気になる症状と病気

睡眠障害とストレスの関係とは?不眠の原因と睡眠の質を高めるポイント【医師監修】

公開日:2024.01.10

ストレスは不眠症などの睡眠障害を引き起こす原因の1つです。睡眠障害の原因は複合的で、症状もさまざまです。ストレスと睡眠の関係を理解した上で、必要に応じて医療機関を受診する必要があります。本記事では、不眠などの睡眠障害の原因と睡眠の質を高めるポイントについてまとめました。(以下、医師監修による記事です)

ストレスや緊張と睡眠障害の関係性

不眠症などの睡眠障害は、ストレスが原因になっていることも多いです。身体のさまざまな働きは自律神経によってコントロールされています。自律神経はアクセルの役割の交感神経、ブレーキの役割の副交感神経の2つがお互いにバランスを取って機能していますが、過度なストレスや緊張はこのバランスを崩してしまいます。

本来、夜間や睡眠に入る時間はリラックスした状態で、副交感神経が優位になっているはずです。しかし、ストレスを受けると身体は臨戦態勢になり、交感神経を優位な状態にするので、緊張や興奮が高まって眠れなくなります。健康な状態なら交感神経と副交感神経が上手く切り替わりますが、ストレスによって交感神経の優位な状態が続くことで睡眠障害の原因の1つになっていると考えられます。

ストレスの原因は「人間関係」「仕事」「家族」「子育て」「経済的な問題」などさまざまです。また、大人だけでなく、子どもも学校での人間関係や勉強、進路などでストレスを感じることがあります。満足のいく睡眠を取れないこと自体が、ストレスになるという悪循環に陥る恐れもあるので早めに対処しましょう。

不眠症を始めとする睡眠障害の主な種類と症状

睡眠障害には不眠症以外にもいくつかの種類があります。もし睡眠に関して何かしらの問題を抱えていて、生活や心身に支障をきたしているなら、睡眠障害の可能性があると考えてください。ストレスによって不眠以外の症状が出るケースもあるため、どのような症状が睡眠障害に該当するのかを知っておきましょう。睡眠障害の種類と主な症状について説明していきます。

不眠症

単純に眠れないというだけでなく、睡眠の途中で起きたり、早朝に目が覚めたりするのも不眠症に該当します。また、「寝たのに熟睡感が得られない」というのも不眠症の一種です。不眠症の種類と症状について表にまとめました。

不眠症の種類

入眠困難ベッド(布団)に入ってから眠りにつくまでに時間がかかる状態。
中途覚醒一度眠りについても途中で目が覚めて、その後、なかなか眠れない状態。睡眠環境に問題はないにもかかわらず、翌朝までに何度も目が覚めてしまう。
早朝覚醒予定している起床時間よりも2時間以上早く起きてしまう状態。また、早く起きてからもう一度眠りにつけないことも多い。
熟眠障害睡眠をとっても「熟睡した」という満足感が得られない状態。

厚生労働省の健康情報サイトe-ヘルスネットでは不眠症の診断基準について以下のように説明されています。

「1. 夜間の不眠が続き」「2. 日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、この二つが認められたとき不眠症と診断されます。

【出典】厚生労働省 e-ヘルスネット 「不眠症」

短期的な不眠症が慢性化するケースもあるため、いずれかの症状があり、日中の生活にも影響が出ているときは早めに医療機関で相談しましょう。

過眠症

過眠症とは、しっかりと睡眠をとっているのに、日中に起きていられないほど眠くなる病態のことです。過眠症の原因にはナルコレプシーなどの病気や、薬の副作用などが考えられます。また、なんらかの影響で夜間の睡眠の質が下がり、過眠の症状が出ているケースもあります。

概日リズム睡眠・覚醒障害群

概日リズム睡眠・覚醒障害群は、体内時計の周期が正常に修正されずに起床時間や就寝時間がずれている状態のことです。ヒトの体内時計の周期は約25時間だといわれています。(※1)しかし、1日は24時間なので体内時計のリズムとずれがあります。

