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【一社AHMC】「健康相談サービス、次のステージへ」ティーペックの覚悟と挑戦(T-PEC鼠家社長インタビュー)
公開日:2025.09.11

2024年3月、健康医療相談事業を手掛けるティーペック株式会社とダイヤル・サービス株式会社、株式会社法研の3社が共同で「⼀般社団法⼈ 健康医療相談品質向上協会(AHMC)」を設⽴しました。AHMCは、健康医療相談業界の品質維持や信頼性向上を目指し、業界全体の発展に貢献することを目的としています。設立の背景や将来の展望について、発起人の一人であるティーペック株式会社の鼠家和彦社長にお話を伺いました。
目次

写真左:事務局長・絹山 誉紹(ティーペック株式会社)
品質管理の責任者としてティーペックに入社。2つの大きな改善でコンタクトセンターの仕組みを確立

私は2010年にティーペックに入社し、コンタクトセンターの品質管理を任されました。当時の業務体制を見直し、大きく2つの改善を行いました。
1つ目は、有資格のカウンセラーが電話対応していた初期業務をオペレーターに切り替えたことです。
以前はすべての電話に、まずは有資格のカウンセラーが対応していたのですが、それをオペレーターが対応をする形に変更しました。相談前の事務的な情報の確認はオペレーターが行い、医療的な内容相談のみ看護師や心理カウンセラーをはじめとする医療の有資格者が対応するようにしたのです。その結果、1年間で相当な効率化が実現できました。
2つ目は、お客様に許可を得た上で相談内容を録音し、チームで聞き直して改善を検討する仕組みを導入したことです。
接遇および医療の観点で改善箇所を検討するプロセスです。管轄のオペレーターのチームで導入して、接遇が目に見えて改善したことから、看護師や心理カウンセラーなど医療の専門職で導入を開始しました。現在ではこの仕組みがすっかり定着し、PDCAをしっかり回せています。
健康医療相談がインフラとして成長していくために、ずっと作りたかった「品質を守るための業界団体」

健康医療相談の品質管理について、たとえばティーペックではお客様の評価やネット・プロモーター・スコアの導入のほか、さまざまな指標を出していますが、他社については、どのように運営されているのか詳細は分かりません。競合他社が増えて、業界が大きくなるのは良いのですが、その品質については正直不安を感じていました。
「チャンスがあったら業界団体を作って、品質に関するルールを決めていかなければ」と動き始めた頃、新型コロナウイルスのパンデミックが起こりました。健康医療相談の存在や重要性を広く認識してもらうきっかけになりましたが、注目を集める中で「万が一、重大な苦情・クレームなどが発生すれば業界全体の信頼を損なう、対策を急がなくては」という危機感も抱きました。
また、「業界として発言力を持つ」必要性も感じていました。
たとえば厚生労働省の助成事業「#8000(子ども医療電話相談事業)」。これは、保護者が休日・夜間の子どもの症状にどのように対処したら良いのか判断に迷った時に、小児科の医師や看護師に電話で相談できるというものです。47都道府県に相談窓口が設置され、外部委託されている場合はその対応者は主には一般入札で決められています。
近年、この価格が安くなっている傾向があります。低価格競争になると、確かな品質のサービスを提供している対応者ほど参加が難しくなり、今後うまく健康医療相談が社会で機能しなくなることも考えられます。これは本末転倒です。
#8000のような素晴らしい事業は、世の中におけるインフラとして守られ、成長していくべきで、この状況をなんとかせねばと思ったのです。
たとえば、1つの会社が「#8000は安すぎます。プロポーザル(企画提案)入札に変えてください」と言っても1社だけでは相手にしてはもらえないでしょう。そのため、業界として基準を定めて、サービスの価値を維持するための適正な価格を提案していく必要があります。そこで、業界団体を作り、発言していくべきだと判断しました。
業界団体を作って価格を釣り上げようということではなく、専門職による質の高いサービスを前提とした公正な競争の中で形成される「適正価格」を目指しています。
私たちの業界のミッションの一つに「医療費抑制」があります。不必要な受診を減らし、国民の皆さんの健康を守る役割を果たす「健康医療相談」というインフラを、正しく成長させるための一歩なのです。
競合2社と話し合い賛同を得て設立。ガイドライン作成や認定資格制度で業界の品質向上を目指す
2020年11月にティーペックの社長になり、もうこのタイミングしかないと思い、業界の老舗である株式会社法研とダイヤル・サービス株式会社の2社に声がけをしました。
両社、業界の競合相手ですから、初めは正直戸惑いもあったはずです。
しかし、想いを伝えると「⿏家さんの言っていることはよく分かるし、素晴らしい動きなので賛同する」と言ってくださいました。
その後、3社で「⼀般社団法⼈ 健康医療相談品質向上協会(AHMC)」設立の運びとなったのでした。2025年6月には第1回意見交換会も開催しました。
<参考>
<AHMC第1回意見交換会レポート>「子どもを育てるインフラに」#8000の知られざる可能性と健康医療相談のこれから

現在、協会としては第一歩であるガイドラインを制定しました。品質向上については、協会が推奨する研修などをカウンセラーに受けてもらい、認定資格制度を導入していくことなどを検討していきます。「認定資格を持っているカウンセラーが何人いるのか」を入札の条件にしてもらえれば、業界全体の明確な品質のボトムアップにつながるでしょう。
協会から積極的な情報配信。看護師の働き方革命にも寄与

また協会として業界の発信を積極的に行い、もっと世の中に健康医療相談のことを知ってもらうことも大切だと思っています。
たとえば採用。看護師資格が活かせる仕事として、健康医療相談はまだあまり認知してもらえていないのですが、実はとても働きやすい職場です。お子さんが小さいと夜勤は難しいし、医療現場ではどうしても働きにくいのが現状です。これは一例ですが、子育て中は健康医療相談の仕事についてもらい、一段落したら医療機関に戻ってもらうという流れがあっても良いのかもしれません。
さらに未来を見据えれば、健康医療相談を電話だけでは行わなくなる時代がやってきます。セキュリテイ強化も更に必要になるでしょう。そうした際に必要となるシステムなども協会で開発し、加入している企業であれば自由に使えるという形にするということも考えられます。これまで1社では対応が難しかったさまざまな課題について、協会を通じて解決を目指していきます。
(取材・写真撮影)医療ライター・瀬田尚子
(編集)ティーペック(株)広報担当・大井美深
※当記事は、2025年9月に作成されたものです。
※当記事内のインタビューは、2025年8月に行われたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。
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