気になる症状と病気

女性がかかりやすいがんのランキング

公開日:2023.08.03

現在、日本人女性の2人に1人はがんになるとされており、がんは日本人女性の死亡原因のトップとなっています。女性は特に乳がんや卵巣がんなどの女性特有のがんになりやすく、乳がんにいたっては年に10万人近い人が発症しており、女性の罹患者数が最も多いがんのランキング1位でもあります。しかし、乳がんをはじめとした女性特有のがんは、罹患者数が多い一方で5年生存率が高く、早期に適切な治療を行えば治る可能性が高いといえます。がんの早期発見のためには、女性がかかりやすいがんについて正しい知識を得ることが重要です。がんはいつ誰が発症してもおかしくないため、女性がかかりやすいがんの種類や、がんになりやすい年代について一緒に確認していきましょう。

1.女性は「女性特有のがん」になりやすい

「がん」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。ある程度年齢を重ねた人が発症する病気という印象があるかもしれませんが、実は、がんは性別や年代に関わらず発症する可能性がある、身近な病気です。


2022年の日本のがん罹患者数(予測)は102万人にものぼり、これは2022年10月1日時点の富山県の人口と同程度の数字です。また、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、2019年データによると男性が65.5%、女性が51.2%で、現代は2人に1人ががんになる時代といわれています。


では、女性はどのようながんを発症しやすいのでしょうか。先述の通り、女性は主に、「女性特有のがん」になりやすい傾向にあります。ここからは、女性特有のがんの種類と傾向について紹介していきます。

1.1 女性特有のがんの種類


女性特有のがんと聞いても、あまりピンとこない方もいるかもしれません。具体的には、おもに以下のようながんを指します。


<女性特有のがん>
・乳がん(まれに男性も罹患する)
・子宮頸がん
・子宮体がん
・卵巣がん


では、これらのがんはどれくらい発症しやすいのでしょうか。
以下は、女性の罹患者数上位5つのがんと、死亡者数が多い上位5つのがんについて、国立がん研究センターのデータ(※1)をもとにまとめたものです。

罹患者数
(2019年)
死亡者数
(2021年)
1位乳房大腸
2位大腸
3位膵臓
4位乳房
5位子宮
注)大腸を結腸と直腸に分けた場合、罹患者数の2位と死亡者数の3位は結腸。


この表の中で、女性特有のがんに注目してみましょう。
罹患者数が多かった上位5つのがんには、乳がんと子宮がんが含まれています。一方、死亡者数が多かったがんの中には、女性特有のがんは少ないものの、4位に乳がんがランクインしています。


上記の結果から、女性は特に乳がんや子宮がんになりやすく、その結果、乳がんによる死亡者数も多いことがわかります。どのがんになる可能性もありますが、女性はまず「女性特有のがん」に注意を払うべきといえるでしょう。


【出典】
※1:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2

※1:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1

2.女性の罹患者が多いがんのランキング

女性が発症しやすいがんには、他にどのようなものがあげられるのでしょうか。ここからは、女性の罹患者が多いがんの上位10位をランキング形式で紹介します。
以下は、女性が罹患したがんについて、2019年のデータ(※2)をもとにまとめたものです。

部位人数(人)
1位乳房97,142
2位大腸67,753
3位42,221
4位38,994
5位子宮29,136
6位膵臓21,579
7位子宮体部17,880
8位悪性リンパ腫17,325
9位甲状腺13,892
10位卵巣13,388
*上皮内がんは含まない。
注)大腸を直腸と結腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位。

上記の中で女性特有のがんは、「1位:乳房」「5位:子宮」「7位:子宮体部」「10位:卵巣」の4つです。それぞれの人数に注目すると、1位である乳がんの罹患者数は10万人近くで、がんの中でも飛び抜けて発症する人が多いことが分かります。


