健康のことや人生の不安について「誰かに話せること」が、子育て中のママの心を救ってくれる。よく言われていることですが、それが叶わない環境の人もいます。だからこそ、どこにいても、いつでも“話せる・相談できる場所”の必要性と、情報発信の充実が求められています。子育て、不妊治療、がん治療、不登校など、さまざまな経験を重ねてきた2児の母・日山尚子さん(以下、尚子さん)は電話健康相談というサービスに何度も助けられたと話します。しかし、「使いたくても使えなかった経験もあった」と本音を語ります。今回は、尚子さんの体験を通して見えてくる、いつでも、どこからでも“話せる・相談できる場所”の大切さについてご紹介します。
目次
不登校、ワンオペ、孤独な日々の中で健康相談サービスは「お守り」だった
尚子さんの長男は、小学1年生のときに不登校になりました。きっかけは、同級生とのちょっとしたトラブル。
当時、尚子さんは0歳の娘の育児中。夫の帰宅も遅く、ご自身の甲状腺乳頭がん手術後まもない時期にも関わらず、日中はほぼ一人で子どもたちの世話をしていたといいます。
『ワンオペどころか、バンオペ(ワンオペよりもさらに大変な、爆発寸前のワンオペ状態)でした。限界ギリギリの毎日で、自分の気持ちを話す相手もいなかった。』
そんなとき、思い出したのが保険の付帯サービスとして案内されていた24時間いつでも、医療や育児の悩みを専門家に相談できる「電話健康相談」でした。
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受診の目安になった電話健康相談、実際に使って救われた夜
ある夜、娘がソファーから落ちて頭をぶつけました。判断に迷い、深夜にもかかわらず電話健康相談を利用。専門の看護師が状況を丁寧に聞き、冷静にアドバイスしてくれたことで、不安がすっと和らぎました。
『 “大丈夫ですよ、こういう場合は…”って言われたとき、涙が出そうになりました。誰かと話せることが、こんなにも心強いなんて思わなかった』
別の日、息子が腹痛で苦しんだ深夜にも電話相談を利用。「病院に行くべきか、様子を見るべきか」を迷った中でのアドバイスが、大きな支えになったと話します。
どうしても「電話相談」が使えなかったケースも。隣にずっといる人が中心のメンタルの悩み
一方で、「本当に相談したいとき」に電話相談サービスを使えなかったことも。それは、不登校の息子についての相談でした。
『一緒に暮らしている人が悩みの中心だと、電話では話せないんです。不登校だったので四六時中一緒にいます。家の中で、たとえ寝ている夜だとしても、声を聞かれるかもと思うと、安心して相談できなくて…』
息子との接し方、自分のメンタルについてなど、相談したいことは山ほどありました。尚子さんは最近、チャットやメール相談サービスの存在を知り、「スマホから文字で相談できる方法を知っていたら絶対使っていたのに…」と後悔をにじませます。
この体験から見えてくるのは、相談の手段を知っておくことの大切さです。相談内容や家庭環境によっては、電話よりも文字でのやり取りが適している場合もあります。情報がきちんと届き、状況に応じて選べることが、支えにつながるのだと教えてくれました。
不妊治療の先に見つかった「甲状腺乳頭がん」。受け入れきれない思いを相談する先を“知らなかった”
「健康相談」というサービスの存在を知らなかったために、利用できなかったという情報不足の事例のケースも教えていただきました。
尚子さんは「甲状腺乳頭がん」のサバイバーです。がんが見つかったのは、実は第2子を希望して不妊治療を始めたことがきっかけでした。第1子のときにお世話になった産婦人科を再び訪れて妊娠の相談をした際、一通りの血液検査を受ける中で、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の値に異常が見つかりました。
『数値自体は基準値内だったのですが、少し高めで。紹介された大きな病院で再検査を受けたところ、“甲状腺機能低下症(橋本病)の予備軍”と初めて診断されました』
日常生活に支障はなかったため、小さな錠剤を服用してホルモンバランスを整えながら妊活を進めていたそうです。しかしその後、経過観察の中で異常が見つかり、「甲状腺乳頭がん」が判明。

