気になる症状と病気

生理痛による腰痛との上手な付き合い方|セルフケアについて紹介

公開日:2023.08.23

「生理のときに腰痛がひどいけれど、これって大丈夫?」「生理の腰痛はどうしたら楽になるの?」生理前後の腰痛でお悩みでも、どのように対策したらよいのかわからない人もいるのではないでしょうか。当記事では、生理で腰痛になる原因と、痛みを軽減するためのセルフケアについて紹介します。生理の痛みをのりきるために、お役立てください。

1.生理痛の症状には腰痛も含まれる

生理痛とは、月経に伴って起こる痛みのことです。

生理痛というと、お腹の痛みを想像するかもしれませんが、生理痛についての調査では、腹痛に次いで多い悩みとして「腰痛」があります。

月経前と月経中の不快症状の割合と比較

【出典】

齋藤千賀子・西脇美春「月経パターンと月経時の不快症状及び対処行動との関係」、Yamagata Journal of Health Sciences、2005年

https://yachts.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=15&item_no=1&attribute_id=17&file_no=1

 

月経痛の有無や程度に関して、労災疾病等研究普及サイトでは、以下のように述べられています。

月経痛の有無については20歳代の85%、30歳代81%と多くの女性に月経痛があり、就労女性の77%、主婦の72%が月経痛があることが示された。NSAIDsなどの鎮痛剤を服用するほどの強い月経痛は主婦では22%であったのに対し、就労女性では37%であり、強い月経痛を経験している

 
【出典】独立行政法人 労働者健康安全機構 労災疾病等医学研究普及サイト「働く女性の健康」

生理痛は多くの人にあり、鎮痛剤を服用するほどの痛みがある人も2割以上いるとわかります。

2.生理痛で腰が痛い原因は?

生理痛で腰が痛くなることについて不思議に思う人がいるかもしれません。ここからは腰が痛くなる原因について説明します。

 

若年者における生理痛の多くは、子宮などに原因となる疾患がないものです。20~24歳頃まで痛みが強い人が多く、年齢を重ねると軽減する傾向があります。しかし、なかには婦人科疾患を伴う場合もあります。

 

原因について1つずつ見ていきましょう。

2.1子宮の収縮

生理時には、子宮内膜で、子宮を収縮させる「プロスタグランディン」という物質を産生します。子宮を収縮させることによって、月経血を外に排出させるのです。

 

プロスタグランディンは、痛みの発生にもかかわる物質で、生理痛の大きな原因になります。プロスタグランディンの産生が多すぎる場合には、子宮の収縮も強くなり、腹痛や腰痛が増強します。

2.2月経血の通り道がせまい

子宮の入り口や月経血が外に流れ出る通路(子宮頸管)がせまいのも、痛みの原因になります。通りにくいところを無理に通ろうとする刺激を、腹痛や腰痛として感じやすくなるのです。

 

これは、とくに若い人に当てはまります。

 

若いうちは子宮周辺が未発達で、痛みが増強しやすい事実について、以下のような記載があります。

子宮腔の狭さや子宮の発育途中段階などで成人女性より月経血の排出が難しく,排出しようとして子宮収縮作用を司るプロスタグランジンの働きは大きくなりいっそう痛みが増す

 
【出典】古田聡美「月経随伴症状の軽減へのマンスリービクスの効果について」、鹿児島純心女子短期大学研究紀要、2007年

つまり、若い人における生理の特徴をわかりやすくまとめると、以下になります。

  • 月経血の通り道がせまいために、通過する刺激を痛みとして感じやすい
  • 月経血を排出させるために、プロスタグランディンの働き自体が強まる可能性がある

プロスタグランディンは、子宮の収縮とともに痛みの発生にもつながります。そのため、成人女性よりも腹痛や腰痛を感じやすい、といえるのです。

 

子宮が成熟したり、出産などで子宮頸管が広がったりすることによって、生理痛も軽減する傾向があります。

2.3骨盤の血行が悪い

下記のように、骨盤内の血行が悪いと、生理時の腹痛や腰痛の原因となります。

月経痛の代表的な痛みである腹痛と腰痛は,骨盤内臓器の循環不全による血管・リンパ液のうっ滞が,脊髄・神経根以外の神経分布である反回枝や交通枝,または内側枝,外側枝などの神経の圧迫や,直接神経でなくとも,周囲の結合組織や靱帯,筋膜,関節の進展や弛緩にともなって発生する

 
【出典】古田聡美「月経随伴症状の軽減へのマンスリービクスの効果について」、鹿児島純心女子短期大学研究紀要、2007年

実際に、喫煙や冷えなど、血流を低下させる要因に伴って、痛みを強く感じる人がいます。

2.4月経前症候群

痛みが生理開始より前からであれば、月経前症候群(PMS)の可能性も考えられます。月経前症候群は、生理に関連して起こる、身体やこころにあらわれるさまざまな不調です。身体症状には腹痛や乳房緊張感、腰痛、頭痛などがあります。