乳がんのピーク年齢は40代後半から50代にかけてですが、比較的若い世代でもかかりやすく、特に30代から増加傾向にあります。


なお、乳がんを始めとした女性特有のがんの概要については、「詳しく知りたい!女性のがん」にて詳しく解説しています。がんの特徴や症状について知りたい場合は、こちらの記事もご一読ください。


【出典】
※2:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2

3.女性ががんにかかりやすい年代

では、女性はおよそ何歳程度でがんを発症する人が多いのでしょうか。
以下は、厚生労働省が発表した、「性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合(令和4年(2022))」の女性の割合を示したものです(※3)。

グラフのうち、水色で塗られている部分が、死因が悪性新生物<腫瘍>(がん)の割合です。

性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合のグラフ


水色が山を描いていることからも分かるように、がんで死亡する人のピークは55歳から59歳程度となっています。


このように聞くと「まだ若いから大丈夫」と安心したくなるかもしれませんが、がんによる死亡者は30代から徐々に増加しています。若くてもがんで死亡するリスクがあることを知っておきましょう。


【出典】
※3:厚生労働省 「令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai22/dl/gaikyouR4.pdf

4.女性におけるがんの生存率

死亡者数と同様に気になるのが、生存率です。ここからは、「2. 女性の罹患者が多いがんの最新ランキング」にて取り上げた、上位10位のがんの生存率(※4)を紹介していきます。


なお、ここで紹介する生存率は、5年相対生存率と呼ばれるものです。
がんと診断された人のうち、5年後の生存率を表すもので、100%に近いほど治療によって生命を救えるがんであることを意味しています。

罹患者数部位生存率(5年相対)
1位乳房92.3%
2位大腸(結腸・直腸)70.1%
3位46.8%
4位64.6%
5位子宮78.7%
6位膵臓8.1%
7位子宮体部81.3%
8位悪性リンパ腫68.6%
9位甲状腺95.8%
10位卵巣60.0%
注)大腸を結腸と直腸に分ける場合、結腸69.4%、直腸71.9%

乳がんは罹患者数が最も多いがんですが、5年相対生存率は90%を超えています。また同様に、女性特有のがんである子宮がんと子宮体がんも80%近い生存率となっており、他のがんと比べると比較的生存率が高いといえます。卵巣がんは60%で、乳がんや子宮がんに比べると5年相対生存率が低い傾向にあります。


乳がんや子宮がんなどの女性特有のがんは、早期発見をすれば治る確率が大幅に上がります。国立がん研究センターの「院内がん登録生存率集計(2015年5年生存率)」(※5)によれば、病期Ⅰ期で早期発見できた場合の5年生存率は、乳がん95.2%、子宮体がん91.9%、子宮頸がん93.2%と、いずれも90%を超えています。


早期に発見のうえ、適切な治療を行えば治る可能性は十分にあるといえるでしょう。


【出典】
※4:全国がん罹患モニタリング集計 2009-2011年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター, 2020)
独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor3
※5:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」
https://hbcr-survival.ganjoho.jp/search

5.がんによる死亡を減らすには早期発見が重要

生涯のうち、日本人女性の2人に1人がかかると言われているがん。日本人女性の死因の第1位でもあり、年齢に関わらず、いつ誰が発症してもおかしくない病気です。
しかし、先述の通り、女性特有のがんは早期発見のうえ適切な治療を行えば、完治する確率が高くなります。


また、がん検診は、科学的な方法によりがん死亡率の減少が検証されています。厚生労働省の「がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針(令和3年一部改正)」では、胃がん・子宮頸がん・肺がん・乳がん・大腸がんの5つのがん検診が推奨されています。


これら5つのがんは特に発症する人が多く、死亡率も高いがんです。症状が出てから受診となった場合は、すでにがんが進行しており、治療が難しいケースもあります。症状がない段階から検診を受け、早期発見に努めましょう。


<編集部より>
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≪執筆者プロフィール≫
ライター:タケウチ ノゾミ
フリーライター・編集者。医療、介護、ビジネスを中心に幅広いジャンルの記事を執筆。
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参考

※本記事の情報は、2023年6月時点のものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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