通常、生活している中でこの約1時間分のずれが修正されます。しかし不規則な生活などが原因になって上手く修正されないことがあり、こうしたずれの発生によって生じるさまざまな不調の1つが概日リズム睡眠・覚醒障害群です。適切な時間に起きたり眠ったりすることができず、日常生活に支障が出ているなら概日リズム睡眠・覚醒障害群が疑われます。

(※1)厚生労働省 e-ヘルスネット 「睡眠・覚醒リズム障害」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-006.html

睡眠関連呼吸障害群

睡眠関連呼吸障害群とはいびきや無呼吸などが関連し、睡眠時に「呼吸が止まる」「呼吸が浅くなる」などの状態を指します。いびきや無呼吸は睡眠の質を下げるため、日中に眠気を感じやすくなったり、疲労感が残りやすくなったりします。また、睡眠時に呼吸が頻繁に止まることで血液中の酸素が不足し、心筋梗塞などの重大な症状につながるケースもあるため早めの治療が必要です。

ストレス以外にもある睡眠障害の原因

ストレスは睡眠障害の主な原因の1つです。しかし、ストレス以外にも睡眠障害を起こす要因はあるため、原因を突き止めることが重要になります。ストレス以外で考えられる睡眠障害の原因について解説していきます。

不規則な生活

朝起きる時間や夜寝る時間がばらばらな場合、体内時計のずれが徐々に修正されなくなり、いつも眠気を感じる時間帯になっても眠くならないことがあります。

また、平日の睡眠負債を解消するために週末に寝だめをするといった行為も睡眠障害につながる可能性があります。平日と休日における起床・就寝時間に差が生じると、体内時計が乱れてしまうのです。この平日と休日のずれは「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」と呼ばれています。「十分に寝たのに、週明けに疲労が残る」という場合、寝だめを習慣化していないかどうか見直しましょう。

薬や刺激物の作用

服用している薬や食品などに含まれる刺激物も睡眠障害の原因になることがあります。たとえば、ステロイド薬や気管支拡張薬、抗がん剤、中枢神経に働く薬などは不眠を招きます。抗アレルギー剤や抗てんかん薬などは日中に眠気を引き起こします。治療中の病気がある場合、まずは担当医に睡眠障害が起きていることを伝えましょう。

食品ではコーヒーや緑茶などに含まれるカフェイン、料理に使われる香辛料、アルコールなどにも注意が必要です。寝つきを悪くしたり、睡眠の質を下げたりすることもあります。

精神疾患・身体疾患

精神疾患や身体疾患などによっても不眠などの症状が出ます。睡眠障害を伴う精神疾患として代表的なのはうつ病です。また、精神疾患に多い合併症というだけでなく、不眠症の影響でうつ病などを発症するケースもあります。

一方、睡眠障害の原因になる身体疾患は、生活習慣病やアトピー性皮膚炎などです。身体疾患に伴う痛みやかゆみ、頻尿などの症状が睡眠を妨げます。いずれのケースにおいても原因となっている病気の治療が必要になります。

睡眠の質を下げるストレスをコントロールするコツ

睡眠の質を下げないためには、ストレスを上手にコントロールすることが大切です。「寝つきが悪い」「途中で起きてしまう」という方向けに、ストレスをコントロールするコツについて説明していきます。

趣味などに没頭できる時間を作る

ストレスの原因が明確に分かっている場合、その原因から距離を置くことも有効です。しかし距離を置いても、ストレスの原因がなくなるわけではありません。こうしたケースでは、別のことに没頭できる趣味などの時間を作りましょう。自分の好きなことに没頭できる時間はストレスの原因を忘れられますし、気分転換にもなります。

気軽に相談できる相手を見つける

繰り返しになりますが、ストレスの原因は仕事や人間関係、経済的な問題など多岐にわたります。また、仕事の中でも「仕事量」「職場の人間関係」「昇進」など、ストレスを感じる原因はさまざまです。厚生労働省の令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、「強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある」と回答した労働者は82.2%にも上ります。(※2)

