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うつ病でも障害年金を受けられる?障害年金を受けるには?【制度解説】

公開日:2024.07.31

年金というと、老後の生活を支える「老齢年金」を想像するかもしれませんが、不慮のけがや病気などで障害が生じたときには、「障害年金」を受けることができます。障害年金は、精神障害等の場合も支給の対象になります。

1.障害年金とは?

障害年金は、病気やけがが原因で障害の状態になったときに支給される年金です。

障害年金には、国民年金に加入している人が受ける「障害基礎年金」と厚生年金保険に加入している人が受ける「障害厚生年金」があります。自営業者などの国民年金だけに加入している人には障害基礎年金が支給され、民間企業で働いている人や公務員などの厚生年金保険に加入している人には障害基礎年金と障害厚生年金が併せて支給されます。


障害年金には1級から3級までの等級があり、障害基礎年金には1級と2級の2つの等級、障害厚生年金には1級、2級、3級の3つの等級があります。これらの等級は障害の程度により定められていて、1級が最も重い障害の状態となっています。

これらの障害等級は、いわゆる身体障害者手帳の等級とは異なり、国民年金・厚生年金保険の年金制度において独自に定められています。それぞれの障害の状態は、おおよそ次のようなものです。


○1級の障害:日常生活において他人の介助を受けなければほとんど自分の用を足すことができない程度のもの。

○2級の障害:必ずしも他人の助けを借りる必要はないけれど日常生活はきわめて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの。

○3級の障害:労働が著しい制限を受けるか、労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。


なお、厚生年金保険では、3級よりもさらに軽い障害の状態の場合、「障害手当金」という一時金が支給されることになっています。

2.障害年金を受けられるのはどんな人?

障害年金を受けられるのは、障害年金を受けるための要件を満たした人となります。

まず、障害基礎年金の場合は、次の3つの要件を満たした人が受けられます。

(1)その病気やけがではじめて医師や歯科医師の診療を受けた日(初診日)に国民年金に加入している人(被保険者)、20歳前の人、または加入していた人で日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満の人

(2)初診日から数えて1年6か月を経過した日またはこの期間内に病気やけがが治った場合は治った日(障害認定日)に1級または2級の障害の状態にあること

(「病気やけがが治った」というのは、その症状が固定してこれ以上治療の効果が期待できない状態になった日を含みます。)

(3)初診日のある月の2か月前までの国民年金の加入期間(被保険者期間)に保険料の滞納(未納)が3分の1以上ないこと、または初診日に65歳未満であれば、初診日のある月の2か月前までの1年間に保険料の滞納(未納)がないこと(初診日が令和8年4月1日前の場合の特例)


一方、障害厚生年金の場合は、初診日に厚生年金保険に加入している(被保険者)ことが必要で、障害基礎年金の(2)から(3)までの要件を満たしている人に支給されます。ただし、障害厚生年金の場合には、障害等級は3級までとなります。

なお、厚生年金保険の加入期間(被保険者期間)は、国民年金の保険料を納付した期間とみなされますので、国民年金の保険料を滞納し続けていた人が厚生年金保険に加入してすぐに病気やけがをしたような場合を除いて、ほとんどの人が(3)の保険料の納付要件を満たすことになります。

3.「うつ病」のような精神の障害でも障害年金は受けられる?

障害基礎年金・障害厚生年金は、身体のさまざまな部位における障害に対応できるしくみになっており、精神の障害も例外ではありません。


精神の障害は、厚生労働省が作成した『障害認定基準』によると、「A統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」、「B症状性を含む器質性精神障害」、「Cてんかん」、「D知的障害」、「E発達障害」(※1)に区分されて認定されます。

いわゆる「うつ病」の場合には、これらのうち「A統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」の「気分(感情)障害」に該当するものといえます。「気分(感情)障害」は、一般に、症状が明らかな時期と症状が消失する時期とを繰り返すことが多く、現在の症状のみによって認定することは不十分であり、症状の経過およびそれによる日常生活活動等の状態を十分に考慮して認定する必要があるとされています。


