気になる症状と病気

サインを見逃さず、子どものこころと向き合うために【専門家監修】

幼児期から思春期の子どもは、家庭環境や学校環境、家族だけではない人間関係などさまざまな要因によりストレスや悩みを抱え、精神が不安定な状態になることもあります。そうした子どもの変化に気づくためのヒントや、気づいたときの子どもとの向き合い方、注意点についてご紹介します。(以下、専門家監修による記事です)

1.子どものこころの病気について知る

子どもは身体的な成長だけではなく、さまざまな環境による変化でこころが大きく揺れ動くことがあります。子どものこころの変化やSOSサインについてご紹介します。

1.1 子どものこころの動き

幼児期から思春期にある子どもは、一人ひとり異なる資質および特性を持っています。その成長には個人差があるものの、共通してみられる特徴もあります。


幼児期は周囲の人や物、自然などの環境と交流し、興味や関心を広げ、認識力や社会性を発展させる大切な時期です。また、子ども同士の遊びを通じて豊かな想像力を培います。自分と異なる他者の存在や視点に気づき、感情や意志を表現しながら、道徳的な観念や社会性の基盤を築いていく時期といえます。


小学校低学年は、大人の指示に従いながら、善悪について理解し判断できる能力が向上します。同時に、言語能力や認識力も向上する時期です。小学校高学年になると、知的な活動が増え、自分自身を客観的に把握できるようになります。発達の個人差もより明確にあらわれる時期といえます。


中学生になるころには思春期に入り、自分だけの内側の世界に気づき始めます。自らが思い描く意識と客観的事実の差異に悩んだり、大人との関係よりも友人との関係を重要視したりするようになります。親に対する反抗期や親子のコミュニケーション不足に陥ることもあります。同時に、友人からの評価に強く意識を向ける一方で、他者との交流に消極的な傾向がみられることもあります。性意識や異性への興味関心も高まる時期です。


高校生になると、親の保護のもとから社会への参加が始まります。思春期の混乱から抜け出しながら社会を見据え、自立した大人となるための過渡期の最終段階となります。また、特定の友人とは深い人間関係を築く一方で、集団の外に対しては無関心です。さらに社会や公共に対する意識や関心が低くなる傾向がみられます。


子どもを支援するためには、これら成長発達の段階による特徴をふまえることが大切になってきます。

1.2 気づきやすい子どものSOSサイン

日常生活で気づきやすいこころのSOSサインがあります。特に、一緒に住んでいる家族だからこそ気づきやすい他覚症状・自覚症状をご紹介します。


<睡眠>
寝つきが悪い
夜更かししている
途中で起きる
睡眠のリズムが崩れている
朝起きるのがつらそう
なかなか起きられない
昼間も眠い・眠そう


<食事>
食欲がない
食べる量が減った
反対に食べすぎる
パンや白米、お菓子など炭水化物を特に欲しがる
急に痩せた、太った
体重を過度に気にしている
隠れて食べる、人前で食べられなくなる
過食嘔吐がある
エナジードリンクを過剰に摂取する


<体調>
だるそう
疲れている
元気がない
気力がない
顔色が悪い
腹痛や頭痛、めまい、吐き気などの症状がある


<行動>
学校に行きたがらない
家から出ず引きこもりがちになった
友人と遊ばなくなった
物事に対して興味がない、楽しめなくなった
身だしなみにかまわなくなった
反対に過度に気にして身支度に時間がかかる、外見に納得しないと外出できない
無口になった、挨拶をしなくなった
イライラしやすく、気持ちが抑えられなくなった
集中できなくなった
何もせずぼんやりしている
表情が変わらない、感情面の反応が少なくなった
スマホやタブレットから離れられなくなる
隠しごとをする、嘘をつくようになる
親のお金を盗る
友人に対して攻撃的になる
自傷行為


睡眠や食事、体調、行動において気づきやすい症状が出る背景には、勉強や進学・進路など学校に関するもののほか、友人のこと、家族のこと、自分の身体や健康のことについての悩みなどがきっかけとして考えられます。


これらの症状は一時的な場合もありますが、背後に病気(うつ病、不安障害、統合失調症、摂食障害など)が隠れていることもあります。そのため、こころのサインに気づいて向き合っていくことが大切です。

