気になる症状と病気

春だけではない!?秋の花粉症の対処法

公開日:2023.08.14

一般的に2~4月の春先に多く症状があらわれる花粉症(主にスギ花粉)ですが、実は秋にも飛散する花粉があることをご存知でしょうか。秋はイネ科、キク科、アサ科の花粉による花粉症を発症することがあります。今回は、季節による花粉症の違いと、花粉の種類、症状や対処法などについてご紹介します。

1. 秋にもある花粉症

日本人の花粉症の多くはスギ花粉によるものであり、2~4月の春先に多く症状があらわれます。

しかし、花粉症のピークではないのにくしゃみや鼻水がとまらない時期があるように、秋に飛散する花粉により症状が引き起こされる人もいます。まずは花粉症の基本と秋の花粉症について解説します。

1.1 花粉症、季節性アレルギー性鼻炎とは

花粉症とは、鼻から侵入してきた花粉によって引き起こされる反応により、くしゃみや鼻水、鼻づまり、または目のかゆみなどの症状を起こす病気です。大きな枠組みではアレルギー性鼻炎のなかに含まれる病気です。

アレルギー性鼻炎のなかには、ハウスダストやダニなどが原因で起こる「通年性アレルギー性鼻炎」と、花粉が原因で起こる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」の2種類があります。全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査(※1)によると、2019年には花粉症の有病率が42.5%となっており、そのなかでもスギによる花粉症は38.8%と3人に1人はスギの花粉症だといわれています。

【出典】
※1:環境省「花粉症環境保健 マニュアル 2022(2022年3月改訂版)」

https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf

しかし、誰でも花粉症になるわけではありません。花粉が体内に入ってきても、すぐに花粉症の症状が出るわけではなく、アレルギーの素因を持っていない人は花粉症の症状があらわれません。

素因を持っている人は、数年から数十年かけて蓄積された抗体(抗原である花粉に対応するためのもの)が十分な量となり、アレルギー反応が起こります。そのため、前年までは花粉症ではなくても、今年から症状が出始めるということが起きるのです。

花粉症はくしゃみや鼻水など風邪の症状ともよく似ているため、数日経っても症状が治まらない、または外出中に症状がひどくなるなどの場合には、花粉症の可能性が高くなります。
ただし他にも慢性副鼻腔炎(蓄膿症)などの病気と間違えやすいこともあります。

1.2 秋に活発になる花粉とは

日本人の花粉症の原因となる花粉はスギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバが多いですが、これらはおもに2~4月の春先(シラカンバのみ4~6月に北海道・東北で飛散)にかけて全国的に多く飛散します。
一方、イネ科は春先から少し遅れた5~6月に飛散量が多く、8~10月も飛散することがわかっています。

キク科のブタクサ属やヨモギ属、アサ科のカナムグラは8~10月頃の夏の終わりから秋にかけて飛散しています。秋に花粉が飛散するイネ科やキク科、アサ科は、おもに関東や東北での飛散が多く、地域によっても飛散量には差があります。

1.3 春の花粉症との違い

日本でこれまでに報告された花粉症は50種類以上になりますが、春の花粉症との違いは花粉の粒子の大きさです。春の花粉は粒子が大きく、鼻や目に症状が出やすい一方で、秋の花粉は粒子が小さいため、のどや気管などに入り込んで症状を引き起こすものもあります。

2.  秋の花粉症の予防、対策

花粉症は自分でできる予防や対策も多くあります。まずは、アレルギーの原因となる花粉の回避と除去、それから、症状に合わせて薬物療法や手術療法などを選択していきます。

2.1 花粉の回避、除去

花粉症の予防はまずアレルゲンである花粉を吸わない、つけない、持ち込まないが鉄則です。マスクやメガネなどで防護する、服や髪についた花粉を落としてから部屋へ入るなど、生活面でできることがあります。
また、花粉が飛びやすいタイミング、エリアなど、出かける際には花粉症情報をチェックすることも大切です。

2.2 花粉症の受診目安

花粉症の症状の度合いは軽症から重症にいたるまで人それぞれです。少し鼻水が出る、鼻がムズムズする程度から、くしゃみがとまらない、鼻づまりで呼吸が苦しい、目のかゆみで充血がひどいなど症状もさまざまです。症状が軽症であっても仕事や生活に支障が出そうな場合には、早めの受診で対処することをおすすめします。

また、市販薬を使っても症状が改善しない場合なども受診をして詳しく検査をしたほうがいいでしょう。花粉症の薬は眠気が出やすいものもあり、眠気が出ると支障がでる仕事(運転、高所作業、精密作業など)には注意が必要です。妊娠中の女性は使える薬が限られているので、受診した上で使える薬を相談する方法もあります。

花粉症は耳鼻咽喉科、眼科、アレルギー科、地域によっては内科や小児科でも検査や治療ができます。

2.3 花粉症の治療

花粉症の治療は主に薬物療法で症状を改善する対症療法が多いです。
アレルギー性鼻炎に用いる薬には抗ヒスタミン薬、ステロイド薬をはじめとするアレルギー反応を抑える薬、または鼻づまりに効果がある薬などがあります。抗ヒスタミン薬は眠気が出るものもあるため、症状の具合や仕事、生活の状況などをみて調整していきます。薬には飲み薬の他に鼻噴霧(ふんむ)薬・点眼薬、注射、貼り薬などの種類があります。
そのほか、鼻粘膜への手術療法などもありますが、これらは根治治療ではなく、対症療法のひとつです。

唯一根治を見込める治療としては、舌下(ぜっか)免疫療法などで有名になった「アレルゲン免疫療法」と呼ばれるものがあります。これは花粉症の原因となる抗原エキスを舌の下から体内に入れていく方法で、2~3年にかけて長期の治療が必要です。花粉症の症状が強い人で通院が可能であれば、こうした治療も選択肢の1つとして考えてもいいでしょう。

3.  春だけではない、秋の花粉症にも注意

花粉症は春先だけに起こるものだというイメージが強いかもしれませんが、秋にも症状を引き起こす花粉があるため、注意が必要です。もし秋に鼻炎の症状がひどくなることがあれば、花粉症かどうかを調べてみることをおすすめします。


<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
ライター・白石弓夏(しらいしゆみか)
看護師兼ライター。15年以上看護師として病院やクリニック、施設等で勤務。2017年よりライターとして活動。現在は非常勤として整形外科病棟で勤務中。
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参考

※当記事は、2023年7月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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