気になる症状と病気

詳しく知りたい!女性のがん

公開日:2023.08.14

女性が特にかかりやすいがんに、乳がんや子宮がんなどの女性特有のがんが挙げられます。中でも乳がんは罹患者数が多く、年間で10万人(※1)近い人が発症している、女性には最も身近ながんです。 では、女性特有のがんにはどのような特徴があるのでしょうか。また発症した際はどのような症状が現れるのでしょう。がんは現在、日本人女性の2人に1人(※2)が発症する病気であり、いつ誰がかかってもおかしくありません。一緒に乳がん・子宮がん・卵巣がんの特徴や症状、罹患者数について確認していきましょう。

1. 女性特有のがんは大きく3種類ある

女性特有のがんとしては、乳がん・子宮がん・卵巣がんの大きく3種類が挙げられます。なお子宮がんは部位によって名称が異なり、子宮体部に発生するものを子宮体がん、子宮頸部に発生するものを子宮頸(けい)がんと呼びます。

では、女性特有のがんはどの程度発症しやすいのでしょうか。女性が罹患したがんの内訳に注目してみましょう。以下は、女性が罹患した上位5つのがんと、それぞれの罹患者数について、2019年のデータ(※3)を元にまとめたものです。

部位罹患者数
(2019年)
1位乳房97,142人
2位大腸67,753人
3位42,221人
4位38,994人
5位子宮 29,136人

上記の表から、女性特有のがんの中では、乳がんと子宮がんが発症する人が多い傾向にあることが分かります。また乳がんの罹患者数は上記の中でも特に多く、なんと年に10万人近い人が発症しています。

生存率を高めるには早期発見のうえ適切な治療を行うことが重要ですが、そのためには、それぞれのがんの症状について理解を深めておく必要があります。次の見出しからは、各がんの特徴や症状について詳しく見ていきましょう。



【出典】
※1、3:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2
※2:国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

2. 乳がんの特徴と傾向

前述の通り、乳がんの罹患者数は女性が罹患するがんの中で最も多く、他のがんよりも発症する確率が非常に高いです。まずは、乳がんの概要や特徴、罹患者数の傾向について紹介します。

2.1 乳がんの概要

乳がんとは、母乳をつくる組織である「乳腺」にできる悪性腫瘍です。ただ一口に「乳腺にできる」と言っても、その発生部位はケースによって異なります。

その理由は、乳腺は15から20の乳腺葉と呼ばれる部分に分けられているためです。以下の図(※4)を見ると分かるように、乳腺葉はさらに枝分かれし、「乳管」と「乳腺小葉」から構成されています。

乳房の図解

乳がんの90%は乳管に発生するものの、一部は乳腺小葉から発生することもあります。また場合によっては、乳腺以外の乳房の組織に発生します。

2.2 乳がんの症状

乳がんの症状は、広く知られている通り、乳房に硬いしこりができることが多いです。その他には、乳房にえくぼやただれができる、左右の乳房の形が非対称になる、乳頭から分泌物が出るなどの症状が見られます。

また症状が進むと、乳房や乳頭が変形することもあります。

2.3 乳がんの罹患者数

罹患者数
(2019年)
生涯罹患リスク何人に1人か
乳がん97,142人11.2%9人

2019年の乳がんの罹患者数は、97,142人でした。9人に1人が発症するがんと聞くと、一気に身近な存在に感じるのではないでしょうか。

乳がんは35〜39歳程度の年齢から徐々に発症する人が増加する傾向にあり、若い年代であっても発症するリスクは十分に存在します。

生存率は92.3%のため完治する可能性は高いものの、死亡率の低下のためには早期発見のうえ、適切な治療を行うことが重要です。

【出典】
※4:国立がん研究センターがん情報サービス「乳がんについて 図1 乳房の構造」
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/about.html

3. 子宮がんの特徴と傾向

子宮がんは、女性特有のがんの中では乳がんに次いで多いがんです。次に、子宮がん(子宮体がん・子宮頸がん)の概要や特徴、罹患者数の傾向について紹介します。

3.1 子宮がん(子宮体がん・子宮頸がん)の概要


先程も少し触れた通り、子宮がんは子宮体部にできる「子宮体がん」と、子宮頸部にできる「子宮頚(けい)がん」に分類されます。

ちなみに子宮体部とは、子宮の上部のこと。子宮頸部とは、子宮の下部であり膣に繋がっている部分を指します。詳しくは、以下の図(※5)を参考にしてください。

子宮の図解

なお子宮内部は子宮内膜で覆われており、子宮体がんは子宮内膜から発生します。そのため、子宮体がんを「子宮内膜がん」と呼ぶこともあります。

3.2 子宮がんの症状

子宮体がんで多く見られる症状が、出血です。月経以外の期間や閉経後に出血があり、がんの発見に至るケースがあります。また他にも、排尿時の痛みや下腹部の痛みが発生することもあります。

一方、子宮頸がんの場合は初期症状がほぼなく、進行すると子宮体がんと同様に不正出血や、においを伴うおりものが出るなどの症状が見られます。

3.3 子宮がんの罹患者数

罹患者数
(2019年)
生涯罹患リスク何人に1人か
子宮がん29,136人
体部:17,880人
頸部:10,879人
3.4%29人


2019年の子宮がんの罹患者数は、29,136人でした。そのうち子宮体がんの罹患者数は17,880人で、子宮頸がんの罹患者数は10,879人です。

子宮体がんは45〜49歳、子宮頸がんは35〜39歳あたりから発症する人が増える傾向にあり、どちらも乳がんと同様に比較的若い世代においても発症するリスクがあります。

