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ご存じですか?産後パパ育休~男性が利用しやすい7つの理由~【制度解説】

公開日:2024.06.20

令和4年10月から、産後パパ育休(出生時育児休業)という育児休業が利用できるようになっています。法律上の制度ですので、「うちの会社にそんな制度はない」という人でも、一定の除外要件(*1)に該当しない限り、会社に請求することができます。

産後パパ育休とは?

「産後パパ育休」という通称どおり、男性(父)を主な対象(*2)に柔軟で取りやすい育児休業として設けられました。どう取りやすいのかというと、次の7つの理由が挙げられます。

1.期間が最大4週間(28日)と限定されている
2.休業を取りやすい時期に取得できる
3.期間中に就業することもできる
4.2回まで分割して取得することもできる
5.産後パパ育休を取得しても、育児休業の権利は残る
6.雇用保険の給付対象になり、社会保険料の免除対象にもなる
7.令和7年4月から給付率が「手取り10割」になる【予定】
(*1)産後パパ育休の申出日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(いずれも労使協定が締結されている場合に限る)などが該当します。
(*2)養子縁組の場合は、養父母ともに取得することができます。

ここからは、上記7つの理由それぞれについて詳しく解説していきます。

期間が最大4週間(28日)と限定されている

育児休業は、原則として子が1歳になるまで、本人が希望する期間に取得することができる制度です。最大で1年間取得できる上、女性の取得期間は9割以上が6か月以上である(*3)ため、「とりあえず1週間だけ」「10日間だけ」などと短期間の取得を希望していたとしても、なかなか会社に言い出しづらいという男性は、多かったのではないでしょうか。


また、会社は、従業員が育児休業を取得するとなれば、期間の長短にかかわらず、所定の手続きをすることになり、休業期間中の業務の調整なども必要です。

長期間の休業であれば、会社としても代替要員の確保を検討する必要が生じますが、1週間や10日間程度の休業では、おそらく同僚が業務をカバーすることになるでしょう。

1週間取得するために会社や同僚にそんな負担をさせるのは申し訳ない、あるいはそんな申出がしにくい雰囲気を感じて、短期間の育児休業の取得をためらった、という男性もいるかもしれません。


その点、産後パパ育休は最大でも4週間(28日)しか取れない、短期間の取得が前提の育児休業です。1週間や2週間程度の取得が制度上当然のしくみであり、短期間の取得を望んでいる方にとっては、育児休業よりも申出がしやすい制度です。


なお、産後パパ育休を取得できる対象期間は、「子の出生後8週間以内」です。

出産予定日前に子が生まれた場合は、出生日から出産予定日の8週間後まで、出産予定日後に子が生まれた場合は、出産予定日から出生日の8週間後までの期間が対象です。


この出生後8週間以内の期間は、女性の産後休業期間に当たります。産後の妻が入院している期間や退院時、里帰りしている場合は自宅に戻ってくる頃の時期であり、厚生労働省の調査(*4)によると、男性が育児休業を取得するニーズが高い時期と重なっています。


(*3)厚生労働省「女性活躍および仕事と育児の両立支援について」令和5年6月27日

(*4)厚生労働省「令和2年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査 結果の概要」

休業を取りやすい時期に取得できる

育児休業を取得するには、原則として休業開始の1か月前までに、会社に書面で希望する休業開始日と休業終了日などの申出を行う必要があります。

そこから休業開始までの1か月の間に、業務の引き継ぎや調整などを行っていくのが一般的ですが、短期間の取得であれば、できるだけ仕事に影響が少ない時期を選んで育児休業を取得したいと考える方もいるのではないでしょうか。


産後パパ育休は、会社への申出期限が休業開始の原則2週間前(*5)までとなっており、現行の育児休業よりも休業開始予定日の直前まで申出を待つことができます。1か月前より、2週間前のほうが、その後の予定が明確になっていると思われますので、より都合がいい時期を選んで育児休業を取得しやすくなっています。

(*5)育児休業の申出が円滑に行われるような雇用環境の整備を行い、労使協定を締結した会社は、申出期限を2週間超から1か月以内の期日で定めることができます。事前に会社に確認しておきましょう。


もちろん、家庭の事情を優先して希望する日に育児休業を取得することは労働者の権利ですので、仕事の都合を優先させる必要はないのですが、休業する期間に調整の余地があり、仕事の都合をある程度優先させたいという男性にとって、産後パパ育休は仕事と育児とのバランスを図りながら、計画的に育児休業を取得しやすい仕組みだといえます。

期間中に就業することもできる

育児休業は、法律上は「子の養育を行うために、休業期間中の労務提供義務を消滅させる制度」であり、会社が育児休業期間中の従業員を就業させることは原則できません。予期せぬトラブルや需要の急増など、一時的・臨時的な事情があり、従業員の合意があれば、子の養育をする必要がない期間に限り就業させることができますが、あくまで例外的な取り扱いとされています。


ただ、厚生労働省の調査(*6)によると、男性(正社員)が育児休業を利用しなかった理由として、

「収入を減らしたくなかったから」(39.9%)

「自分にしかできない仕事や担当している仕事があったから」(22.0%)

「残業が多い等、業務が繁忙であったから」(21.9%)

