ストレス社会といわれる現代において、仕事でのメンタルヘルス不調に関する問題は深刻化しています。厚生労働省は、「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」にて、令和2年11月1日から令和3年10月31日までの期間において、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所の割合は10.1%であることを発表しました。(※1)この調査結果から、10人に1人が休業・退職を余儀なくされるほどの深刻なメンタルヘルス不調を抱えていることが分かります。この記事では、仕事でのメンタルヘルス不調のサインやメンタルヘルス不調になる原因、仕事でメンタルヘルス不調を感じたらすべきこと5つを紹介します。メンタルヘルス不調をそのままにすると、うつ病などのこころの病に発展することもあります。本記事を読み、こころの不調への適切な対処法を学びましょう。
目次
1.メンタルヘルス不調とは?
メンタルヘルス不調とは、強いストレスや悩み・不安を感じ、日常生活に支障をきたす恐れのある精神状態を指します。
医師からの診断が下るうつ病などのこころの病にかかった場合のみでなく、強いストレスによって日常生活を送ることが困難になった場合もメンタルヘルス不調であるといえます。
以下は、メンタルヘルス不調に陥った場合にあらわれる症状の具体例です。
- 動悸がする
- 不安感が強く夜眠れない
- 頭がぼーっとして仕事に集中できない
- 身体が重く、身だしなみを整えられない
こころの負荷が重くなりすぎた結果、上記のように日常生活がままならなくなるケースは多くあります。
2.メンタルヘルス不調のサイン
こころの不調に適切に対処するためには、自身の身体にあらわれたサインを見逃さないことが重要です。
メンタルヘルス不調のサインは、「こころのサイン」・「身体のサイン」・「行動のサイン」の3つに大きく分類できます。それぞれのサインの具体例は以下の通りです。
【こころのサイン】
- 悲しみ、憂うつ感
- 不安
- イライラ
- 緊張
- 無気力、やる気が出ない
【身体のサイン】
- 食欲の変化
- 睡眠の質が下がる
- 動悸がする
- 手足の発汗
- 理由がないのに涙がでる
【行動のサイン】
- 人と会うのが億劫に感じる
- 飲酒・喫煙の量が増える
- 身なりに気を遣わなくなる
人によってこころ・身体・行動に出るメンタルヘルス不調のサインは異なりますが、上記のような症状が生じている場合ストレスが原因の可能性があります。放っておくと、うつ病などの精神的な病気に発展する可能性もあるため、サインを見逃さないようにしましょう。
また、「新しい部署に異動になった」・「新生活が始まった」など、生活に大きな変化があった場合、ストレスが増加するケースが多いため特に注意が必要です。
3.仕事でメンタルヘルス不調になる主な原因
令和3年に行われた厚生労働省の「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」(※2)では、「仕事・職業生活での強い不安やストレスを感じる」労働者の割合は53.3%と過半数を超える結果でした。
そして、同調査において「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じる」とした労働者のストレス原因の上位5項目は以下の通りです。
- 「仕事の量」(43.2%)
- 「仕事の失敗、責任の発生等」(33.7%)
- 「仕事の質」(33.6%)
- 「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」(25.7%)
- 「会社の将来性」(20.8%)
上記の調査結果をみると、「仕事の量」によるストレスを感じる人は最も多く、43.2%もの人がストレスに感じていることが分かります。また、ストレスの原因の第2位は「仕事の失敗・責任の発生等」、第3位は「仕事の質」となっており、業務自体にストレスを抱える人の割合がかなり多いことが分かります。
4.仕事でメンタルヘルス不調に陥りやすい人とは?