2.子どものこころと向き合うために

子どものこころのサインに気づいたら、周りの大人はどうしたらいいのでしょうか、具体的な方法と避けたほうがいいことがあります。

2.1 子どもがこころを閉ざさないために

どの年齢の子どもにおいてもこころを閉ざしてしまわないためには、その素行にかかわらず、親が子どもを大切な存在として認めているかどうか、親子の信頼関係があるかどうかが大前提です。また、こころが落ち込んでいるときに子どもが自ら人に話すのは勇気がいることです。そのためは、まず周りの大人が避けるべきことを知っておきましょう。


避けなければならないことには、「なぜ?」「どうして?」「そんなはずはない」「何を言っているの」など、子どもを問い詰めて責めるようなことを言う、感情的になる、否定するなどが挙げられます。家族として心配な気持ちがあって、「きちんと説明してほしい」など、「~してほしい」、「~すべき」という考えがあるのは当然かもしれません。


しかし、それは表に出さずに、まずは子どもの気持ちを受け止めることが大切です。また、声かけの仕方の他に、聞くときの態度も大切です。何かをしながら聞く、視線を合わせない、腕組みをするなどは避けましょう。

2.2 子どもの話を聞いてみる

まず話を聞いてみることから始めましょう。自分の考えや意見をはさむことなく、子どもがどんなふうに感じているか、どんな気持ちでいるのかを理解するつもりで聞きます。


たとえば、「最近、元気がないように見えて心配していたの」「お腹が痛いの、続いているみたいね。どんな調子か話してくれない?」「そうか、○○だったんだね」などのような声かけの仕方があります。子どもが相手を信用して、安心して自分の感情や考えを話すことが第一歩となり、本人のなかでうまく言葉にできなかった本音が語られることで、親子の関係性のなかで安心感や自尊心が生まれていきます。


また、子どもにとっては、最近様子が違うことを指摘されると、話したくないという気持ちの他にも自意識から「そんなことはない」と意地を張ってしまうこともあります。子どもが話をしてくれなくても、無理強いはしないことです。いつでも聞く姿勢でいることを伝えることも大切です。加えて、子どもが話してくれたことを他人に話すときには細心の注意が必要です。

2.3 困ったときの相談先

子どものこころの健康状態が心配なときには、一人で抱え込まず、家族と学校・教職員を含めた周囲の人たちと協力し合うことが大切です。子どもから話を聞いたことをメモしておき、必要に応じてスクールカウンセラー、養護教諭、教員、専門家などに相談するのも良いでしょう。


地域の保健所や保健センター、精神保健福祉センターなどにもこころの相談窓口があります。こころを専門にみる病院(精神科や心療内科)・カウンセリングなど、本人が納得したうえでの受診なども選択肢の1つです。



<編集部より>
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2.4 自分のケアも大切

最後に、親自身のケアについてご紹介します。子どものこころの健康状態が気になる場合、家族のこころにとっても知らず知らずのうちに大きな負担となることがあります。


行き場のない心配や不安から、自分や配偶者を責めてしまうかもしれません。しかし、親が自分自身を責める、または家族仲が悪くなってしまうと、子どものストレスもさらに増えることになります。親は気分転換も含めて自分のこころの健康も大切にし、家族で互いにサポートしながら、ときには周りの人の力を借りて協力することが大切です。

3.子どものこころのサインへの気づきと理解

子どものこころのサインは家族だからこそ気づけるものもあります。早めに気づいて話を聞き、対処することが大切です。また、子どものこころや健康はもちろんですが、子どものことで手一杯になると、親自身のこころの健康がおろそかになってしまいます。子どもを支えるために自分のこころの健康も大切にしていきましょう。



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≪執筆者プロフィール≫
ライター・白石弓夏(しらいしゆみか)
看護師兼ライター。15年以上看護師として病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟で勤務中。
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≪監修者者プロフィール≫

吉田美智子(よしだみちこ)

臨床心理士・公認心理師、東京都スクールカウンセラー。
東京・青山【はこにわサロン東京】主宰。「自分らしく生きる」を応援。相談内容は、愛着障害、アダルトチルドレン、アンガーマネジメント、解離性障害、グリーフケア、社交不安、身体表現性障害、摂食障害、適応障害、トラウマ・複雑性トラウマ、発達障害、ひきこもり、不登校、無気力、抑うつなど。カウンセリングは対面、電話、オンラインで。

参考

※当記事は、2023年7月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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