精神の障害の場合は、その原因、症状、治療と病状の経過、そして具体的な日常生活状況などによって総合的に認定されます。そのため、厚生労働省が作成した『精神の障害に係る等級判定ガイドライン』でも、現在の病状または状態像、療養状況、生活環境、就労状況、その他(日常生活能力)を考慮して総合的に評価すべきであるとされています。


特に、「うつ病」のような「気分(感情)障害」の場合には、「現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)及びそれによる日常生活活動等の状態や予後の見通しを考慮する」(※2)ものとされています。

そして、「適切な治療を行っても症状が改善せずに、重篤なそうやうつの症状が長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する」(※3)こととされています。


(※1)【出典】厚生労働省 「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 令和4年4月1日改正」より引用

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/01.pdf

(※2)(※3)【出典】厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」より引用

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12512000-Nenkinkyoku-Jigyoukanrika/0000130045.pdf

4.障害年金の額はどれくらい?(金額は令和6年度の額)

障害基礎年金の額は次のようになります。なお、年金額は、昭和31年4月2日以降生まれの人と昭和31年4月1日以前生まれの人とで異なります。1級の障害基礎年金は2級の障害基礎年金の1.25倍の額となります。


○2級の障害基礎年金

昭和31年4月2日以降生まれの人:816,000円(月額68,000円)

昭和31年4月1日以前生まれの人:813,700円(月額67,808円)

○1級の障害基礎年金

昭和31年4月2日以降生まれの人:1,020,000円(月額85,000円)

昭和31年4月1日以前生まれの人:1,017,125円(月額84,760円)


また、障害基礎年金の場合には、障害基礎年金を受ける人に生計を支えられている子がいるときには子に対する加算額が支給されます。子に対する加算額は次のとおりです。


○1人目・2人目の子:1人につき234,800円(月額19,566円)

○3人目以降の子:1人につき78,300円(月額6,525円)


一方、障害厚生年金の額は、報酬比例の年金額となります。この報酬比例の年金額は、平成15年3月以前の期間と平成15年4月以後の期間とに分けて計算し、計算式は次のようになります。(1級の障害厚生年金は、この計算式で計算した額の1.25倍の額となります。)


平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月以前の被保険者期間の月数

+平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数


1級および2級の障害厚生年金には、この報酬比例の年金額に障害基礎年金が加算されます。

また、1級および2級の障害厚生年金には、障害厚生年金を受ける人に生活を支えられている配偶者がいれば、配偶者加給年金額として234,800円(月額19,566円)が支給されます。

3級の障害厚生年金は、この報酬比例の年金額だけとなり、障害基礎年金は支給されません。そして、障害厚生年金には最低保障があります。最低保障額は次のとおりです。


○昭和31年4月2日以後生まれの人:612,000円(月額51,000円)、昭和31年4月1日以前生まれの人:610,300円(月額50,858円)


なお、3級よりもさらに軽い障害の状態の人に支給される障害手当金の額は、上の報酬比例の年金額の計算式で計算した額を2倍した額となり、昭和31年4月2日以後生まれの人には1,224,000円、昭和31年4月1日以前生まれの人には1,220,600円の最低保障が設けられています。

5.障害年金の請求方法

障害基礎年金を請求する場合は、「年金請求書」をはじめ、障害の部位に応じた「診断書」、「受診状況等証明書」、「病歴・就労状況等申立書」などを提出しなければなりません。

「年金請求書」は、障害基礎年金の場合には「年金請求書(国民年金障害基礎年金)」、障害厚生年金の場合には「年金請求書(国民年金・厚生年金保険障害給付)」という名称になります。「診断書」、「受診状況等証明書」、「病歴・就労状況等申立書」などは、障害基礎年金および障害厚生年金のいずれの場合も共通です。


これらの書類は、日本年金機構のホームページからダウンロードして入手することができますが、住所地の市区町村役場、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターにも備え付けてあります。

書類の提出先は、障害基礎年金の場合には住所地の市区町村役場の窓口となります。なお、国民年金の第3号被保険者期間中に初診日があった場合は、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。

また、障害厚生年金の場合には、最寄りの年金事務所または街角の年金相談センターに提出します。


■日本年金機構 全国の相談・手続き窓口

https://www.nenkin.go.jp/section/soudan/index.html


原稿・社会保険研究所Copyright


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参考

※当記事は、2024年7月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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