 

生理開始3~10日前に症状が出始めて、生理開始とともに軽減する傾向があります。心身の状態やストレスなど、さまざまな影響を受けるとされていますが、明らかな原因はわかっていません。

2.5婦人科疾患が原因の場合もある

生理痛のなかには、以下のような婦人科疾患が原因のものもあります。

  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜症
  • 子宮腺筋症
  • 骨盤内炎症性疾患
  • 子宮の形態異常など

疾患が原因かどうかを調べるためには、病院で検査してもらう必要があります。

3.生理痛で腰が痛い場合のセルフケア

ここからは、毎月の生理痛を、少しでも楽にするセルフケアについて紹介します。痛みを我慢するのはつらいことでしょう。無理せず、自分に合った方法を取り入れてください。

3.1適度な運動やストレッチ

月経に伴う症状には、適度な運動がすすめられています。

 

女子大学生を対象にした質問紙調査では、運動習慣は月経困難症の有無に関係していて、月経困難症の軽減には、日頃の運動習慣が大事であると示されました。

 

また、生理中に骨盤を動かす体操やストレッチの有効性についても、国内・海外で報告されています。

 

生理中に激しい運動はつらいと思いますが、軽いストレッチや体操、散歩などで、身体や骨盤周囲を動かしてみるとよいでしょう。

3.2しめつけない

きつい下着やぴっちりした衣服は、骨盤の血流を低下させます。痛みを増強させないためにも、生理中はしめつけない、ゆったりした衣服がおすすめです。

3.3生活リズムを整える

生活リズムを整えるのも大切です。生活習慣と生理痛との関係を調べた研究では、睡眠の質が低い人や、朝食を食べない人では、生理痛が強くなる可能性について報告されました。

 

生理に伴う痛みを軽減するためには、睡眠や栄養を十分にとって、生活リズムを整えるのが大切だといえるでしょう。

3.4リラックスする

生理痛や生理前のつらい症状には、疲労を避けて、リラックスできる環境を整えるのもよいとされています。

 

好きな音楽を聞く、アロマセラピーなど、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。

3.5市販の痛み止めを服用する

セルフケアをしても生理痛がつらい場合には、市販の痛み止めを服用すると、痛みを軽減できる可能性があります。痛み止めには、生理痛の原因である「プロスタグランディン」を抑えられる、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が推奨されています。

 

非ステロイド抗炎症薬の働きは、プロスタグランディンの「産生を抑える」ことです。そのため、鎮痛効果を発揮するためには、プロスタグランディンが大量に生成されて、痛みが強くなった後からではなく、「痛み始めた早期に」服用することが大切です。

 

購入する際には薬の種類や飲み方などについて、薬剤師に相談するとよいでしょう。

4.セルフケアで改善しない場合は婦人科でチェックしてもらう

セルフケアや痛み止めを服用しても症状が続く場合には、婦人科でチェックしてもらうことをおすすめします。卵巣や子宮の病気があるかどうかを検査して、必要な治療が受けられます。

 

とくに原因が見つからない生理痛の場合でも、低用量ピルや漢方薬など、痛み止め以外による治療の選択肢が広がるのです。

 

「婦人科の受診」というと不安に思うかもしれませんが、検査や治療については相談できます。痛みが続く場合には、痛みをコントロールするためにも、婦人科疾患がないかどうかを確認するためにも、1度相談するとよいでしょう。

5.生理痛の腰痛にはセルフケアで備えて、心配な場合には婦人科を受診しよう

多くの女性が悩む生理痛は、セルフケアでも軽減できる可能性があります。それでも痛みがつらい場合には、痛み止めを服用するのも効果的です。

 

副作用などが心配であれば、薬剤師や医師に薬の種類などについて相談するとよいでしょう。

 

また、痛み止めを服用しても症状が続く場合には、婦人科の受診をおすすめします。

 

生理痛による腰痛の軽減にお役立てください。


<編集部より>
「病院に行くほどではないけれど、ちょっと相談したい…」そんなとき、保健師や看護師などに相談できる『健康相談サービス』をご存じですか?詳しくはこちらをご覧ください。

***************

執筆者プロフィール

大井純子

言語聴覚士(ことばと飲み込みのリハビリ)・医療ライター。

回復期リハビリテーション病院や総合病院での勤務経験を経て、現在は訪問リハビリテーションに従事している。また、病院や在宅現場での勤務経験を活かして、疾患や症状、介護についての記事を中心に執筆中。リハビリや記事の執筆を通じて、「症状に悩む方を支える」ことを目指して活動している。

***************

※当記事は、2023年6月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

メッセージを送る

いただいたコメントはつながるティーペック事務局に送信されます。 サイトに公開はされません。 コメントには返信できませんのでご了承ください。

他にもこんな記事があります。

気になるワードで記事を探す

おすすめタグで探す