このデータから分かるように、ストレスを感じるのは珍しいことではありません。自分一人では解決できないケースもあるため、困ったときに相談できる相手を見つけましょう。他者の力を借りることで簡単に問題が解決されるケースもありますし、他者に話すこと自体がストレスの緩和につながるケースもあります。

(※2)厚生労働省 「令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況」

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r04-46-50b.html


<編集部より>
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仕事と私生活のメリハリをつける

職場にストレスの原因がある場合、退勤後も仕事のことを考えるのは良くありません。考えることで解決策が出てくるような問題なら良いですが、中にはどうしようもないケースもあります。職場の問題で過度なストレスを感じないためには、仕事と私生活のメリハリをつけましょう。

また、仕事だけでなく、プライベートにおいても物事の優先順位をつけることが効果的です。すべてにおいて完璧主義を貫こうとするとストレスを抱えやすいため、自分の中で妥協できるラインを決めておいてください。

自分なりのストレス解消法を見つける

ストレス自体は誰にでもあるものなので、溜め込まずに解消する方法を見つけましょう。たとえば、趣味や運動はストレス解消になります。また、日頃から頑張っている自分を労って、エステや少し良い食事などのご褒美を用意することも大切です。

ただし、生活の質を下げたり、ストレスの原因になったりするような解消法は避けてください。具体的には「暴飲暴食」「過度なアルコール摂取」「タバコ」「浪費」「ギャンブル」などです。

腹式呼吸・深い呼吸を意識する

ストレスを受けると呼吸は浅くなりやすいです。そして、呼吸が浅いとストレスを感じやすくなります。この悪循環から抜け出すためにも、呼吸の仕方を意識しましょう。深い呼吸や腹式呼吸は、身体を副交感神経が優位なリラックスした状態にします。ストレスを感じたとき、緊張しているとき、寝る前などは意識的に深く呼吸してみてください。

睡眠障害の予防・睡眠の質を高めるためのポイント

ここからはストレス以外の部分で知っておくと良い、睡眠の質を高めるためのポイントについて紹介していきます。一時的な不眠が慢性化しないためには、以下のようなポイントを日常生活で意識しましょう。

ウォーキングなどの適度な運動を習慣にする

睡眠の質を高めるにはウォーキングなどの適度な運動が有効です。30分程度でも構わないので、習慣として継続することがポイントになります。また、ウォーキング以外ではストレッチもおすすめです。ただし、夜間の激しい運動は交感神経を優位にするため、睡眠の質を高めるという観点からはおすすめできません。

決まった時間に起床して朝日を浴びる

体内時計のリズムを修正するには、しっかりと朝日を浴びることが大切です。ヒトの体内時計は約25時間周期ですが、朝日にはそのリズムを早める効果があります。そのため、できるだけ毎日決まった時間に起床し、カーテンを開けて、朝日を浴びるようにしましょう。不眠などの症状は、寝る前や寝るときに原因があると考える人も多いですが、就寝時に自然と眠気を感じるためには起床時や日中の行動も重要になります。

就寝前の行動に気を付ける

睡眠の質を下げないためには、就寝前に以下のような行動をとらないようにしましょう。

【就寝前に避けたい行動】

  • 就寝前の3時間以内に食事する
  • スマートフォンやパソコンを使用する
  • 続きが気になるドラマを見たり、本を読んだりする
  • 激しい運動を行う
  • コンビニやスーパーなどへ行く
  • 熱いお風呂に入る
  • カフェインを摂取する
  • 飲酒や喫煙をする

本来、夜は副交感神経が優位になり、自然と眠気に誘われます。しかし、上記のような行動を取ると寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めやすくなったりします。たとえば、食事を摂ると眠くなりますが、食事後3時間程度は胃腸が活発に働いている状態です。そのため、食事後すぐに寝ると睡眠の質が下がってしまいます。

また、質の良い眠りには適度な疲労感や体温の上昇も必要ですが、激しい運動は交感神経を優位にし、熱いお風呂は体温が上がりすぎて身体にも負担です。入浴に関しては、38度の湯温なら25分〜30分程度が睡眠には効果的だといわれています。(※3)就寝直前の激しい運動は避け、入浴も眠る2時間くらい前に済ませましょう。

