気になる症状と病気

発熱や咳、子どもに多い症状ごとの観察ポイントを解説【医師監修】

公開日:2023.09.14

子どもの体調が悪そうだなと感じたとき、どのように対応すればいいのか困ってしまうことが多いかもしれません。今回は、自分ではっきりと症状を訴えることができない小さな子どもに多い症状をピックアップします。どこが、いつから、どのような症状があるのか、症状別の観察ポイントやその後の受診までの判断や対応についてご紹介します。(以下、医師監修による記事です) ※この記事では新生児以外、未就学児までのお子さんの場合を想定しています。

1.子どもに多い症状、観察ポイント

成長過程の子どもは未熟で病原体への抵抗力が弱く、特に未就学児は風邪や、はやりの感染症などにかかりやすい時期でもあります。保育園や幼稚園など、通園・集団生活における触れ合いが増えるため、風邪などをもらってきやすい時期ともいえるでしょう。子どもに多い症状とその際の観察ポイントについて紹介していきます。

1.1 親の感じる”いつもと違う”が大事

未就学児の子どもは、自分で症状を訴えることが難しいこともあり、身近な保護者の「あれ?なんだかいつもと違うな」という違和感が大事になってきます。

小児科の医師や看護師も、子どもの診察をするときにはそうした親の違和感に対しては敏感に、慎重に問診をしていきます。「こんなことを先生に話していいのかな」「子どもにはよくあることなのかな」と思わず、小さなことであっても気になることは医師に伝えてみてください。

1.2 症状別の考えられる観察ポイント

子どもの症状で多いものから、それぞれに緊急度・重症度を判断するために、どのようなところを観察したらいいかのポイントを紹介していきます。

1.2.1 発熱

発熱は細菌やウイルスなどの感染症、熱中症や脱水症などが原因で起こります。さまざまな原因や病気が考えられるため、こまめに子どもの様子を観察しましょう。


<観察ポイント>

  • 体温(38度以上あるか、または平熱より1度以上高くないか)
  • 水分や食事はとれているか
  • おしっこはいつも通り出ているか
  • おしゃべりしたり、笑ったり、活気があるか
  • 無表情・ぐったりしていないか・ぼーっとしていないか

※発熱時の体温は、あくまでも目安です。個々の平熱に応じて、個別に判断します。


★緊急度・重症度が高いのは…
水分や食事がとれない、おしっこが出ない、活気がない、ぐったりしているなどの症状があれば、脱水症状の危険や発熱や細菌・ウイルスによる意識障害などが疑われるため、翌日まで待たずに診療時間内で受診か、夜間・休日であれば医療機関に電話してから救急受診しましょう。

また、3ヶ月未満の場合はすみやかに受診しましょう。

1.2.2 咳、喘鳴(ぜんめい)

咳や鼻水も、発熱に続き、子どもに多い症状です。咳は主に気管や気管支、喉から細菌やウイルスが入り込んだ場合に、そのウイルスを外に出そうとする反応です。


<観察ポイント>

  • ぜいぜい言っている、呼吸が苦しそう
  • 顔色や唇の色が悪い
  • 声がかすれている
  • 胸がへこむ呼吸をしている
  • 体温(38度以上あるか、または平熱より1度以上高くないか)
  • 1日中咳をしている
  • 変な音の咳をしている(ケンケン、ゼロゼロなど)
  • ぐったりと元気がない


★緊急度・重症度が高いのは…
呼吸の回数がいつもより速い、胸がへこんでいる、肩で呼吸をする、呼吸をするときにぜいぜい、ヒューという音がする、ぐったりしている場合には、喘息発作や意識障害の危険があり、翌日まで待たずに診療時間に受診、または夜間や休日であれば救急受診へ。

活気はあるが、声がかすれて聞えない、咳が続いて眠れない、変な咳が出るといった場合には当日中もしくは翌朝には受診しましょう。

1.2.3 嘔吐

嘔吐には、消化器症状としての嘔吐と、頭の異常により引き起こされるものとあります。


<観察ポイント>

  • ひどい腹痛や頭痛、ぐったりしている、意識障害がある
  • 繰り返し吐く(2~3回以上続く)
  • 熱がある
  • 下痢をしている
  • おしっこが出ない
  • 吐いたものがコーヒーの残りカスのよう、血や黄色のもの(胆汁)を吐いた


