気になる症状と病気

万病につながる冷え性の原因とセルフケア

季節や性別を問わず、実は多くの人が冷え性に悩まされているといわれています。冷え性は万病のもとになることから、さまざまな体の不調の原因に。冷え性の原因を知り、改善のためのセルフケアを一緒に探ってみませんか。

1.冷え性の概要

冷え性で自覚される代表的な症状としては、例えば暖かい部屋で寒くないはずなのに手足の先端が冷たくなる、肌の表面が冷えてつらいというものです。体温が低くなっている「低体温」の状態とは異なるため、体温を測っても平熱です。冷え性は体全体ではなく手先や足先など体の一部だけが温まりにくくなっている状態だといえます。

体には体温を一定にするように調節する仕組みがあります。寒くて体が震える、暑くて汗が出るというのはその一例です。体は血流をコントロールして体温を調節しており、寒いときには体の先端や皮膚の表面の血管を縮めることで体の中心部に血液を集めて体温を下げないようにしたり、暑いときには逆に血管を広げて血流を増やして体内の熱を放出し体温を下げようとします。これらの体温調節の機能をコントロールする自律神経がうまく働かなくなったり、血流が悪く体温調節がうまくできなくなることで、冷え性になります。

冷え性に悩まされるのは一般に男性よりも女性の方が多いとされていますが、男性でも筋肉量が低下したり、加齢などで自律神経の機能が衰えたりすると冷え性になりやすくなります。

2.冷え性が続くことで起こる体の不調

冷え性を放置していると、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、腰痛、関節の痛み、便秘・下痢などの全身の症状が表れることがあります。常に疲れやすく体のだるさが取れず、イライラ、不眠、不安感など心の症状にもつながります。血流が悪いため体の新陳代謝が下がり、にきびや乾燥肌など肌の異常、抜け毛など美容面でも悪影響があります。

女性では生理痛や月経不順とも関係しています。冷え性の人は血流が悪いことで過剰に痛みの原因物質が分泌され、生理痛が強くなりやすいと指摘されています。月経周期との関係では、冷え性になると女性ホルモンの分泌が減って月経不順を招くだけでなく、逆にホルモンバランスの乱れが冷え性の原因になることがあります。卵巣の働きが低下したり子宮の状態が安定しなくなるため、冷え性は妊娠しやすさにも悪影響があり、妊娠を望む場合には冷えは大敵です。

3.冷え性の原因

前述したように冷え性をもたらすのは体温調節機能の乱れです。体温調節の異常を引き起こす原因としては、次のようなものが挙げられます。

自律神経の機能低下

体温調節は自律神経が自動的に行っています。ストレスや不規則な生活で自律神経の働きが弱まると体温調節の命令が体の隅々まで届かなくなり、体温をうまく調節できなくなります。また、夏の暑い時期にクーラーを使用する場合など、屋内と屋外の温度差が大きい状態が続くと自律神経による体温調節が対応しきれず、冷え性になってしまいます。

皮膚感覚の異常

きつい下着や靴などで体や足を締め付けていると、皮膚の温度を感じる機能に異常が起こります。皮膚が暑さ・寒さを適切に伝えられなくなることで、自律神経がうまく働かなくなり体温調節ができなくなります。

血流が悪い

貧血の人や喫煙をする人などでは体内の血流が悪くなるため、体の中心部で温められた血液が体の隅々まで流れにくく、冷え性につながります。

筋肉量の不足

寒いと体がブルブルと震えますが、これは筋肉を動かして熱を生み出す体温調節の機能です。このように筋肉は収縮する際に熱を生み出し、体の熱源となります。運動不足で筋肉量が少ない人では熱源が少ないので、体が冷えやすくなります。女性に冷え性が多いのは、女性は男性よりも筋肉量が少ないことが影響しています。

ホルモンバランスの乱れ

女性ホルモンは自律神経の働きに影響を与えているため、ホルモンバランスが乱れると冷え性につながることがあります。このため、冷え性は更年期障害の代表的な症状の一つとされています。

4.冷え性の原因になる病気

冷え性の症状の中には病気が原因になっている場合があり、自律神経失調症、貧血、更年期障害などのほか、甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患が隠れている場合があります。その他にも糖尿病の合併症である糖尿病性神経障害、動脈硬化が進行して足の血流が低下する閉塞性動脈硬化症、手足の末梢の血管が詰まって血液が行きわたらなくなるバージャー病でも冷え性のような症状が表れます。

