気になる症状と病気

知っておきたい女性特有の病気

公開日:2023.08.22

女性は、特に30代から40代になると、仕事や育児など多忙な毎日を送り、自分の身体のことはおろそかになってしまうことも多いでしょう。健康を意識する中でも、より注意したいのが女性特有の病気です。この記事では、女性が知っておきたい病気や症状について解説します。心身ともに健やかに過ごすために、改めて自分の身体を大切にするきっかけにしてください。

1.女性特有の病気とは

女性特有の病気として、乳房・子宮・卵巣に関する病気が挙げられます。女性の身体は、女性ホルモンの分泌量の変化によって大きく影響を受けます。特に30~40代になると、親族や友人が乳がんや子宮筋腫などの病気にかかり、ご自身も健康に不安を感じることがあるのではないでしょうか。

健康な生活を送るためにも、病気それぞれの特徴を理解し、予防や早期発見に努めることが大切です。ここからは各病気について詳しく見ていきましょう。

2.女性のがん

がんは日本人の2人に1人がかかるとされており、気になる病気の代表格といえるでしょう。国立がん研究センターの統計によると、2019年のがん罹患数の順位(※1)の中で女性の罹患者が最も多いのは乳がん、5位は子宮がんでした。

総数男性女性
1位大腸前立腺乳房
2位大腸大腸
3位
4位乳房
5位前立腺肝臓子宮
大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位
【出典】
※1:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

女性のがんについては、「詳しく知りたい!女性のがん」で詳しく解説しています。こちらの記事もご一読ください。

3.【乳房の病気】乳がん

前述のとおり、女性のがんで最も罹患者数が多いのが乳がんです。乳がんは30代以降に患者数が増加し、40代が発症のピークとなっています。乳がんには、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっています。エストロゲンが含まれた経口避妊薬の使用や閉経後の長期間のホルモン補充療法により、乳がんの発生リスクを上昇させます。

また初経が早かった人、初産年齢が高かった人、出産回数が少ない人などが、エストロゲンとの関連で乳がんにかかりやすいと言われています。飲酒や閉経後の肥満、運動不足などの生活習慣も乳がんを発症する要因だと考えられています。そのほか、近親者に乳がんになった人がいる場合はリスクが高いと考えられます。

罹患者数が多い乳がんですが、国立がん研究センターによると5年相対生存率(がんと診断されてから5年後の生存割合について、日本人全体の5年後の生存割合よりどのくらい低いかを表す数値)が92.3%(※2)と高いのも特徴です。検診により早期発見することで早期治療につながります。

【出典】
※2:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

4.【子宮の病気】子宮がん・子宮内膜症・子宮筋腫

子宮は下腹部にあり、妊娠や出産を担う女性特有の機能を持っています。左右の卵巣につながっており、ちょうど両脇にラグビーボールを抱えたような形をしています。子宮の病気の代表的なものとして、子宮がん(子宮頸がん・子宮体がん)のほか、子宮内膜症、子宮筋腫があります。

子宮体がんと子宮頸がんを説明するイラスト

4.1子宮頸がんとは

子宮がんは、がんができた部位によって、子宮頸(けい)がんと子宮体がんに分けられます。子宮頚がんとは、子宮の入り口にある子宮頸部にできるがんのことです。

子宮頸がんを発症するリスクが高い原因として、ヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)の感染が挙げられます。HPVは子宮頸がんのほかにも、肛門がん・膣がんなどの原因となることもあります。性行為により誰もが感染する可能性のあるウイルスで、小学校6年~高校1年相当の女性はワクチンの定期接種が推奨されています。

4.2子宮体がんとは

子宮の中心部である子宮体部に発生したものが、子宮体がんです。子宮内膜がんとも呼ばれます。子宮体がんでは、多くのケースで不正出血が見られます。出血量はごく少量である場合も少なくなくないため、見逃さないように注意が必要です。出血量に関わらず、不正出血が見られたら早めに受診すると良いでしょう。

