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子宮頸がん体験×幸せを追求する生き方──NPO法人Smile Station善本考香<NAプロジェクトインタビュー>

公開日:2025.10.10

取材と執筆を藤森が担当している、『ステキ女性の人生から学ぶ!からだのこと』。今回はNPO法人Smile Station代表 善本考香(よしもと としか)さんです。考香さんは2011年の8月に子宮頸がんの告知を受け、5度の再発転移をした経験からご自身で情報を発信し、そこからNPO法人Smile Stationを立ち上げて活動しています。また、文部科学省が取り組む「がん教育推進」のため、日本中の学校へ行き、中学生へお話をされています。長く活動されている中で見える“悩みと課題”をお聞きしました。

活動の「きっかけ」はコミュニティ作りから。もっと正しい知識を伝えていかなきゃ!

善本考香オフィシャルブログ「麗しく生きる 子宮頸がん生存率0%から」
善本考香オフィシャルブログ「麗しく生きる 子宮頸がん生存率0%から」Powered by Ameba

当時は今よりもっと情報が少なく、特に子宮頸がんは知られていなかったため、間違った認識で判断されることがあり、傷つくこともたくさんありました。性交渉の経験があれば誰でもなる可能性があるのに、「性交渉による感染」という部分だけで誤解され、偏見を持たれて泣いている患者さんは少なくありません。

まだ治療は続いていましたが、同じ病気の患者さんたちと自然と「LINEグループ」でコミュニティを作り、話をするようになっていきました。

術式や治療方法はステージにもよりますが、子宮や卵巣を失ったり、子どもが産めない現実を受け入れて治療をし、苦しんでいても相談できる相手がいない…だから、私たちはグループ内でお互いを励まし合っていました。悩みやつらい状況を吐き出す中で「これは、もっと広がった方がいいのでは?」と思い任意団体から活動を始めて、NPOを設立しました。

善本考香さんオフィシャルブログ記事の画像
病気発覚まで~子宮頸がん告知(ブログ記事)
https://ameblo.jp/sight-love-ove/entry-12773228424.html

関連記事:詳しく知りたい!女性のがん


―――その頃と今では「子宮頸がん」の認識は変わりましたか?

正直、今でも正しい知識が伝わっていない場合、“偏見”はあります。「性交渉が多い人がなるのでは」とか「性病のようなものだろう」とか…そういう部分で、自分が子宮頸がんになったことを周りに言えない女性も多いです。

実は私、医療従事者の人にも「(子宮頸がんになったのは)性交渉した人数が多いんじゃないの?」と言われたことがあります。それだけ日本は子宮頸がんの知識が広がっていない。だから、もっと伝えていかなきゃ!と思いました。

そもそも、子宮頸がんは女性だけでなる病気ではありません。それなのに男性側が、そうした知識を得る機会がほとんどない。もし、大切な彼女や妻、パートナーが「子宮頸がんになる原因」が自分にもあると知ったら【女性の体について一緒に考えてくれる男性】も、いると思います。

悲しいのは、正しい知識がないのに「子宮頸がんになるのは“女性が悪い”」という考えを持つ方が、未だにいることです。

SNSやメディアなどでも積極的な情報配信をしている

体の問題を話すことはタブーなの?学ぶことは守ること。

大人になると自分の基準で考えが固まってしまい、知らないことに対してどうしても偏見を持ったりします。それは私たちの親世代まで「体の問題を話すことはタブー」だったからです。

でも、男女の体のつくりは違うし、お互い「どんな悩みがあるのか」分からないですよね。だから、今の子どもたちの性教育は男女一緒に「自分の体を守る授業」であってほしい。大切な体の仕組みを学んで、愛する人を守るということを考える、命の授業をしてほしいと思っています。

「がん教育」の授業で中学生に子宮頸がんについてお話をしますが、彼らには偏見がないため真剣にちゃんと聞いてくれます。ヒトパピローマウイルスが、女性の子宮頸がんだけでなく、男性の特定のがんを誘発するリスクもあることを話すと「僕たち男にも関係があるの?」と驚き、病気について更に考えてくれます。

インターネットで性の情報があふれる中、体を守るための知識、大切な人を守るための知識は早くから知っておいた方がいい。病気になるということは、健康な体、大切な時間、そしてお金…多くの物を失うということを知り、予防してほしいと思ってお話ししています。

中学校講演「愛すること~癌が教えてくれた私の愛し方」
中学校講演「愛すること~癌が教えてくれた私の愛し方」

関連記事:男性も感染するヒトパピローマウイルス(HPV)とは

“失う”ということ。【みんなにあるはずのもの】を失うというのは、とても辛い

病気から快復した人に「…でも、命が助かったから良いじゃない!」という励まし方をする人もいますが、【みんなにあるはずのもの】を失うというのは、とても辛いことです。特に、女性を象徴する子宮、卵巣、胸…といったものは見えない部分であっても悲しく、個人差はありますが、手術や治療による後遺症、再発の恐怖と一生、向き合っていかなくてはなりません。

閉経間際に、女性は更年期症状になりますが、手術で全摘出をした途端、私の体には更年期に起きるあらゆる症状が始まりました。当然、生理もないため、周りの女性たちが「生理がつらい」と話していることでさえ、羨ましく思ったりしました。

病気になるリスクは、誰にでもあるからこそ、もし失うことがあっても最小限にしてほしい。【みんなにあるはずのもの】が“ない”ということを私は治療をして諦めていても、やはり心の中にハンディキャップとして抱えて生きています。

こうした気持ちは、失った当事者でないと分からないことですし、私が伝えたいと思っていることの1つです。

また、がんの治療をする皆さんと接する上で、妊孕性(にんようせい)について向き合うことが多々あります。妊孕性とは、妊娠するための力のことです。近年では「卵子凍結」が話題になり、国の助成があるなら…と、卵子凍結を希望する女性も増えていますが、妊娠、出産というのは、みんなが同じように、いつでもできるものではありません。