★緊急度・重症度が高いのは…
ひどい腹痛や頭痛、ぐったりして意識障害がある場合、吐いたものがコーヒーの残りカスのよう、血や黄色の場合にはすぐに救急受診しましょう。活気はあるが、繰り返し吐いて水分がとれない、下痢をしている状態の場合には、今後脱水の危険があるため、当日中または翌日朝に受診しましょう。


緊急度・重症度が低い嘔吐時には、「経口補水療法」が有効です。子どもが嘔吐したら飲食物を何も与えず、30~60分にまずは水や麦茶ではなくイオン水を5~10ml程度ずつ、5~10分ごとを目安に与えてください。

イオン水は水・食塩・砂糖(・レモン汁)などで作ることもでき、嘔吐を繰り返しても体調を悪化させません。吐いた場合には30分程度様子を見て、吐き気がおさまってから飲ませます。

1.2.4 下痢

水分を多く含んだ下痢は、ウイルス感染や食べ物などが原因で起こります。


<観察ポイント>

  • 1日に数回下痢が出る
  • 血便になっている
  • 水分はとれている
  • ぐったりしている
  • おしっこが出ていない
  • 発熱や嘔吐の症状がある


★緊急度・重症度が高いのは…
血便になっている、水分がとれずおしっこが出ない、ぐったりしている、発熱や嘔吐の症状がある場合には翌日まで待たずに診療時間で受診か夜間や休日であれば救急受診しましょう。

下痢が数回あっても、活気があって水分もとれていれば、様子を見て当日中か翌朝に受診しましょう。

1.2.5 発疹

発疹は皮膚の感染症やアレルギー反応として出てくるものから、皮膚の内出血を起こす病気によるものまでさまざまな原因があります。

発疹が出てきた部位、発疹の数・状態(赤く盛りあがったもの、小さな点々、膿や汁が出る、時間とともに増えているなど)、その他に熱などの症状も観察することが大事です。


<観察ポイント>

  • 何か食べた、薬を飲んだ、虫刺されや何か触った後に出てきた
  • 息苦しさ、声のかすれ
  • 38度以上の熱(熱が長引いた後に発疹が出た)
  • 盛り上がった発疹
  • ぶつぶつに膿や汁がある
  • 顔や唇の腫れ
  • かゆみがある
  • 紫色の小さな点々が足やひざにある
  • 腹痛や繰り返し吐く

★緊急度・重症度が高いのは…
何か食べた、薬を飲んだ、虫刺されや何か触った後に出てきた発疹はアレルギー反応の可能性があります。全身に広がっていれば、翌日まで待たずに診療時間で受診か夜間や休日であれば救急受診しましょう。


息苦しさや声のかすれがある、ぐったりしている、腹痛や繰り返し吐く場合には、緊急性が高い症状のため、すぐに救急受診へ。飲食や虫刺されを原因とする可能性が少ない発疹や症状の場合には、当日中または翌日朝に受診しましょう。

1.2.6 けいれん、ふるえ

原因としては、脳内の異常な電気的興奮によるものや脳出血、発熱時の悪寒によるふるえ(シバリング)などがあります。
なかには原因がはっきりとわからないものもあります。けいれんがどのように起こっていたか(左右差、部位、目の向き、時間など)を観察してメモしておくといいでしょう。


<観察ポイント>

  • 意識が戻らない(呼び掛けに反応しない)、目が合わない
  • けいれんが5分以上続く
  • 唇や顔色が悪い
  • 繰り返しけいれんがある
  • こきざみなふるえでけいれんかわからない
  • 体温(38度以上)


★緊急度・重症度が高いのは…
意識が戻らない(呼び掛けに反応しない)、目が合わない、唇や顔色が悪い、24時間以内に繰り返しけいれんがある、けいれんが5分以上続く場合はすぐに救急受診か、救急車を呼びましょう。

または、6ヶ月未満の子どもの場合もすぐに救急受診が必要です。てんかんの診断がある、けいれんの既往がある場合には、主治医の指示にしたがって受診(坐薬を入れてもけいれんがとまらなければ、受診など)しましょう。

