心身の健康を高める

「健康診断」に関連する間違えやすい用語を解説!

公開日:2023.08.14

健康診断や検診には多くの種類がありますが、それぞれの名前を聞くことはあっても、種類や検査内容の違いについてはあまり知られていないかもしれません。実は年齢や目的によって受けられる健康診断、検診は異なり、間違えやすいものもあります。今回は自分の健康を意識する段階で知っておきたい健康診断や検診の種類、検査内容の違い、年齢を重ねると大きく関係してくる特定健康診査や保健指導について、それぞれ解説していきます。

1.  健康診断(健診)と検診の違い

よく耳にする「けんしん」という言葉には、「健診」と「検診」の2種類があります。健康診断の「健診」は身体の健康状態を総合的に知るためのもので、病気を未然に防ぐこと、早期発見できることが特徴です。
一方で「検診」は特定の病気を見つけるためのもので、健診とは異なります。がん検診のように病気の名前がつくことでその違いを区別することができます。

2.  実はたくさんの種類がある健康診断

健康診断にはさまざまな種類がありますが、大きくは「法定健診」と「任意健診」の2種類に分けられます。「法定健診」は乳幼児や妊婦、市民、従業員など、法律によって内容が定められており、年に1回定期的に受ける定期健康診断や、生活習慣病予防のために40歳以上で受ける特定健康診査(メタボ健診)などが含まれます。

「任意健診」は人間ドックなどのように法定健診よりも項目が多く、任意でより細かく検査を選択できるものです。

2.1 さまざまな健康診断の種類と対象、検査内容

健康診断の種類を法定健診・任意健診・検診に分けて、それぞれの対象者と検査内容をご紹介します。

2.1.1 法定健診

法定健診は以下のように年齢や法律ごとに健診の内容が分けられています。

健診名/法律対象検査項目
妊婦健診、1歳6ヶ月健診、3歳児健診/ 母子保健法妊娠中~出生後1年・小学校就学前、1歳6ヶ月児、3歳児妊婦健診:体重、腹囲、子宮底長、血圧、血液・尿検査や超音波検査など

乳幼児健診:身体発育状況、栄養状態、脊柱・胸郭の疾病や異常の有無、四肢運動障害の有無、精神発達の状況、言語障害の有無、予防接種の実施状況、育児上問題となる事項など
児童生徒等の健康診断/学校保健安全法児童生徒
在学中の幼児、児童、生徒、学生
身長体重、栄養状態、脊柱・胸郭・四肢・骨・関節の疾病や異常の有無、視力聴力、皮膚・歯・口腔の疾病や異常の有無、結核、心臓の疾病や異常の有無、尿検査など
定期健康診断/労働安全衛生法~39歳
うち労働者
既往歴・業務歴、自覚症状や他覚症状の有無、身長体重、腹囲、視力聴力、胸部X線検査、血圧、血液検査、尿検査、心電図検査など
定期健康診断/医療保険各法~39歳
被保険者・被扶養者
既往歴・業務歴、自覚症状や他覚症状の有無、身長体重、腹囲、視力聴力、胸部X線検査、血圧、血液検査、尿検査、心電図検査など
特定健康診査/ 労働安全衛生法・高齢者医療確保法40~74歳  定期健診の項目から視力聴力、胸部X線検査と喀痰検査がなくなり、腹囲、動脈硬化に関連するLDLコレステロールなどの血液検査項目が必須に
後期高齢者の健康診査/高齢者医療確保法75歳~身体計測、血圧測定、血液検査、尿検査の基本項目
追加で心電図、眼底、胸部X線など

労働安全衛生法に基づく健康診断には、定期健康診断の他に雇入時の健康診断、特定業務従事者(多量の高熱・低温物体を取り扱う業務、異常気圧下における業務、深夜業を含む業務など)の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、給食従業員の検便などがあります。

それぞれ対象者、実施時期(※1)は以下のようになっています。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
雇入時の健康診断常時使用する労働者(※2)雇入れの際
定期健康診断常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者左記業務への配置換えの際、6ヶ月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断海外に6ヶ月以上派遣する労働者海外に6ヶ月以上派遣する際、帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者雇入れの際、配置換えの際
【出典】※1
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

(※2)常時使用する労働者とは

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6ヶ月以上使用されることが予定され、又は更新により6ヶ月以上使用されている者)
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

上記(1)(2)のどちらも満たす場合が常時労働者となります。しかし、(2)に該当しない場合であっても、(1)に該当し、通常の労働者の1週間の所定労働時間数の概ね2分の1以上であれば健康診断を実施するのが望ましいとされています。また、派遣社員の場合には、派遣元の企業に実施義務があります。

【出典】※2
厚生労働省 東京労働局ホームページ「Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?」

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/roudouanzeneisei/q16.html

2.1.2 任意健診(検診)

「任意健診(検診)」とは、人間ドック、総合健診、脳ドック、レディースドック、メンズドックなどのように、法定健診以外の検査項目が豊富で、自分で検査項目を選択できたりする健診です。日帰りの検査だけでなく、スパやマッサージ、リラクゼーション付きで宿泊できるプランを用意している施設もあります。