冷え性が続いている場合には、冷え性を引き起こす病気が隠れている場合もありますので、医療機関で医師の診断を受けましょう。

5.冷え性改善のためのセルフケア

冷え性を改善するためには体を内側から温めるとともに血流を改善して、体内でつくり出された熱を全身に行きわたるようにすることが必要です。冷え性の改善につながるセルフケアに取り組みましょう。

運動

運動不足のままでは血液の循環が悪く冷え性が改善しません。運動することで筋肉を動かせば血行が良くなり、温かい血液が全身に行きわたります。また、運動の結果として筋肉量が増加すれば体の熱源が増えるため、冷え性になりにくくなります。

太ももやふくらはぎなど太い筋肉は下半身にありますので、スクワットのような筋トレや1日30分程度のウォーキングもお勧めです。時間を取るのが難しい人は合間時間にストレッチをすることで筋肉をほぐし、少しでも血流の改善を図りましょう。

食事

人間は食べ物のエネルギーで熱をつくり出していますから、食事は冷え性の改善にとても重要です。栄養バランスの取れた食事を朝昼晩と規則正しく食べましょう。特に朝食を取ると体温が上昇しやすくなるため、必ず食べるようにしてください。

冷たい食べ物や飲み物は体を冷やすので控えめに。サラダを食べたい場合は、電子レンジなどで熱を加えて温野菜にすると、体を冷やさずに多くの野菜を食べることができます。

食材としてはたんぱく質が多く含まれる肉や魚、ニンジンやゴボウなどの根菜類、ショウガやニンニクなどの香辛料、みそや納豆などの発酵食品などが体を温める食材としてお勧めです。

入浴

全身の血行が良くなるため、シャワーだけよりも浴槽に浸かる方がお勧め。40℃前後の少しぬるめの湯温で20分程度入ると効果的です。ゆっくりと湯船に浸かることで体全体が温まり、リラックス効果で質の良い睡眠にもつながります。

寒い時期は入浴前に浴室の壁にシャワーを当てたり、バスタブにふたをせずにお湯をためたりするなど浴室全体を温めてから入浴するようにすると、入浴時の急激な温度変化を緩和できてより安全です。

禁煙

タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させてしまうため、喫煙すると血流が悪くなってしまいます。さらに喫煙で動脈硬化が進行すると足先や指先など抹消の血管の血流も悪くなることから、タバコは冷え性の原因の一つです。タバコを吸う本人以外の周囲の人も煙を吸うことで同様の影響があります。

タバコに含まれる有害物質は多くの病気のリスクを高めます。冷え性予防だけでなく、健康を守るためにもぜひ禁煙しましょう。

服装

サイズが合わないきつい服装だと、締め付けられている部分の血流を悪くして冷え性につながってしまいます。また、外気に皮膚をさらされる部分が多い服装だと、体温を冷気から守るために皮膚の表面の血管が収縮して血行不良になりがちです。冷え性対策のためには締め付けがきつくないゆったりした服装で、露出が少なく体を冷やさないことが重要です。

服装のポイントは首元と下半身を冷やさないようにすることです。マフラー・スカーフなどで首元を冷やさないようにして、上半身より下半身を1枚多く着ることで下半身の冷えを防ぎます。ひざ掛け、レッグウォーマーなども活用しましょう。靴下の重ね履きをする場合は、締め付けがきつくならないようにゆったりめのサイズにしてください。

室温調整

ヒトの体は暑くても寒くても一定の体温に調整することができますが、温度差が大きくなり過ぎると自律神経が対応しきれません。屋内と屋外の温度差が7℃を超えると体温調節がうまくできなくなってしまいますので、暖房や冷房を使う場合は外気温との差に注意して7℃を超えないように設定してみましょう。暑かったり寒かったりする場合は重ね着するなど服装で調整します。

6.まとめ

冷え性自体は病気ではありませんが、さまざまな体の不調と関係していることから甘くみることができない症状です。自分でできるセルフケアで冷え性対策を行うとともに、症状が治まらない場合は医療機関を受診して原因となる病気がないかを確認してもらいましょう。原因となる病気が見つからない場合でも、必要に応じて漢方薬などで症状を緩和する治療が受けられる場合があります。

原稿・社会保険研究所Copyright


<編集部より>
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※当記事は、2023年11月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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