食後の口は「酸性」になっており、そのままだと歯のエナメル質が溶けやすく虫歯の原因に。そこでおすすめなのが、食事の〆に「チーズ」を食べること。虫歯の予防に役立ちます。(以下、医師監修による記事です)
目次
1.口内の酸性状態が続くと虫歯になる
私たちの口の中はふだん、pH値が6.7程度の中性に保たれています。
このpHが5.5以下の酸性になると、歯の表面のエナメル質に溶け出しやすくなるといいます。
実は食事をする度に、口の中のpHは酸性に傾いています。しかし唾液の中には緩衝作用があるので、口内が酸性になっても食後に唾液がゆっくり時間をかけて中性に戻してくれるのです。
ところが酸性の強いものをしょっちゅう食べたり、ダラダラと長時間飲み食いし続けると、なかなかpHが元に戻りません。そのまま口の中の酸性状態を放置すると、やがてエナメル質に穴があき、虫歯になってしまいます。
2.ひとかけらのチーズがエナメル質を修復
炭酸水や酢、果物類(※)など、日ごろ口にする食品には、酸性が強いものがたくさんあります。
そんな中で、健康に良いうえに口内を中性に保ち、かつ溶けた歯を修復する作用を持っているお助け食品が!
それがチーズなのです。
チーズには、カルシウムなどのミネラルが水に溶けやすい形で含まれています。
チーズのミネラル分が溶けだすと、口内の酸性が弱まることに。またチーズに含まれる「リン酸カルシウム」がエナメル質の溶け出しを防ぎ、回復させる再石灰化を促進。同時に「カゼイン」というたんぱく質が、エナメル質に吸着して歯の表面を保護します。
フランスなどでは食後のデザートとしてナチュラルチーズをつまむ風習がありますが、虫歯予防の点からも理にかなったことだったのですね。
チーズには大別して「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」があります。おすすめは、ナチュラルチーズです。
特にハードタイプからセミハードタイプのものは噛むことで唾液が分泌され、歯の再石灰化がより促進します。
ナチュラルチーズには劣りますが、プロセスチーズにも歯を守る効果は期待できます。ただしクエン酸など酸性の添加物が入っていないものを選ぶと良いです。
3.ナチュラルチーズをよく噛んで食べて
ナチュラルチーズの中でも、代表的なハードタイプやセミハードタイプをいくつかご紹介しましょう。
歯を丈夫にするためには、噛んで唾液を出すことが重要です。できれば加熱など調理はせず、そのままスライスしたり細かく切ったりして、食事の〆として20グラムほどをよく噛んで食べてください。
●パルミジャーノレッジャーノ
イタリアを代表するハードタイプのチーズ。長期間の熟成で水分が減るため、非常に硬いのが特徴。スライスして食べるとシャリシャリした歯ごたえと濃厚な風味が味わえます。
●ゴーダチーズ
オランダ発祥のセミハードタイプのチーズ。円形の型に入れて作られます。クセがなく、マイルドなコクと豊かな旨味があり、万人受けする味。食べる30分ほど前にラップで包んで常温に戻すのがおすすめです。
●チェダーチーズ
イギリスのセミハードタイプのチーズで、薄い黄色からオレンジ色をしています。くせが少なくコクがあり、そのままでも食べやすい味わい。表面や切り口は乾燥しているので、軽くそぎ落とすとフレッシュな風味に。
●ミモレット
フランス生まれのハードタイプのチーズ。鮮やかなオレンジ色は植物色素によるものです。熟成が進むとカラスミに例えられるほど濃厚な味わいになり、おつまみにぴったり。細かく切って口の中で溶かして食べましょう。
チーズをおいしく味わいながら、歯の健康を守っていきましょう。
原稿:株式会社セントラルメディエンス コミュニケーションズCopyright
≪監修者プロフィール≫
酒井暁美 医師
アミーズ歯科クリニック理事長、歯科医師。「健康と美は相互関係にあるもの」とのポリシーで、口腔を総合的に診療・治療する。チーズプロフェッショナルの資格を持ち、チーズに造詣が深い。
参考
- 小延鑑一「臨床検査12巻6号『入門講座 生化学 pHとは』」医学書院、1968年
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542916411
※当記事は、2023年8月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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