一般的な健康診断の項目に追加して全身を徹底的に検査することができますが、なかには有効性が確立されていないものも含まれる場合があるため、注意が必要です。

2.1.3 検診

国のがん対策で検診対象となっているのは、胃がん検診、子宮頸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診の5種類のがん検診です。また、他にも前立腺がん検診、消化器がん検診、肝炎ウイルス検診などがあります。

それぞれの検査方法は以下の通りです。

検診検査項目
胃がん検診胃部X線検査(バリウム検査)、または胃内視鏡検査(胃カメラ)
子宮頸がん検診子宮頸部の細胞診→精密検査で細胞診・組織診、HPV検査
肺がん検診胸部X線検査と喀痰細胞診→精密検査で胸部CT、気管支鏡検査
乳がん検診乳房X線検査(マンモグラフィ)→精密検査で超音波検査、細胞診・組織診
大腸がん検診便潜血検査→精密検査で大腸内視鏡検査

2.2 各健康診断の費用、受けられる場所

法定健診は基本的には企業や自治体などが費用負担(一部オプションや追加検査したものは自己負担になる場合も)してくれます。法定健診のなかでも、妊婦健診・乳幼児健診は自費診療ですが、居住する市区町村や自治体によっては公費負担の対象となり、助成制度があります。

ただし、診察や妊婦・乳幼児の状況によっては公費負担との差額の支払いが必要です。任意健診は基本的には自己負担で高額になることもあるため、健康保険の補助や法定健診と組み合わせて行うこともあります。

健康診断は、市区町村や自治体から委託を受けた病院や診療所などの医療機関で行われます。また、企業や学校によっては、巡回健診などのように企業や学校で実施する健康診断もあります。

3.  特定健康診査と特定保健指導

30代、40代と働き盛りの年齢となると、生活習慣の改善が必要な方も出てきます。特に生活習慣病のように、今すぐに何かの病気や症状があるわけではなくても、そのリスクを持つ方は少なくありません。そのために「特定健康診査」というものがあります。

3.1 生活習慣病の予防に特化した特定健康診査

特定健康診査とは、特定業務従事者の健康診断とは異なり、40~74歳を対象とした生活習慣病の予防のための健診です。メタボ健診とも呼ばれています。

生活習慣病とは、偏った食生活や睡眠不足・運動不足・タバコやストレスなどの生活習慣の影響で発症するがんや心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの病気のことをいいます。生活習慣病は日本人の死因の半数以上を占めており、国としても対策に力を入れています。

そのため、特定健康診査では以下のような項目(※3)の検査をしています。

<基本的な健診の項目>
質問票(服薬歴、喫煙歴等)
身体計測(身長、体重、BMI、腹囲)
理学的検査(身体診察)
血圧測定
血液検査
脂質検査(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
血糖検査(空腹時血糖またはHbA1c、やむを得ない場合には随時血糖)
肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
検尿(尿糖、尿蛋白)

<詳細な健診の項目>
心電図検査
眼底検査
貧血検査(赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値)
血清クレアチニン検査
※一定の基準の下、医師が必要と認めた場合に実施

また、メタボリックシンドロームの診断基準(※4)は以下の通りです。

腹囲が基準以上(男性85cm、女性90cm)
※内臓脂肪面積の測定ができる場合には、男女ともに内臓脂肪面積が100cm²以上
血圧、血糖、脂質の検査値が規定値以上

【出典】※3、※4
政府広報オンライン(内閣府大臣官房政府広報室)「生活習慣病の予防と早期発見のために がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/1.html#section2

3.2 生活習慣の改善に向けての特定保健指導

特定健診で生活習慣病のリスクが高いと判断された場合、医師や保健師、管理栄養士などの専門家による特定保健指導が開始されます。食生活や運動などの生活の見直しを行うことで、生活習慣病の予防や健康状態の改善を狙います。

特定保健指導は、個別面接またはグループ面接による支援で、対象者に合わせた実践的なアドバイスを行います。約3ヶ月以上の継続的な支援として、面接や電話、メール、FAX、手紙などでやりとりを行い、6ヶ月後に健康状態や生活習慣の評価を確認します。

特定保健指導を通して健康課題を分析し、対象となる集団において優先すべき課題を明確化し、保健事業の展開に役立てていくことなどが目的となっています。

4.  自分が関係する健康診断をしっかり確認しましょう

各健康診断は、元気な毎日を過ごすための重要な指針となります。自分自身の健康診断はもちろんのこと、家族の健康診断に目を配ることも大切です。現在受けるべき健康診断はどういうものがあるのか、またその目的は何なのか、きちんと理解しておくといいでしょう。

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≪執筆者プロフィール≫
ライター・白石弓夏(しらいしゆみか)
看護師兼ライター。15年以上看護師として病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟で勤務中。
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参考

※当記事は2023年6月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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