2.受診が必要になるのはどんなときか

それぞれの症状の観察ポイントでも、緊急度や重症度について説明しましたが、症状を含めてまずは子どもの全身の状態を観察することが大事です。

2.1 食べる、寝る、遊ぶ、出すができているか

「いつもと違う」と思った場合には、どういった症状があるか、全身の状態で違う点を観察していきましょう。まずはどういうことを観察するかというと、食べる、寝る、遊ぶ、おしっこや便などを出すことができているか、これらができていれば、緊急度・重症度はそれほど高くない状態なので、様子を見て受診するなど、ある程度時間の余裕が生まれます。こうした全身の観察ポイントを日頃からチェックする癖をつけておくといいでしょう。


また、子どもの「いつもと違う」に気づきやすくなるためには、見た目による第一印象をチェックする際に、機嫌や表情、活気、呼吸の回数や仕方、呼吸の音、顔色や皮膚の色、手足の温度などを普段と比べます。これは医療者であっても同じように観察するポイントで、とても大事なことです。

2.2 症状の変化を観察、記録し、伝える

いつもと違う気になる症状があった場合には、記録をしておくと受診時にスムーズで、医師の診察の判断材料となります。
たとえば、体温表、皮膚の発疹であれば写真を撮っておく、咳が続いて喘鳴があれば録音・動画で撮影しておくなどでもいいでしょう。こうした症状の観察、記録で状況がわかると治療が迅速かつ的確に行えるようになります。

2.3 救急相談窓口

いくつかの症状があって緊急度や重症度がわからない場合には、小児救急電話相談もあります。『#8000』と覚えておくだけでも、小児科医師や看護師が家庭での対処法や受診について相談対応してくれます。

また、子どものかかれる救急医療機関のシステム検索、小児の往診サービスなどを活用することも選択肢のひとつです。


ONLINE QQこどもの救急』(厚生労働省研究班/公益社団法人 日本小児科学会監修)では、症状別の対処方法なども紹介されています。



<編集部より>

お勤めの企業・健康保険組合や、生命保険などの付帯サービスなどで、保健師・看護師など専門のスタッフに相談できる『健康相談サービス』がご利用できる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。


2.4 受診時の持ち物

症状がひどくなってから受診すると、慌ててしまうため、最低限でも下記だけは事前にまとめておいて、すぐに持ち出せるようにしておくと便利です。

  • 健康保険証
  • 乳幼児・子ども医療証
  • 母子健康手帳
  • お薬手帳
  • 経過のわかる記録
  • 着替え・オムツ
  • 音の出ないおもちゃ、お気に入りのタオルなど
  • お金

3.“いつもと違う”子どものサインを大切に

“いつもと違う”子どものサインに気づくためには、普段の子どもの状態も把握しておくことが大切です。平熱は何度くらいで、おしっこや便はどのくらいのペースで出るのか、睡眠は何時間くらいなど、おおまかな周期・頻度を知っておきましょう。


また、いつもと違う、でも考えすぎかもしれない……と思ったときには、全身状態を見て、普段とは何が違うのか観察してみましょう。それにより早く症状や病気に気づいて治療に繋がることもあります。観察ポイントに気をつけながら、日頃から子どもの様子を観察していきましょう。



<編集部より>
お勤めの企業・健康保険組合や、生命保険などの付帯サービスなどで、保健師・看護師など専門のスタッフに相談できる『健康相談サービス』がご利用できる場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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≪執筆者プロフィール≫
ライター・白石弓夏(しらいしゆみか)
看護師兼ライター。15年以上看護師として病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟で勤務中。

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≪監修者プロフィール≫

細部小児科クリニック 院長 細部千晴

1987 年藤田医科大学卒業。名古屋市立大学病院、日本医科大学病院などを経て 2008 年独立開業。男の子2人の母親であり、孫も2人。自らの子育て、孫育て経験を活かし、地域の子育て支援やペリネイタルビジット(出産前出産後小児保健指導)をライフワークとして診療に携わっている。
近著『この1冊で安心 はじめての育児辞典』朝日新聞出版、『「どうする?」がわかる赤ちゃんと子どもの病気・ケガ ホームケアBOOK』ナツメ社

参考

※当記事は2023年7月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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