4.3子宮内膜症とは

子宮の内側は、子宮内膜という膜で覆われていますが、その膜が子宮以外の場所にできてしまうことで起こる病気を子宮内膜症といいます。発生部位は骨盤腹膜や卵巣をはじめとする骨盤内部および骨盤外のあらゆる臓器・部位です。なぜ子宮内膜がほかの場所にできてしまうのか、いくつかの説があるものの、はっきりとした原因はわかっていません。

月経痛が強い、もしくは以前よりひどくなった場合には、子宮内膜症が疑われます。早めに受診するようにしましょう。子宮内膜症は不妊の原因にもなるため、妊娠・出産の希望のある女性は要注意です。

治療法としては薬物療法や手術療法がありますが、妊娠・出産を希望するかどうかでも変わってくるため、主治医によく相談しましょう。

4.4子宮筋腫とは

子宮筋腫は30代~40代に多く、子宮内部の子宮平滑筋(へいかつきん)に良性の腫瘍ができる病気です。悪性化することはなく、基本的には経過観察となります。ただし筋腫が発生した場所や大きさによっては、過多月経・月経困難症・疼痛)、さらには不妊を引き起こす場合があります。子宮筋腫と診断されたら、主治医と相談の上、必要に応じて薬物療法や手術療法を検討しましょう。

5.月経に関する症状

思春期に始まる月経は、通常25~38日の月経サイクルで繰り返されます。ただし周期が乱れたり、出血量が多かったり、腹痛・イライラするなど、さまざまな症状が起こることがあります。

5.1月経困難症とは

月経のとき、日常生活がままならなくなるほどの強い腹痛や腰痛などの症状が起こることを、月経困難症といいます。月経困難症の場合、子宮内膜症であることも多く、また子宮筋腫や卵巣腫瘍などの病気が隠れていることがあります。月経時に症状が重いときは婦人科を受診してみましょう。

5.2月経前症候群(PMS)

月経前症候群は、最近よく知られるようになりました。月経前になると、疲労感・無気力、情緒不安定、乳房の痛み・張り、体重増加、頭痛、食欲増進、集中力低下など、さまざまな症状が起こることを月経前症候群といいます。症状の種類や症状が出る時期、症状が続く長さなどは、個人差があります。

月経前症候群がなぜ起こるのか、理由は明確にはなっていないものの、ホルモンの変動が関係していると考えられています。治療法は確立されていませんが、市販薬や婦人科の受診で対応している女性もいます。規則正しい生活を心がけ、ストレスを減らすようにするなど、自分に合った対処法を探してみましょう。

6.検診を受けましょう

女性特有の病気には、初期は無症状のものや症状が軽いものが少なくありません。そのため早期発見のためには、女性の病気に対応した検診が有効です。主なものは乳がん検診と子宮がん検診です。これらの検診は自治体が費用を負担しているため、無料か一部自己負担で受診できます。自治体から受診クーポン券が送られてきたら、なるべく早く検診を受けると良いでしょう。

それぞれのがん検診の方法や対象年齢について、詳しくは下記記事をご覧ください。
「がん検診にはいくつ種類があって、どのような検査をするの?」

7.女性特有の病気や不調と上手につき合っていくために

今回は乳房や子宮など、女性特有の病気や症状を見ていきました。原因や症状はさまざまですが、どの病気も早い段階で治療を行うことで快適な生活を送ることが可能になります。不調を感じた際は、かかりつけの婦人科医に相談すると良いでしょう。また年齢によって病気になりやすいこともあります。症状がなくても、定期的に検診や検査を受けることで、ご自分の身体を大切にする習慣をつけましょう。


<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
ライター・秦さきよ(はたさきよ)
看護師・保健師・糖尿病療養指導士(L)。2020年よりライターとして活動。医療や介護、SDGsに関する記事を多数執筆している。
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参考

※当記事は2023年7月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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