結論から申し上げますと、自分なりのストレス発散方法(ストレスコーピング)を持っていない人は、仕事でメンタルヘルス不調に陥りやすくなります。
ストレスをうまく処理できないと、心理的・身体的な負荷は徐々に高まります。不安や憂うつなどのマイナス感情を抱えやすくなったり、不眠などのストレスによる身体症状が発生しやすくなったりするのです。
具体的には、以下のような人はストレスを発散できる場面が少ないため特にストレスを溜めこみやすく、メンタルヘルス不調に陥る可能性も高いと考えられます。
- 趣味がない人
- 相談できる知り合いがいない人
- 業務量が多く毎日残業をしている人
精神の安定を保つためには、自分なりのストレス対処法を見つけることが重要です。
5.仕事でメンタルヘルス不調を感じたらすべきこと5つ
「仕事で大きなストレスを感じるけれど、どのように対処すればよいか分からない。」と悩む方も多くいるでしょう。うつ病に発展するなど問題の深刻化を防ぐためにも、精神的な負担を感じる際は早期の適切な対応が求められます。
ここでは、以下5つの対処法を順に紹介します。
- 趣味を楽しむ
- 相談相手を見つける
- 仕事への取り組み方を見直す
- 身体を動かす
- 専門家に相談する
5.1趣味を楽しむ
仕事でのストレスを発散するために、趣味を楽しむことは重要です。
自身が楽しいと感じる趣味に没頭する時間を作れば、仕事とプライベートのメリハリが生まれストレスを溜め込みにくくなります。
仕事量が多く平日に自分の時間を作ることが難しい人は、土日の間だけでも趣味に打ち込む時間を作ってみましょう。読書・料理・旅行など、どのような内容でもよいので仕事を忘れて楽しめる活動に取り組んでみてください。
5.2相談相手を見つける
誰かに悩みを打ち明ければ、気持ちが楽になりストレスを解消しやすくなります。
特に、仕事でのメンタルヘルス不調を抱える場合、職場で相談できる人を見つけることをおすすめします。同じ職場で働く人であれば仕事内容や職場の雰囲気を知っているため、相談もスムーズに進むでしょう。
また、厚生労働省の「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)」(※2)によると、相談できる人がいるとする労働者の割合は、92.1%でした。同調査で、「相談できる人がいる」とした労働者のうち、労働者が挙げた相談相手は、家族・友人が80.1%、上司・同僚が75.2%です。
「職場の人には仕事の悩みを相談しにくい。」と感じる人は、家族や友人など身近な人に相談してみるのもよいでしょう。
5.3仕事への取り組み方を見直す
仕事でメンタルヘルス不調に陥った場合、仕事への取り組み方の見直しも重要です。
仕事でストレスを抱える大きな原因として、業務量の過多・業務内容の煩雑さなどが挙げられます。仕事内容にストレスを抱える人の割合はかなり高いのです。
そのため、仕事で大きなストレスを感じる場合、取り組み方を見直し負担を減らすことが重要だと考えられます。
具体的には、以下のような対策を行いましょう。
- 業務効率化できる部分を探し、残業時間を減らす
- 分からない部分は、すぐに質問するようにする
- 仕事量が多すぎる場合、上司に相談してみる
仕事量が多すぎる場合は、チェックフローを見直してみるなどして効率化できる部分を探してみましょう。場合によっては、上司に業務量の見直しを求めるなど、まわりに協力を仰ぐことも大切です。
5.4身体を動かす
適度な運動を心がけることで、ストレスが軽減します。
特におすすめの運動は、ウォーキングやサイクリングなどの軽い有酸素運動です。軽い有酸素運動を日中に行えば、太陽光も浴びられるため精神を安定させる働きのあるセロトニンなどの物質も放出されます。
こころの安定を保つためにも、1日20分程度の軽い有酸素運動を習慣にしましょう。
5.5専門家に相談する
特にメンタルヘルス不調が深刻な場合は、専門家への相談をおすすめします。
本人はこころの不調を重く捉えていない場合でも、実はうつ病にかかってしまっていたといったケースもよくあります。病気の初期症状の場合もあるため、「夜寝られなくなる」「動悸がする」などのストレス反応が生じている人は特に注意が必要です。
また、仕事で過度なストレスを感じる人の中には、ADHDや自閉症などの発達障害が絡んでいるケースもあります。
仕事で大きなストレスを感じる場合や、メンタルヘルス不調のサインが出た場合、メンタルクリニックを受診し専門家に相談しましょう。
<編集部より>
メンタルヘルス不調の症状や対処法について、こちらもご覧ください。
「働く大人のメンタルヘルス不調の原因と症状について【専門家監修】」
6.仕事でメンタルヘルス不調が生じた場合は早期相談が重要
本記事では、仕事でのメンタルヘルス不調のサインや原因、仕事でメンタルヘルス不調を感じたらすべきこと5つを紹介しました。
仕事でメンタルヘルス不調が生じた場合、早い段階で誰かに助けを求めることが重要です。仕事での悩みがある方は家族や友人、職場の同僚などまずは身近な人に相談してみましょう。
また、メンタルヘルス不調の深刻化を防ぐためにも、運動習慣をつける、趣味の時間を設けるなどして、こころのセルフケアにも取り組んでください。
<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
Webライター・藤田サキ
大学では心理学を専攻。教育やキャリアなど幅広い分野の心理学を学ぶ。
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参考
- (※1)【出典】厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 【事業所調査】」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
- (※2)【出典】厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況 【個人調査】」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r03-46-50_kekka-gaiyo02.pdf
※当記事は、2023年7月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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