いろいろなことが簡単にできる時代になりましたが、私たち人間の体は未知であり、新しい命は「奇跡」が重なって産まれてくるものです。卵子凍結の知識、子宮の健康の知識、子どもを育てる年齢…など、赤ちゃんを望む女性には、早い段階で伝えたいことがたくさんありますね。

関連記事:将来の妊娠出産のために今からできることは?~今注目の「プレコンセプションケア」で未来のための健康管理~【専門家インタビュー】

幸せは人と比べるものではない。あなた自身が幸せと思うことを追求するべき

ブログより日常のひとコマ
ブログより日常のひとコマ

―――婦人科系のがんで治療した患者さんの中には「私はもう、女性として見てもらえないんじゃないか」という不安を抱える人が多くいますが、善本さんはそうした思いはありましたか?

もちろん、色々な葛藤はありました。けれど、自分の人生について深く考えることができました。【自分のことを愛す】って人生での基本ですが、たとえ病気をせず健康であっても、それができていない人って意外と多いです。

“誰かに愛されること”の前に、自分のことが分かっていなかったら、恋愛をしても良い関係なんて作れないでしょう?色々な生き方や価値観をお互いに認める“多様性”の時代になったのに、どうしても結婚、妊娠、出産、家族…という、“普通”と呼ばれるものに、まだ縛られてしまう人も多いですよね。

でも、それがあれば「あなた自身」は本当に幸せになれるんでしょうか?うるさい周りの意見ではなく、あなた自身が幸せと思うことを追求するべきです。

病気になったことで、今までの人生とこれから(どう生きていきたいか)を見つめ直す経験をしている方が、私の周りには多くいます。自分を愛し、自分の心と体の健康を大切にしていたら、そういうことに共感するパートナーと巡り合えるかも知れませんし、お友達と人生を楽しむのでも幸せじゃないかと思います。

人間は欲がエネルギーになる。愛情への“欲”は、大きな原動力

子宮頸がんだけでなく、女性はPMSや生理周期でのメンタルの不調など、体と心でトラブルを抱えている人は少なくありません。パートナーとのスキンシップに関して「言い出しにくい…」というご相談もありますが「相手に言わなくてどうする!」と、皆さんにいつも言っています。笑

会話でもそうですが、お互いが「してほしいこと」を伝え、それをして貰えることで人間は心が満たされます。好きな人が喜んでくれたら嬉しいですよね?愛情への“欲”は、大きな原動力になります。

それは自分だけの欲ではなく、お互いのコミュニケーション【愛情表現】であり、それを話し合うことが重要。
だから、相手を探す前に「自分はどういう人間なのか、何が幸せなのか」をまず知ることが必要なんです。

関連記事:PMSによる生理前のイライラ|症状を抑える方法や対策【医師監修】



―――今後の活動について教えてください。

「自分を大切にする」という意味が漠然としているため、体を守る術を知らない子どもたちが大人になる前に、愛とは何かを教育現場で話してほしいと強く思っています。

相手に言われて嫌な行為は我慢しなくていいし、相手に言葉で伝えるべきです。傷つく女性が増えないように活動していきます。

“T-PEC子宮頸がんNAプロジェクト”とは?
ティーペックとNPO法人C-ribbons(代表:藤森香衣)は2021年より、「病気になっても一人で悩まない(Not alone)」をテーマとして、子宮頸がんの早期発見を目指す「T-PEC子宮頸がんNAプロジェクト」を始めました。子宮頸がんの疑問・不安、もし見つかった場合もサポート先の知識や情報を届ける活動です。

その取り組みの1つが「ステキ女性の人生から学ぶ!からだのこと」です。各分野で活躍する女性に、人生談、自分らしく生きるための秘訣、そして健康のことを、C-ribbons代表でモデルの藤森香衣さんがインタビューします。様々な女性の生き方・考え方に触れ、自分の心身の状態を見直す機会にしていただくことで、健診・検診の重要さを伝えていきます。

NPO法人Smile Station代表

善本 考香(よしもと としか)

日本医療コーディネーター協会パートナー
1971年山口県岩国市出身
オフィシャルブログ https://ameblo.jp/sight-love-ove/

2011年41歳の時に子宮頸がん(1b2期)と宣告される。シングルマザーで娘との生活の中でのがん告知を、小学生だった娘に隠すことなく二人で泣き崩れながらも強く生きる決心をする。
子宮卵巣付属リンパ節摘出後に、リンパ節転移が見つかり抗がん剤治療を受けることなる。しかし、抗がん剤治療後に転移。放射線(+抗がん剤)にて治療を受ける。
2012年、がんの勢いは止まることなく、両肺含む多発リンパ節に転移をし、地元での治療ではなく東京での治療を望み上京する。手術・抗がん剤・動注化学療法・重粒子線治療などを経て、生存率9%余命3ヶ月のがんに打ち勝つ。

2016年、著書『このまま死んでる場合じゃない』(講談社)を共著で出版、『NPO法人Smile Girls』発足
2018年、『ガンでは死ねない』(オンデマンド)出版
2021年、キャンサー・バリュー株式会社設立

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■取材・文/藤森香衣
モデル活動、NPO法人 C-ribbonsを設立、代表理事を務める。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトで企画・取材・執筆を担当。

■取材・編集/大井美深
ティーペック株式会社の広報担当。T-PEC子宮頸がんNAプロジェクトを担当。

※当記事は、2023年12月に作成されたものです。(2025年8月加筆修正)
※当記事内のインタビューは、2023年10月に行われたものです。
※当記事は個人の体験談に基づくものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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