中でも子宮頸がんは初期症状が出にくく、気がついたときにはがんが進行している可能性があります。不正出血などの気になる症状がある場合は、早めに婦人科を受診することが重要です。

3.4 子宮頸がんにはワクチンがある

子宮頸がんの発生には、多くの場合ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関与しています。HPVとは性交渉によって感染するウイルスで、基本的には免疫によって排除されますが、排除されず感染が続くと子宮頸がんが発生すると考えられています。

HPVの感染防止にはHPVワクチンがあり、小学校6年生〜高校1年生相当の女子を対象に定期接種として接種することができます(※注)。ただしワクチンで全てのHPV感染を防げる訳ではないため、ワクチン接種を受けた場合でも、定期的ながん検診を受けることが推奨されています。

(※注)…平成9年度~平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)の女性の中で、対象年齢の間に接種しなかった方については「キャッチアップ接種」として、あらためて、公費でのHPVワクチンの接種の機会が提供されています。


【出典】
※5:国立がん研究センターがん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)について 図1 子宮の構造と周囲の臓器」
https://ganjoho.jp/public/cancer/corpus_uteri/about.html

4. 卵巣がんの特徴

女性特有のがんには、その他に卵巣がんが挙げられます。最後に、卵巣がんの概要や特徴、罹患者数の傾向について紹介します。

4.1 卵巣がんの概要


卵巣がんは、その名の通り卵巣に発生するがんです。以下の図(※6)の通り、子宮の両脇にある楕円形の臓器が卵巣です。

子宮の図解

なお卵巣ではなく卵管にがんが発生した場合は、「卵管がん」と呼ばれます。

4.2 卵巣がんの症状


卵巣がんは初期段階では自覚症状がほぼなく、早期発見が難しいがんです。進行すると腹部の張りや頻尿、脚のむくみなどの症状が出ます。

そのほかにも服のウエストがきつくなる、食欲が無くなるなどの症状も見られ、症状が出たときにはかなり進行しているケースも多いです。

4.3 卵巣がんの罹患者数

罹患者数
(2019年)
生涯罹患リスク何人に1人か
卵巣がん13,388人1.6%62人

2019年の卵巣がんの罹患者数は13,388人でした。罹患者は45〜49歳あたりから増加傾向にあり、年齢が上がるに従って罹患者数が増える傾向にあります。

しかし若い世代だからといって発症しづらい訳ではなく、HBOC(遺伝性乳がん・卵巣がん症候群)という遺伝的に乳がんや卵巣がんにかかりやすい家系の方の場合は、若い世代でも発症するリスクが高くなります。

症状が出てからの発見は治療が困難になるケースも見られるため、定期的な検診による早期発見が重要です。


【出典】
※6:国立がん研究センターがん情報サービス「子宮体がん(子宮内膜がん)について 図1 子宮の構造と周囲の臓器」
https://ganjoho.jp/public/cancer/corpus_uteri/about.html

5. がんには遺伝因子と環境因子がある

「4.3卵巣がんの罹患者数」にて触れた通り、がんの発症には遺伝が関係している場合があります。両親や親戚など身内にがんになった人がいるため、「自分もがんを発症するのでは」と不安を感じている方もいるかもしれません。

がんの発生には、加齢や喫煙などの環境因子と、遺伝による遺伝因子が存在します。そもそも、がんは遺伝子が傷つくことによって起こる病気です。そのため、がんそのものが親から子どもへ伝わることはありません。

しかし全体の5〜10%の人は、生まれ持った体質(遺伝因子)ががんの発生に関与していることが分かっています。また多くの場合、がんの遺伝子変異は親から子へ50%の確率で伝わります。


例えば以下のようなケースでは、遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)の可能性が高いと考えられています。

  • 自分や、自分と血の繋がった家族や親戚が若くして(40歳未満)がんと診断された
  • 乳房や卵巣などペアになっている臓器が両方ともがんになった
  • 血の繋がった家族が遺伝性腫瘍と診断されている


なお遺伝性腫瘍の中でも、女性特有のがんとしては、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」が挙げられます。

遺伝子変異を持っているからといって必ずしもがんを発症する訳ではありませんが、「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」が強く疑われる家系の女性は、どちらかのがんを発症する可能性が非常に高いです。

生まれ持った遺伝子の変化を治すことはできないものの、がんは早期発見するほど治りやすい病気です。特定のがんになりやすいと分かった場合は、早期発見のため定期的な検診を受けると良いでしょう。

6.女性特有のがんは定期的な検診に行くことで早期発見できる(まとめ)


女性特有のがんには、主に乳がん・子宮がん・卵巣がんの3つのがんが挙げられます。最も罹患者数が多いがんは乳がんですが、乳がんの生存率は9割を超えているため、適切な治療を行えば完治する見込みが高いがんと言えます。

一方卵巣がんは初期症状が出づらく、症状が出た際にはかなり進行しており、治療が困難なケースも存在します。がんは部位に関わらず、早期発見がポイントとなります。定期的に検診に行き、早期発見に努めましょう。


<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
ライター・タケウチ ノゾミ
フリーライター・編集者。医療、介護、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。
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参考

※当記事は2023年6月時点で作成したものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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