など、収入面や仕事との調整の難しさを理由に挙げる人は少なくありません。

(*6)厚生労働省「令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 労働者調査 結果の概要」


仕事との調整等が理由で育児休業を取得することができないなら、一定の要件の下、休業期間中に就業することを認めることで、取得しやすくすべきではないか。

このような課題を踏まえて創設された産後パパ育休は、期間中に就業する日をあらかじめ定めて、就業することが可能な制度になっています。

とはいえ、産後パパ育休も「子の養育を行うための休業」であることは育児休業と変わりませんので、期間中の就業にはいくつかの要件や留意すべき点があります。

●期間中に就業するには、会社があらかじめ労使協定を締結しておくことが必要
●就業日数には上限(休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分以下)がある
●雇用保険の出生時育児休業給付金を受給する場合は、就業日数の要件がある
●期間中に就業して得た賃金額と出生時育児休業給付金の合計額が「休業前賃金日額×休業日数の80%」を超える場合は、超えた額が出生時育児休業給付金から減額
●社会保険料免除の要件となる休業日数(14日以上)に、就業した日はカウントされない

2回まで分割して取得することもできる

産後パパ育休は、子の出生後8週間以内の期間に、最大4週間(28日)の範囲内であれば、2回に分割して取得することも可能です。


前述した通り、期間中の就業にはいくつかの要件があり、また雇用保険の給付額が減額されるケースもありますので、仕事との調整を考えるのであれば、この分割取得のほうが使い勝手がよいと言えるでしょう。


最初の申出の際に、原則としてまとめて2回分の休業期間を会社に申出する必要があります。仕事の都合で休めそうもない期間が事前に把握できるのであれば、その期間を避けて休業を分割して取得するという選択もできます。


また令和4年10月の育児・介護休業法の法改正では、育児休業についても2回まで分割して取得することができるようになりましたので、産後パパ育休と育児休業をあわせて、子が1歳になるまでに、最大4回まで分割して取得することも可能です。

産後パパ育休を取得しても、育児休業の権利は残る

産後パパ育休が制度として創設される前は、育児休業は子が1歳になるまでに原則1回しか取得できない制度(労働者の権利)でした。

子が生まれた直後に短期間の育児休業を取得したいと希望していたとしても、いったん権利を行使した後に、もしまた自分が育児休業を取らなければならない事情が発生するようなリスクを考慮すると、なかなか思うように取得に踏み切れなかったという方もいたかもしれません。

育児休業とは別に、産後パパ育休という制度ができたことで、育児休業の権利を残しながら、子が生まれた直後に短期間の育児休業(産後パパ育休)を取得できるようになりました。

雇用保険の給付対象になり、社会保険料の免除対象にもなる

産後パパ育休は、「期間中に就業することもできる」の中でも触れたように、一定の要件を満たした被保険者が取得した場合は、出生時育児休業給付金の支給対象となります。

給付率は、休業開始時賃金日額の67%です。


出生時育児休業給付金の支給要件

1.子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、当該子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した被保険者であること(2回まで分割取得可)。
2.育児休業を開始した日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業した時間数が80時間以上の)月が12か月以上あること(詳細はQ7を参照ください。)。
3.休業開始中の就業日数が、最大10日(10日を超える場合は就業した時間数が80時間)以下であること。(「最大」は、28日間の休業を取得した場合の日数・時間です。休業期間が28日間より短い場合には、その日数に比例して短くなります。)
※1~3、厚生労働省「Q&A~育児休業給付~」Q1より引用
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158500.html

なお、有期雇用労働者の場合は、子の出生日から8週間を経過する日の翌日から6か月を経過する日までに、その労働契約の期間が満了することが明らかでないことが必要です。


また、一定の要件を満たしていれば、産後パパ育休の休業期間中の社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料)は本人負担分・会社負担分ともに免除されます。

令和7年4月から給付率が「手取り10割」になる【予定】

令和6年の通常国会で審議中の「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」には、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)において、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業(産後パパ育休含む)を取得する場合(*7)には、被保険者の休業期間について、28日間を限度に、休業開始前賃金の13%相当額を上乗せして給付する制度(出生後休業支援給付)の創設が盛り込まれています。法律案が政府案どおりに成立すれば、令和7年4月から施行される予定です。

(*7)配偶者が専業主婦(夫)の場合やひとり親家庭の場合などは、14日以上の育児休業(産後パパ育休)を取得する要件は問われません。


出生後休業支援給付金の男性の対象期間である「子の出生後8週間以内」とは、産後パパ育休の対象期間と同じであり、また支給される「最大28日間」とは、産後パパ育休が取得できる日数の上限と同じです。


したがって、女性(妻)が産後休業後引き続き育児休業を14日以上取得し、男性(夫)が産後パパ育休(通常の育児休業でもOK)を14日以上取得すれば、その期間の雇用保険の給付は、出生時育児休業給付金(育児休業給付金)の67%に出生後休業支援給付の13%が加わり、両親ともに休業開始前賃金の80%相当額が受け取れるようになります。


育児休業給付、出生後休業支援給付は雇用保険の給付であり、所得税がかかりません。また休業期間中に賃金の支払いがなければ、雇用保険料の負担もありません。社会保険料も免除されれば、休業開始前賃金の80%相当額とは、「手取り10割」相当額になります。


ちなみに出生後休業支援給付の要件となる「14日以上」とは、前述した社会保険料の免除要件にもなっています。令和7年4月以降に産後パパ育休を取得するなら、ぜひ14日以上の取得をお勧めします。


原稿・社会保険研究所Copyright

参考

※当記事は、2024年6月に作成されたものです。
※医師の診断や治療法については、各々の疾患・症状やその時の最新の治療法によって異なります。当記事がすべてのケースにおいて当てはまるわけではありません。

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