『不妊治療が思うように進まない中で、まさか“がん”が見つかるなんて……。正直、心が追いつきませんでした。子どもが体調を崩したときには電話相談は利用していましたが、大人の健康相談もできるサービスであることは盲点でした。この時も、自分の相談もできることに気付いていたら、きっと利用したと思います。』
子育て中のママは、家族の健康には敏感でも、自分のことはつい後回しになってしまうと振り返っていました。

病気や困難を乗り越えても、心は回復しきれないことも。「将来の漠然とした不安、病院に行くほどではない体のこと」を、誰かに話せる場所がない現実
『病院で治療を終えて困難を乗り越えたからといって、気持ちや体がスパッと回復するわけではないんです』
そう語る尚子さんは、甲状腺乳頭がんの手術や不妊治療という経験を経て、こう続けます。
『どこかに“とげ”のようなものが残っていて、ふとした瞬間にチクリと痛む。それは“心の後遺症”なんだと思います』
たとえば、今でも普通に妊娠・出産した人の話を聞くと、心がざわつく瞬間があるといいます。
『正直に言えば、「私はつらい思いをしてきたのに、この人は普通に妊娠できたんだよな」って……ふっと思ってしまうこともあるんです。この気持ちの落としどころに悩まされます。』
それを口に出すこと、周りに伝えることは難しく、自分の中に確かに存在するその感情と、どう折り合いをつけていくかを日々、考えながら過ごしているそうです。
健康についても、年齢を重ねるごとに実感している体質のこともお話しいただきました。
『私の母は甲状腺機能亢進症(バセドウ病)でした。母方の祖母も、詳しくはわかりませんが、甲状腺の病気があったようです。そして私自身も、甲状腺乳頭がんに。やはり遺伝的な影響を感じています。また、私は上の子を妊娠したときも、今回も「妊娠糖尿病」と診断されました。祖母が糖尿病だったので、いまは「自分も気をつけなきゃ」と思っています。でも現時点では、特に症状があるわけではありません。』
尚子さんの話から見えてくるのは、「漠然とした将来の不安」の多くが、病院に行くほどではないけれど、気軽に誰かに話せる場所も少ないという現実です。だからこそ、電話健康相談のような“病院に行く前の段階”で頼れるサービスがあることを、もっと多くの女性に知ってほしいと感じます。

「健康相談」「ママさんコミュニティ」など。子育て中のママのこころとからだを本音で語れる場所をもっと周りに広めたい
尚子さんは、ペタペタアート講師として活動する中で、ママたちと出会い、少しずつ自分の気持ちも整理してきました。たくさんのママさんたちと出会い、悩みを聞く機会も多くあります。
『子どもの健康相談先は知っていても、ママ自身の心身相談ができる先は知らない人がほとんど。いまどうしようもなく不安な人は、健康相談でも、ママのコミュニティでもいいから声に出してほしい。“困難のあとの心の後遺症”や“漠然とした不安”を支えてくれる場所は、まだまだ社会に少ないと感じます。』
そんな想いを持ちながら、ゆくゆくはペタペタアートだけでなく、不登校を乗り越えたママコミュニティや不妊治療体験者のコミュニティも自ら作っていきたいと話していました。
今後の尚子さんの活動に注目です。


日山尚子(ひやま しょうこ)
https://lit.link/shokohiyama
40代の2児のママ。青森県出身。大学では保育と子ども家庭福祉を専門的に学び、接客業・司会業を経て出産。毎日奮闘するママたちが少しでも「ホッ」と息抜きできる時間を持てたら・・・そんな思いもあり、手形アートのインストラクターとして活動中。
記事:ティーペック株式会社広報・大井美深
※当記事は、2025年10月に作成されたものです。
※当記事内のインタビューは、2025年7月に行われたものです。
※当記事は個人の体験談に基づくものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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