(※3)厚生労働省 e-ヘルスネット 「快眠と生活習慣」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html

カフェインや香辛料などの摂取を控える

就寝前に避けたい行動の中でも挙げましたが、カフェインや香辛料などの刺激物は睡眠の質を下げる原因になります。カフェインはコーヒーや緑茶・紅茶、エナジードリンクなどに多く含まれていて、覚醒作用や利尿作用を持っています。寝る前の摂取だけでなく、過剰摂取の長期的な作用として「高血圧リスクの増加」なども報告されています。

長期的な作用としては、人によってはカフェインの摂取によって高血圧リスクが高くなる可能性があること、妊婦が高濃度のカフェインを摂取した場合に、胎児の発育を阻害(低体重)する可能性が報告されています。

【出典】農林水産省 「カフェインの過剰摂取について」


また、タバコに含まれるニコチンにも覚醒作用があり、アルコールは眠気を誘うものの、睡眠の質を下げ、夜中に目が覚めやすくなります。とくに過度な飲酒、喫煙習慣は睡眠障害以外でも健康リスクを高めるため注意が必要です。

寝室の睡眠環境を整える

寝室の環境も、睡眠の質に影響を与えます。たとえば「明るすぎる」「うるさい」「寒い(暑い)」などは睡眠に適しません。入眠をスムーズにするには、体温が適度に上昇したのち、深部体温が下がっていくことが重要です。そのため寝室が寒すぎたり、暑すぎたりすると寝つきが悪くなります。睡眠の質が下がっていると感じたら、寝室の「明るさ」「音」「温度」を見直してみてください。

ストレスなどによる睡眠障害は何科を受診する?

ストレスなどによる睡眠障害は、医療機関で相談可能です。精神科や心療内科、通常の内科などを受診しましょう。また、専門の外来(不眠外来や睡眠障害外来など)のある医療機関でも構いません。

医療機関では生活習慣を改善するための指導に加えて、必要に応じて睡眠導入剤などの処方も受けられます。ただし、睡眠障害の原因は複数考えられるため、実際の治療方針はケースバイケースです。

不眠などの症状は生活の質を下げるだけでなく、放置すると適応障害やうつ病などの別の病気につながる危険性もあります。また、なんらかの病気が原因で睡眠障害が起きているケースもあるので、不眠などの症状で生活に影響が出ているときは早めに医療機関を受診してください。

ストレス以外にも睡眠障害の原因は多い|予防には日常生活の見直しが重要

ストレスは睡眠障害の主な原因です。しかし、生活習慣や薬の副作用、精神疾患・身体疾患なども睡眠障害の原因になります。「寝つきが悪い」「すぐに目が覚める」などの症状に加えて、日常生活にも支障が出ている場合、睡眠障害の可能性が疑われます。症状を放置することで別の病気になるリスクもあるため、早めに医療機関で相談しましょう。

また、睡眠の質を上げ、睡眠障害を予防するには、日常生活の見直しも重要です。趣味の時間や適度な運動などでストレスを解消し、生活リズムを整えてください。生活習慣の見直しは、睡眠障害以外の病気による健康リスクの低減にもつながります。

<編集部より>
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監修者プロフィール

和クリニック 院長 前田佳宏

東大病院精神科医局に所属。精神保健指定医。東京警察病院や国立精神神経医療研究センターに勤務。児童精神科専門外来を3年間経験した後、2021年4月から町田市近郊で継承開業。西洋薬よりも漢方や心理療法を中心に診療を提供する。発達障害やPTSDに向けたトラウマケアが専門。SNS等でメンタルヘルスの情報発信、コーチング体験サロン「しなここラボ」、哲学カフェ「ゲーテカフェ」など活動の幅は広い。

※当記事は、2023年12月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
※当記事内で紹介されているサービスに関して、当記事を監修した医師は一切関与しておらず、またサービスの監修もしていません。

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