や下痢が起きたり、下痢と便秘を繰り返す病気です。ストレスで、腸をコントロールする自律神経の働きに問題が起き、緊張する場面をきっかけに急に腸が動きだすことで起こります。
【主な症状】
大事な場面で急にトイレにいきたくなり、我慢できない、下痢と便秘を繰り返す、急に腹痛を起こす、食後にすぐに下痢をする 等
パニック障害
突然不安になり、動悸、胸の圧迫感などを感じ、パニック状態になる病気です。一度発作が起こると、また起こるのではと不安になり、生活や仕事に支障が出ることがあります。
【主な症状】
急にパニック状態になる、呼吸困難感、吐き気、強い不安感、めまい、動悸、手足のしびれ 等
2.ストレスチェックとは?
次に、ストレスチェックとはどういうものなのか、知っておきましょう。
ストレスチェックについて
ストレスチェックとは、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行い、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気付きを促すことを目的にしたものです。検査を受けた人は、自分のメンタルヘルスの不調を知ることで、リスクを低減させることができます。企業側は、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげることによって、労働者がメンタルヘルス不調になることを防止することができます。
ストレスチェック実施は企業の義務
ストレスチェックは、職場におけるメンタルヘルス対策、過重労働対策として実施されるものです。2014年6月に「労働安全衛生法」の一部が改正されて、労働者が50人以上いる事業所では、2015年12月から、毎年1回、この検査をすべての労働者*に対して実施することが義務付けられています。
*契約期間が1年未満の労働者や、労働時間が通常の労働者の所定労働時間の4分の3未満の短時間労働者は義務の対象外
社員・従業員の実施は任意
企業には「ストレスチェック」の実施が義務付けられていますが、社員・従業員に受ける義務はありません。しかし、心も体も良好な状態を保ち続けるためには、定期的に自分の状態に意識を向けることが必要です。そのためにもストレスチェックを活用しましょう。
ストレスチェックの内容
ストレスチェックは、通常、国が奨励する57項目の質問票を使って行われます。ITシステムを利用して、オンラインで行うこともできます。
回答締め切り後、実施者による評価・判定が行われます。この結果については、本人のみに閲覧できる方法で通知されます。また、本人の同意なしには、企業が検査結果を取得することはできません。その後、「高ストレス」と判定された本人の希望があれば、医師の面接指導が行われます。
3.ストレスチェックを受けるメリット
ストレスチェックを受けることは、社員・従業員、企業のそれぞれにとってメリットがあります。
社員・従業員のメリット
●数値によって、自分の状態を客観的に知る
ストレスは知らず知らずのうちにたまってしまうものです。また、忙しい日常生活を送っていると、自分自身ではストレス過多になっていることに気付きにくいものです。ストレスチェックでは、ストレスの状態が数値化されるので、客観的な気付きにつながります。
●ストレス解消のセルフケアができる
ストレス解消のセルフケアが可能になります。自分のストレス度合いを知り、必要なケアをするためにも、ストレスチェックを受けましょう。
●的確なアドバイス、職場のサポートが得られる
ストレス過多と分かっていても、周りの反応が不安で言い出せず我慢してしまったり、受診に抵抗を感じたりしている社員・従業員も、医師の面談や指導を受けることで、的確なアドバイスが受けられます。どんなことがストレスの原因になっているかも把握でき、改善につなげることができます。自分の状態を知ってもらうことで、職場のサポートも受けられます。
企業のメリット
●社員・従業員の健康を守ることで、健全な経営ができる
企業にとっては、社員・従業員の健康を守ることは、健全な経営、貴重な人材を守ることにつながります。働く人のメンタルヘルスを守ることは、退職者や休職者の削減にもつながります。
●ストレスの原因を知ることで職場環境の改善ができ、働きやすい職場づくりができる
ストレスの原因となっている職場環境を改善することで、皆が働きやすい職場づくりができます。働きやすい職場は、仕事の生産性向上にもつながります。
4.メンタルヘルスの不調を感じたら相談しよう
メンタルヘルスの不調を感じたら、一人で抱え込まずに、まずは相談しましょう。職場にも相談窓口があり、産業医への相談もできます。外部の相談窓口での相談もできます。
厚生労働省メンタルヘルス・ポータルサイト 相談窓口
厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、働く方やそのご家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者の方などに向けて、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供しています。働きにくさやつらさを感じたら相談しましょう。
セルフチェック簡易版
「こころの耳」では、「3分でできる職場のストレスセルフチェック(簡易版)」、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」もあります。職場のストレスレベルをチェックできる自己認識ツールですので、こちらも使ってみるといいでしょう。
原稿・社会保険研究所Copyright
<編集部より>
ティーペックは、ストレスチェックサービスのほか、メンタルヘルスの不調を感じたときに、臨床心理士や公認心理師などの心理カウンセラーに相談できる『メンタルヘルス カウンセリングサービス』をご提供しています。お勤めの企業・健康保険組合や生命保険の付帯サービスなどで、サービスをご利用できる場合があります。
ティーペックの『メンタルヘルス カウンセリングサービス』について、詳しくはこちらをご覧ください。
参考
- 厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
- 厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf - 厚生労働省「数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150803-1.pdf
※当記事は2023年11月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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